キハ85巡検(?)②/2022夏の陣
キハ85に熱中し追いかけてたオタクの一年を振り返り思い出に浸るキハ85巡検(?)シリーズ。近頃多忙で更新間隔が絶望的なことになっているが、第2回は7月中旬の暑くなってきた高山線からお届け。夏の日差し、輝く木々の緑の中キハ85はどんな表情を見せてくれたのだろうか…
Day1
2022年の7月に入ってから、僕は断続的に体調を崩していた。薬を多く服用しながらなんとか毎日を過ごしていたが、それでもキハ85を撮りたい!という情熱は冷めなかった。胃痛を必死に誤魔化しながら夜行バスに乗り込み、早朝名古屋入り。初日は、下呂以南の撮影地を数箇所攻めていく事にした。
眠い中やってきたのは飛水峡。撮影地で構えた直後から強烈な吐き気に襲われ死にかけたり突然大雨に打たれたり散々いじめられてもめげず待ち続けると、遠くからカミンズの唸り声が聞こえてきた。トンネルに突入してくる一瞬に集中する。行く先を照らす優しい前照灯に思わず痺れる。すっかり吐き気など消え去り、そのかっこよさに惚れ惚れしたのであった。
次の撮影地に移動するため駅に戻り、列車に乗り込む。すると、またも体調不良が再発する。流石に動けないと感じたので、次の撮影予定地の最寄りである下油井で降り、同行者が撮影している間僕は駅で休む事にした。待合室の木のベンチに体を預けると、即寝落ち。これが僕の人生初駅寝(昼寝)となったのであった。(ちなみに同行者たちは寝ている間に雨上がり貫通先頭のVを決めたようだ。体調不良が悔やまれる…)
駅寝で体力を回復したところで、再び列車に乗り、さらに30分ほど歩いて向かうは高山線内で有名な下原八幡神社である。境内を線路がぶった斬るという特徴的なこの神社で、列車を待つ。しばらくすると、7両のキハ85がやってきた。連写して鳥居に連結面をくぐらせてみる。強い日差しが葉の隙間を抜けまだらに車体を照らす。まるでアニメのような光景に、息を呑んだのであった。
神社で完全に気分が良くなった僕たちは、ここから1時間歩くことを決断する。この区間は線路と並行してバスが走っておらず、徒歩を用いるしかないのだ。炎天下の中、ひたすら山の中の国道を歩き続け下原ダムに辿り着いた。高山線屈指の有名撮影地だが、徒歩アクセスは最悪だ。ふらっふらになりながらもカメラを構え、列車を待つ。風が静まるのを期待しつつ、流し撮りしてみる。完璧な水鏡とはならなかったが、疾走感ある一枚が撮れた。
この後駅までまた40分歩き、死んだように列車に乗り、高山へ。あまりに過酷な撮影だったが、無事ホテルに着き1日目は幕を閉じた。
Day2
前日の疲れを引きづりつつ、なんとか早起き。始発列車に乗り、目指すは前回の遠征でひだ4号を撮影したあの地だ(詳しくは前回記事を参照)。夏は日の出が早いので一本前のひだ2号を狙い撃つ。またしても朝からひたすら国道を歩き、撮影地に張り込む。少し待つと、4両編成のひだ2号が姿を現した。おでこに煤汚れを付け力走してくる姿はかっこいい以外なんと形容しようか。冬でも夏でも、そのかっこよさは普遍的だ。
次の撮影地に移動する最中、HC85に初乗車する事になった。当時はデビューして1ヶ月も経っておらず、車内は新車の匂いが感じられた。走りはキハに比べるととても静かで驚いたものだ。新世代の幕開けを感じると共に、キハ85の終わりもいよいよ迫ってきたのだなと痛感したのであった。
その後バスで移動し、定番の撮影地にやってきた。ここで長めに滞在し、カットを稼ぐ事にした。まずやってきたのは貫通先頭の7両編成。流れる川と編成を大きめに切り取ってみる。崖に無理やり敷設された橋を軽快に走っていくその姿は山岳路線である高山線を象徴するような一枚だ。
人は水があると入りたいという感覚を覚える。これは人類のDNAに潜在的に組み込まれた感覚である。という事で僕も入水してみた。ズボンを捲り上げて川を攻め、急流と格闘しながら姿勢を維持してシャッターを切る。白波を立てる川を横目に高い鉄橋を走っていく列車を下から見上げるというなかなかないカットを撮れて満足したのであった。
この後少し離れた撮影地まで移動し張り込んだが、ここでトラブルが発生した。手持ちの水がほぼ尽きてしまったのだ。ただでさえ真夏、それも川沿いで湿度が高い中で病み上がりの体は限界に達した。近くに水を得られる場所もなく、見事に熱中症となってしまった。なんとか根性でシャッターを切ってはいたが全て没カットとなる酷いものだった。同行者の助けも借りてなんとか下呂駅に辿り着いたが、もうぐったりしていて記憶が曖昧なほどだ。本当は下呂温泉に入浴したかったが切り上げて早々ホテルで療養した。
水分を余分にもたず、病み上がりで撮り鉄するのは危険すぎる。いい教訓となった。こうして、2日目は体調破壊にて幕を下ろしたのだった。
Day3
遠征最終日を迎えた。一晩よく寝ると昨日の熱中症の症状は回復していた。しかし外はあいにくの雨。連日の疲れでやる気もそこまで出なかったので沿線には出ず、気軽に駅撮りしてお茶を濁した。
その後数枚ほど撮影して高山にもどり、乗り鉄にジョブチェンジ。乗車するのはひだ36号大阪行き。前面展望が楽しめる非貫通型先頭車が自由席として運行されるので、早めに並んで最前列を確保した。大阪まで4時間を超える長旅を楽しむ。特に京阪都市圏の複々線区間を快調に駆け抜ける時間はとても楽しかった。写真の速度計は110km/hを指している!速い!楽しい!!
この後神戸線の人身事故に巻き込まれ新大阪手前でまさかの立ち往生、50分遅れという事態になったが無事に大阪着。京都まで戻り夜行バスで帰路につく。疲れからすぐに睡眠し、翌朝起きた時には足柄SAであった。こうして、病み上がりで行く2度目の高山線撮影旅行は幕を下ろしたのであった。
To Be Continued…
体調不良に苛まれながらも大きな戦果を上げる事に成功した僕は、さらなるVを求めて再び高山線を訪れることとなる。季節は秋。美しすぎる紅葉の中、キハ85はどんな姿を見せてくれたのだろうか…キハ85巡検(?)、次回もお楽しみに。