臨床能力向上における限界効用の逓減を意識しよう
さっそく臨床能力の向上における限界効用の逓減とは何かごく簡単に説明する。
それは、臨床能力を50から60に上げるために必要な努力よりも、60を70に上げるために必要な努力の方が大きく、さらに必要量は増大していくということである。例えばドラクエでいうとレベルアップに必要な経験値がレベルが高くなるほど大きくなるということである。ドラクエだと敵の経験値が増えるが現実では経験値が増えないので必要な努力量だけが増える。
ここでこの記事で言いたい結論を先に書くが、結論は及第点をきっちり維持してそれ以上のリソースは別のことに注ぐ方があなたにとって有益ではないかということだ。
この結論の根拠となる話がもう2つほどある。
1つ目は、専門的で最先端なことは当然研究途中であるため、容易に内容が変わっていくからである。レベル80を90にするために必要な努力量は非常に大きい上にころころ変化するのでレベルを維持するためのコストも大きいことになる。というかこれまでレベル90だと思ってたことがあとから間違いだったと判明するということにもなりかねない。なのでレベルの上げすぎは臨床能力という観点からはあまり有意義ではない。研究しているなら話は別だが。
2つ目は、20点の臨床をしている医師がたくさんおり、それを事実上許す医療システムだからである。よくウイルスに抗生剤、よろしくない向精神薬の処方などでSNSで叩かれているアレである。それが悪い、おかしいなどといった価値判断をするつもりは全くないので勘違いしないで欲しいが、低クオリティの診療をする医師が多くいて、それを強制的に改善したり、罰や損害を与えるシステムが存在していないというのは客観的な事実と言っていいだろう。だから真面目にやるやつがバカをみるんだと言いたいわけではない。そういう構造になっている中で、個人としての臨床医が必死に自らの刃を研ぎ澄まして90点を91点にしても、患者への影響はマクロにみると小さいんじゃないかと言いたいのだ。影響は小さいから無駄だと言いたいのではない、よく考えずにハムスターが走ってクルクル回すやつみたいな感じになってませんか?と言いたいのだ。楽しいとか自己満足とか他の目的のためにやっているという自覚があれば大いに結構だとは思う。(煽っているつもりは本当にない)
以上の理由から臨床能力の向上はある程度までにしておいて、他のことをしようという提案である。他のこととは投資の勉強をしようという意味ではなく、研究でもいいし、臨床の工夫、例えば70点の医療を短時間ローコストで疲れずに提供する方法を考えるとかでもなんでもいいと思う。
そういえば5-10年くらい前に流行った幅広くたくさん勉強して知識詰め込むやつ、全然目立たなくなりましたね・・・・。
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