Vol.25 茶系とんこつラーメンの銘店 博多「ふくちゃんラーメン」
「ふくちゃんラーメン」は、博多の中でも私が最初の頃に行ったお店。2023年3月27日に天神南駅〜博多駅間が延伸開業して話題になった七隈線の賀茂駅から徒歩5分くらいで行けるのだが、橋本駅〜天神南駅の開業は2005年。それより前に行ったので地図を見て「随分遠いなぁ〜」と思いながら行ったことが思い出させる。
そう、スマホすら無かった時代なので『乗換案内』もないし、Googleマップもない。ポケット地図(ハンディサイズの県別地図)を見ながら行ったのだ。そして辿り着いて驚いた。商店街でもなんでもない住宅街なのに多くの人で賑わっていたのだ。
そんな苦労をしてまで行ってみたいと思わせたのは創業1975年の老舗だったこと。そしてラーメンのビジュアルが他と少し違っていたから。博多ラーメンは豚骨なので白系が多かったにも関わらず、「ふくちゃんラーメン」は茶系だった。醤油が効いていたのである。
スープは豚頭のみ。「新しいスープ」と「熟成したスープ」をブレンドして使用していたという。タレは「濃い口醤油」と「うま口醤油」をブレンドしたものを使い、これが個性になっていた。博多ラーメンの多くは塩味だったり、薄口醤油を使った白いスープが多かったのだが、「ふくちゃんラーメン」はその醤油ダレにより、薄茶色になっていた。
これが東日本出身の私には衝撃的だった。白い豚骨ラーメン自体が東日本出身者からすると“別世界”のものだったがこの醤油ダレの存在で少し身近に感じられたのだった。実においしかった。
それと味以外で忘れられないのが、湯切りの音。定期的に♪カンカンカンカン♪と音がするのだが、その音の先を見ると平ザルで麺をすくい上げ、鍋の端にザルをぶつけて湯切りをしていた。
麺は昔ながらの博多麺。細麺だが長浜よりは太い。低加水でスープを良く吸うタイプの麺。
そして博多ラーメンと言えば定番のニンニククラッシャー。生のニンニクを潰してスープに加えるツール。あれを最初に使い始めたのがこちら。
私が本店に行ってからはもう20年以上経っている。
その後、ラー博出店したのが2004年、卒業したのが2009年だからそれからでも14年になる。随分久しぶりに“あの味”を堪能できるのが楽しみだ。
『あの銘店をもう一度』第21弾・博多「ふくちゃんラーメン」の出店期間は、2023年8月29日(火)~9月18日(月)までの3週間。スケジュールに入れておこう。
文/大崎裕史
📖バックナンバー
Vol.1「2年で味わい尽くす、ラー博30年史」(2022年6月17日)
Vol.2 伝説の銘店 和歌山「井出商店」(2022年6月24日)
Vol.3 創業90余年 福島・会津「牛乳屋食堂」(2022年7月15日)
Vol.4 魚粉のパイオニア 川越「頑者」(2022年7月31日)
Vol.5 敦賀ラーメンの老舗「中華そば一力」(2022年8月29日)
Vol.6 時代の先を行っていた伊豆「あまからや」(2022年9月18日)
Vol.7知る人ぞ知る 岡山・笠岡「中華そば坂本」(2022年10月4日)
Vol.8札幌ブラックの先駆者、札幌「名人の味 爐」(2022年10月31日)
Vol.9 青森・煮干しラーメンを首都圏に広めた目黒「勝丸」(2022年11月5日)
vol.10 『呼び戻し』スープの発祥久留米「大砲ラーメン」(2022年11月23日)
vol.11幻の店が13年ぶりに復活!! 青森「八戸麺道 大陸」(2022年12月14日)
vol.12鍋焼きラーメン発祥のお店。高知・須崎「谷口食堂」(2023年1月3日)
vol.13とんこつを極めて35年。「麺の坊 砦」(2023年1月27日)
vol.14東京では味わえない 飛騨高山「やよいそば」(2023年2月21日)
vol.15新東京ラーメンの一翼を担った「野方ホープ1994」(2023年3月1日)
vol.16九州ラーメン総選挙第1位に輝いた「元祖名島亭」(2023年3月14日)
vol.17伝説のラーメン店復活 函館「マメさん」(2023年3月31日)
vol.18ラーメン業界のステージを上げた 「支那そばや」(2023年4月20日)
vol.19天才 中村氏がプロデュース「IKEMEN HOLLYWOOD」(2023年5月16日)
vol.20パスタの国イタリアからの逆輸入「カーザ・ルカ」(2023年5月31日)
vol.21 佐野実最後のプロデュース 唐津「らぁ麺むらまさ」(2023年6月26日)
vol.22昭和13年創業、京都の最古参ラーメン店「新福菜館」(2023年7月16日)
vol.23時代の先を走っていた銘店「げんこつ屋1994」(2023年7月17日)
vol.24唯一無二のツナコツラーメン「YUJI RAMEN」(2023年8月7日)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?