【連載】Vol.10 『呼び戻し』スープの発祥の店 久留米「大砲ラーメン」
九州の豚骨ラーメンを語る上で外せない“レジェンド店”が何軒かある。その一つが久留米の「大砲ラーメン」であろう。もちろん豚骨ラーメンの元祖は「南京千両」であり、「三九」の存在も忘れていない。
大砲ラーメンの創業は1953年(昭和28年)なので70年近い歴史がある。
大きな特徴は羽釜を使った『呼び戻し』スープを使うこと。
『呼び戻し』スープというのは、創業以来、炊き続けている「タネスープ」を元に新しいスープを継ぎ足すことである。そこには熟練されたラーメン職人の高度な技術が必要であり、時代の流れと共に減ってきているが「大砲ラーメン」ではいまだにそれを継承している。
マニュアルでは作れない、それぞれの“想い”が形になっている。そしてその名称自体が、「大砲ラーメン」二代目店主によって名付けられ、『呼び戻し』スープの発祥の店なのである。
私自身は「リピーター」(好きな店に何度も通うタイプ)ではなく、「コレクター」(既訪店よりも未食の店を優先するタイプ)なので本店には一度しか行ってない。
しかし、“好きな店”でることには自負がある。久留米市の合川店にも行った。上津店(旧昇和亭)にも行った。福岡市にある天神今泉店にも行った。催事でも食べた。「大砲ラーメン」出身の店がある、と聞くと食べに行った。系譜好きなのである。
東京ラーメンショーや福岡ラーメンショーに出ていただいたときにももちろん食べた。ラーメンイベントと言えば忘れてはならない。久留米の町興しの一環として「ラーメンフェスタin久留米」が開催されている。その第一回目はなんと1999年である。
コロナ前には、全国でラーメンイベントが開催されていたがその20年以上前から6年連続で開催していたのである。その中心人物として「大砲ラーメン」店主が尽力した。まさにラーメンイベントの先駆者であり、全国のラーメン活性化の源である。
コロナ禍で外出自粛の時は通販ラーメンで大変お世話になった。
「大砲ラーメン」の通販ラーメンには麺とスープはもちろん、チャーシューやメンマ、海苔の他に紅生姜まで付いているし、何より驚いたのはスープとは別添でタレと油も付いていたこと。これは通販ラーメンでは大変珍しい。香りを大切にし、「お店の味をお家で」を堪能できた。これぞ“本物の味”だった。
大砲ラーメンの通信販売サイト
そしてもちろん、新横浜ラーメン博物館に出店していたとき(2009年12月19日~2013年1月14日)にも食べた。そんな大好きな「大砲ラーメン」がまたやってくる。2022年11月25日から12月15日の3週間。
久留米の老舗、豚骨のレジェンド、「大砲ラーメン」を“呼び戻す”ことができたのだ!
文/大崎裕史
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