【連載】Vol.6 時代の先を行っていた伊豆「あまからや」
1994年にオープンした「新横浜ラーメン博物館」は大成功を収め、ラーメン店にとって、ラー博に出店することが大きな『夢』になった。
しかし、現実的には有名ご当地ラーメンじゃないと難しいという大きな壁があった。そんな時、ラー博5周年記念イベントとして「登竜門」という企画が立ち上がった。
これは「今までの既成概念にとらわれない新しい発想発掘の場」、「これからラーメンに人生をかけようと考える方への夢の場の提供」というコンセプトのもと、全国から新しいラーメンを募集し、優勝者にはラー博に3ヶ月間出店できるという、まさに『夢』が実現できる企画だった。
そんな『夢』にチャンレンジした人は300人を超えた。画期的な企画だったことは、その応募数だけではなく、応募はしたものの落選した後に奮起して有名になったラーメン店主が何人もいたことからも伺える。
そんな多数の応募者の中から1次審査、2次審査を経た10名が3次審査の審査員試食に進んだ。審査員は、佐野実氏(支那そばや)、山田雄氏(麺屋武蔵)、河原成美氏(一風堂)、村中伸宜氏(すみれ)等、ラーメン界では有名な店主達。
そんなかに混じって、まだ「いちラーメンフリーク」だった私も北島秀一さん、石神秀幸さん等と一緒に参加させていただいた。
テレビによく出てくるラーメン店主はラーメン好きにとっては芸能人並みに眩しい存在だったが、そんな人達と一緒に審査に参加できることは食べる側にとっても『夢』のような話で大変嬉しかった。
10名の作品はそれぞれが個性のあるラーメンで、四半世紀経った今でも通用する、あるいは今になってようやくトレンドになった斬新なラーメンばかりだった。
そして最終審査は3名に絞られ、約250名の試食審査の結果は、1位86票、2位が同点で79票、という漫画かドラマでも見ているかのような大接戦。結果的に優勝はスパイスラーメンの「あまからや」になった。
スパイスラーメンは、ここ数年で新たなトレンドになり、「あまからや」の先見性と、審査員の時代の先を見る目があった、と言えよう。
「あまからや」はいったん2005年に閉店したが、2015年実家の古民家に復活オープン。私も先日行ってきたが、素晴らしい環境でおいしいラーメンを提供していた。そのラーメンがラー博30周年企画【あの銘店をもう一度」の第5弾としてラー博に出店。(2022年9月23日(金)~10月13日(木))時代の先を行っていたスパイスラーメンを堪能してみて欲しい。
文/大崎裕史
📖バックナンバー
Vol.1「2年で味わい尽くす、ラー博30年史」(2022年6月17日)
Vol.2 伝説の銘店 和歌山「井出商店」(2022年6月24日)
Vol.3 創業90余年 福島・会津「牛乳屋食堂」(2022年7月15日)
Vol.4 魚粉のパイオニア 川越「頑者」(2022年7月31日)
Vol.5 敦賀ラーメンの老舗「中華そば一力」(2022年8月29日)