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東日本大震災から10年。気仙沼「かもめ食堂」の今。

今日は東日本大震災から10年となります。

人にはそれぞれ故郷があります。故郷とは自分の原点でもあり、自分らしさを取り戻せる、そんな場所でもあります。
そんな故郷が被災に襲われました。東日本大震災です。
生まれ育った故郷の風景は津波に飲み込まれ、戦慄を覚える悲惨な光景へと一変しました。
知人・友人の家、役所、漁港、馴染みのお店・・・ 故郷の大切な人と想い出は、津波によってすべてを奪い去られました。

東京・葛西に本店を構ええるラーメン店「ちばき屋」。
店主 千葉憲二さんは震災で壊滅的な被害にあった気仙沼で生まれ育った生粋の職人です。

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千葉さんも震災で多くの知人・友人を失いました。震災の翌日には救援物資の運搬や炊き出しで気仙沼を訪れ、幾度か訪れるうちに千葉さんは「物資やお金の支援は重要であるが、この先、復興するためには希望や生きがいといった心の支援が最も重要である」と感じるようになりました。
そんな中、千葉さんはある復興プランを考えました。


それは以前気仙沼に存在した「かもめ食堂」の復活です。

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「かもめ食堂」は特別ではないが誰もが知っている気仙沼のシンボル的なお店。千葉さんにとっても生まれて初めてラーメンを食べたお店であり、故郷を感じる忘れられないお店でした。千葉氏曰く「かもめ食堂は気仙沼の人々にとって日常の食堂。日常であるからこそ震災前の平和な気仙沼を象徴するものであり、復活は復興へのシンボルとなるのではないか」という千葉流復興プランでした。
そして「復活による雇用創出や次世代を担う気仙沼の子供達の希望になれば」と千葉氏は考えました。店のイメージは三角巾に割烹着を着た女性だけの温かいお店。落ち込んだ時、元気のない時、かもめ食堂に来ると元気になる、千葉さんはそんなお店をイメージしていました。

千葉さんはできるだけ早く復興のシンボルを復活させたいと思っていましたが、復旧もままならない状況の中、建築制限もあり、すぐに気仙沼に復活させることは難しく、断念せざるを得ないという話を聞いたのが2011年の秋でした。

千葉さんの想いに共感した新横浜ラーメン博物館の館長岩岡洋志は「ならばラーメン博物館でかもめ食堂をオープンしましょう!ラーメン博物館で”気仙沼”そして”かもめ食堂”の魅力を全国の人に知ってもらい、その後3年を目処に気仙沼にもどり店舗を構え、気仙沼のシンボルになりましょう」と提案し2012年2月2日、気仙沼「かもめ食堂」が新横浜ラーメン博物館に復活を果たしました。

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気仙沼「かもめ食堂」のこれまでの歩み
2011年3月- 8月 気仙沼にて救援物資支援、炊き出しを実施
2011年8月 千葉氏が気仙沼「かもめ食堂」復活を決断
2011年11月 建築制限により、気仙沼での復活を断念
2011年11月 新横浜ラーメン博物館が首都圏で復活することを提案
2012年2月2日 気仙沼「かもめ食堂」が新横浜ラーメン博物館に復活
2012年3月10日 現役大学生による特別展示「私たちの考える復興」を開催
2012年10月3日 気仙沼市民会館にて「かもめ食堂」のラーメンを提供
2013年11月 気仙沼帰郷出店場所の調査開始(幾度となく気仙沼を訪問)
2015年3月6日 気仙沼の笑顔ウィークを新横浜ラーメン博物館にて開催
2015年4月5日 気仙沼「かもめ食堂」が新横浜ラーメン博物館を卒業
2015年11月19日 気仙沼「かもめ食堂」が地元に帰郷オープン

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気仙沼帰郷までの道のり
2013年の秋から、気仙沼帰郷出店の場所の調査がスタートしました。
かもめ食堂が気仙沼で復活するにあたり、千葉さんがこだわったのは「可能な限り昔のかもめ食堂と市場に近い場所」でした。
この頃、区画整理区域外の場所に人が集まり、物件もそのあたりが人気でした。しかし千葉さんは「内湾は漁船が水揚げする港や魚市場があって、船員さんや漁業関係者たちで賑わった繁華街で、この内湾地区が賑わいを取り戻さなければ、本当の意味での気仙沼復興の象徴にはならない。私は商売として復活させるのではなく、復興の象徴になることが目的」と思っていたため、あくまでも内湾地区への出店だけを考えていました。

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震災発生から4年と8ヶ月、ついに気仙沼へ念願の帰郷オープンを果たすことが出来ました。

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かもめ食堂は帰郷してから6年目を迎えました。千葉さんは追悼の意と共に地元の皆さんでホッと笑顔になれるひとときを共有できればと思い、毎年3月11日は「心温まるラーメン」として無料でラーメンを振舞っております。

かもめ食堂

今年は東日本大震災から10年。現地から写真が送られてきました。
※下記の写真3枚は2021年3月11日の気仙沼「かもめ食堂」で撮影されたもの(お送りいただいた本店の皆様ありがとうございます)

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故郷とは自分の原点でもあり、自分らしさを取り戻せる場所でもあります。気仙沼「かもめ食堂」は復活してまだ6年目ではありますが、千葉さんが目指してきた復興のシンボルは、写真を通してカタチになってきているのだと感じました。
派手なことはせずに故郷と共存し、ともに笑顔になる。
本当に素敵な復興のカタチだと改めて感じました。


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