Vol.30 五感に訴える一品料理としてのラーメン 札幌「けやき」
新横浜ラーメン博物館が30周年を迎える2024年へ向けた取り組みとして企画し、実施している「あの銘店をもう一度」。これは過去に出店した銘店が3週間のリレー形式で出店する大型プロジェクトである。
ラーメン好きにとっては垂涎の的だがもう中盤以降に差し掛かってきている。その第25弾は味噌ラーメン専門店札幌「けやき」だ。
1994年のラー博創館から何店舗かが順次入れ替わり、2004年にいよいよ札幌の超人気店「すみれ」の卒業が発表された。
「次に入る店はどこだ?」ラーメン好き達の間ではそんな予想がやり取りされた。「札幌の後もやっぱり北海道だろう?」「いや、味噌ラーメンなら他の地域にもある」「いやいや、札幌味噌ラーメンの人気を受け継げるのは同じ札幌味噌ラーメンしかない!」「『すみれ』の後を継げる店があるか?」などなど喧喧諤諤(けんけんがくがく)。
そして発表されたのは札幌の「けやき」だった。
一般の方にはまだ知られていなかったかもしれないがすすきのにあったこともあり、ラーメン好きには開店して間もなく知られるようになった店だ。「けやき」を食べた事のある人はその発表に納得したことだろう。
私と「けやき」の出会いは地元の人と飲み会の後、連れて行ってもらった。開店して間もない頃だったので私も知らない店だったがすでに行列ができる店だった。
外観やロゴを見ての第一印象は「どこかの企業がやってるお店?」という感じだった。ロゴや暖簾が綺麗すぎるし、外観やポップ、写真等が上手にできすぎていたのである。その頃、個人店と企業がやっているお店は分けて考えており、どちらかと言えば個人店重視だったので、企業系の店舗は優先順位が低かったのだ。
しかし、行列ができる店とあれば食べずにはいられない。当時の札幌では珍しい味噌ラーメン専門店だったので当然ながら味噌ラーメンを頼んだ。
出てきた味噌ラーメンを見てビックリ。表の写真と同じように綺麗な盛り付けで出てきたのだ。外に張り出す写真は目に付くようにプロに頼んで綺麗に撮ることが多く、出てきたときに少しがっかりすることがほとんど。
しかし、ここではそんなことは無かった。見た目の綺麗さに驚愕した。行列が出来ていて、何杯もまとめて作っているのにこの美しい盛り付けで全部提供しているのか?そして、香りがまた素晴らしい。食べる前に目で、そして鼻でノックアウトされたのは珍しい。
後で知ったのだがこの店のキャッチフレーズは『五感に訴える一品料理としてのラーメン』。
まさに視覚でも嗅覚でも、もちろん味覚でも感動させてくれるラーメンだった。それからは札幌に行くたびに食べた。私はコレクターなので同じ店にはなかなか行かないのだが、ここだけは違った。ラー博でオープンする際の私の記事が残っているのだが「私も好きな店で北海道の中では一番回数食べている店がラー博に登場!」と書いてある。当時、一番通った店が「けやき」だったのだ。
大きな寸胴で取るスープは厳選された豚のゲンコツや背脂、丸鶏、数種類の野菜やシイタケなど。
味噌に負けない厚みのあるスープだ。麺は一週間寝かせて成熟させた中太の縮れ麺。
そして中央に盛られた具は白髪ネギやキャベツの青、ニンジンの赤、キクラゲの黒など、彩りも鮮やか。実に美しく香りよく、そしてしっかりおいしい。そんな「けやき」の味噌ラーメン。
ラー博登場は14年ぶり。出店期間は2023年11月21日(火)~12月11日(月)の3週間。また五感で食べてこよう。
文/大崎裕史
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