『鷲は舞いおりた』感想
最初は殆どおふざけだったチャーチル奪還作戦に、本気で取り組む男たちの話。めちゃめちゃ面白かった。
まずジョン・スタージェス監督らしい男気が至る所で炸裂している。
主人公シュタイナー中佐(マイケル・ケイン)とその部下たちの関係がベタだが泣かせる。「我々は時間を稼ぎます。」に涙を流さない男はいない。バッハを弾きながら死ぬ部下が格好良かった。
さらにシュタイナーに協力するアイルランド独立戦士のデブリン(ドナルド・サザーランド)との友情も良い。お互いに「あんたは良い男だ。」と言い合うところは必見。
男気は友情だけではない。
作戦の指揮を執るラードル大佐の渋い男気が堪らない。最初は適当に案を提出するだけで良かったのに、中々良い計画書が出来たせいで「パーティで美女にウィンクされたら引き下がれないだろ?」と実行に移す。失敗したら全責任を負って死ななくてはならない事を知っていながら、シュタイナー中佐に全てを託すその背中から中間管理職の哀愁が滲み出ている。何故か眼帯を付けているため見た目も超カッコ良い。
『大脱走』と同様、ドイツ軍を完全な悪として描いていないのが良かったと思う。シュタイナーがユダヤ人の連行を邪魔して島流しされたり、ラードル大佐もドイツが負けるのを分かっているかのような諦めがあったりする所に、ドイツ人全員がナチズ厶信奉者だったわけではないことを表す意図が見られる。さらに、作戦を手伝ってくれるのはイギリスの植民地政策の被害を受けイギリスに恨みを持つ人たちであるように、連合国側も相当酷いことをやってきたという事実が描かれている。
唯一要らないと思ったのはデブリンのロマンス要素。『大脱走』みたいに全編男のみでやってほしかった。
ドイツ空軍の軍服が似合う男たちの、「何が何でもやってやる!」という心意気に溢れる良い映画だった。