株式を20倍以上の価格で売ったら5%ルールを使った方がお得という話(ついでに税についての、人によってはどうでもいいお話)
ここは読み飛ばしていい話
きっかけはポートフォリオのパフォーマンスの計算について考えていたとき。主にインデックス投資の本なんかで見られる「頻繁に売買すると税金の分だけパフォーマンスが悪くなる」という話。これについては昔から疑問に思っていて、下記のようなパフォーマンス計算の本なんかを読むと、入出金があった場合はそれを除外して計算するよう書かれており、実際ディーツ法やその派生バージョンである修正ディーツ法、できるだけきっちりと計算しようじゃないかの厳密法ではそのような計算が行われています。
ピンとこない人向けに言うと、100万円のポートフォリオを組んで1年間株価が動かなくて同じままだった場合、資産は同じ100万円なのでパフォーマンスは0%。ところが株価は動かなくても途中で100万円入金すれば、1年後には200万円になっている。資産は100万円増えているけど、株価は変わらず。だけど資産の変化だけを見て「2倍になりました!」というのはおかしくない?それってその人のウデによるものなの?単純に入金すればOKだとするなら、投資なんかせず毎月貯金し続けていればよくない?というわけで入出金は除外して計算しようということになっています(入金力は銘柄選びと関係あるでしょうか?)。下記の本を読むのが一番だと思いますが、ぐぐればいろいろとヒットします。この辺のことが頭にないと、誰かの資産残高の推移を見て「おめでとうございます!」という前に、どこかで急激に残高がふえていたら「これって入金では?」と思うような気がするのですが、そういう突っ込みをしている人を見たことがないので金額に夢中なのかもしれません。私は「パーセント教」の信者なので、入出金を考慮したあと何パーセント増えたかが気になります。100万円を110万円にするのも1億円を1億1000万円にするのも同じ10%なのですから。残念なことに、同じ信者を見たことがありません。
問題は株式の譲渡益にかかる税金をどうするかだけど、下記の本を読んでもその辺のことが書かれてないのでずっと困っていました。ファンドマネージャーやその近くで働いている人に聞けば解決するのかもしれないけれど、生憎そういう人と縁がないため聞けずじまい。ずーっとモヤモヤッとしていたものの、なんとなく違和感は感じていたので税金については除外してパフォーマンスの計算をしていました。
ただ最近になって、税金を考慮するのであれば、投資をするとき最初にすべきことは「シンガポールなどの投資に税金のかからない国に移住すること!」になってしまうことに気づきました。これらの国で売買すれば税金はかからないので純粋(?)なパフォーマンスの計算ができることになります。「頻繁に売買すると税金の分だけパフォーマンスが悪くなる」というのもその人の売却益に税金がかかる国に住んでいるからそれを前提として書かれているのであって、シンガポールに住んでいる人が書いたらそういう話にはならないと思います。また、S&P500なりTOPIXなりで構成銘柄の入替があった場合、組入から除外までの間の損益について税金を考慮して指数を算出しているという話は聞いたことがないので、単に除外する銘柄と同じ時価総額の分だけ他の銘柄と入れ替えているのだと思います(ダウ平均や日経平均のような単純平均のものは除数というので調整しているみたいですが、どのような計算が行われているのかは知りません)。
またインデックスファンドは米国や日本以外でも売られているでしょうから、当然シンガポールでも売られていると思います。そちらで買えば、より指数に連動したものが得られるように思うのですが、調べたことがないので分かりません。投資に税金をかけてないのだからあるとは思いますが。
そんなことから、住む国で違うものをそのまんま比較するのっておかしくない?となって、ようやく腑に落ちた感が得られました。
ちなみに会社を辞めて、個人投資家という名の無職にジョブチェンジをしたときにそれまでの投資方法を変え、その方法が市場平均をちゃんと上回れているのかを知りたかったのでこの頃から税金を無視した厳密法でパフォーマンス評価をやっています。毎日指数なり資産の評価額をExcelに入力する人であれば、式自体は小学校の算数なのでそれでシートを作ってポンポンと数字を放り込むだけです。追加情報は入出金があったときにその金額を入力するくらいです。難しくないです。
その延長線での譲渡益にかかる税金の計算の話
その流れからふと株式の取得価額が分からない場合、譲渡価額の5%を取得価額として計算できたよなーということを思い出しました。譲渡価額の5%といったら取得価額の20倍になります。よく言われるテンバガー(10倍株)の2倍になります。これは金地金についても同じで、取得価額が分からなければ譲渡価額の5%を取得価額として計算するようになっています。
現在保有している株式で円建てで20倍以上になっているのはNVIDIAの136倍だけ。これをそのまんま136倍で計算するより、譲渡価額の5%(20倍)で計算した方が納める税金は少なくなるよなーと思い、あとはこれが取得価額が分からない場合だけのルールなのか、自由に選べるものなのかなので、最初は税務署に行って聞いてみようかと思いましたが、ちょっとググってみたところ、下記のように自由に選べるようです。
調べ方を間違えると下記のような「みなし取得費」というのを見つけると思いますが、これは原則ではなく期間限定の例外措置なので要注意。あとから株券が紙に印刷されて発行されていたのを「紙の株券、止めます」となったとき、証券会社に預けず自宅のタンスに株券を仕舞っていた人たちへの期間限定の優遇措置だったはず(要確認)。預けないと本当にタダの紙切れになるため、コレクターズアイテムとして持っておきたい場合以外は証券会社へ持って行って電子化するのが吉でした。
そんなわけで、20倍以上になった株式は取得価額を譲渡価額の5%として申告するのがお得なので、今後生活費として売却することもあるし、「まだNVIDIA持っているの?プークスクスッ」となった時も20倍まで下がるまでに逃げ切る時間はあると思うので、それまでは堂々と5%で申告しようと思っています。1年の間に大量の株を売るでもない限り、1つ1つの譲渡益の計算はそう苦労もしないと思います(ほとんどが最初に一括で購入。途中で追加はしてないので)。
この辺は特定口座で証券会社に税金の計算を全部おまかせにしている人は知らない可能性があるかもしれません。特定口座ができる前に泣きながら税金の計算をしたことがある人や(確定申告の度に売買している自分を呪いました。デイトレーダーの人たちはどうしていたのでしょう?税理士に丸投げ?)、税金の計算がどのように行われているか興味を持って調べたことのある人なら知っているかもしれません。
でもね・・・
テンバガー(10倍株)でも難しいのに20倍株なんて豪運でも持ってなければまずつかめないと思います。株式投資を始めてもうすぐ30年になりますが、その間に20倍以上になったのはTwitterを立ち上げたジャック・ドーシーが、同じく立ち上げたスクエア(SQ)(現在はブロックという名前になっています)とNVIDIAの2つだけ。そのスクエアもピーク頃の20倍以上で売れたわけではなく、円建てで20倍以下のところで売っていると思います。おっと、ちょっと気になったのでいま調べたら、スクエアが会社の資産として暗号資産を持ち始めたのを見て投げ始めた頃に19.9倍。完全にぶん投げたときは13.7倍でした。21.5倍で売っていたのもありましたが、たまたまでしょう。保有期間は2016年1月から2022年1月まででした。いつもドルでしか見てないので今知りました。
NVIDIAは2016年8月に買って、途中生活費なんかで半分くらい売っていますが、最大でも2021年の21.9倍。2020年に売ったときは3.9倍でした。
現在14銘柄を保有していますが、円建てで10倍以上なのはNVIDIAとApple(13倍)の2つだけ。そのAppleも2016年3月に買ったものです。途中、生活費捻出のために何回か売っていますが、ちょい損から5.8倍まで様々。
インターネットバブルの頃に、米国のADSLモデムを作っている会社の株価が1日で10倍になり、翌日3分の1になってSEC(米国証券取引委員会)の調査が入ったというニュースを見ましたが、私が知る限り短期で10倍になったのはこれだけです。長期保有を何年と見るかにもよりますが、そういう投資をして運良く20倍以上になった人たちの「運がよかったね賞」みたいなものだと思います。元々は取得価額の管理もちゃんとできない人たちへの「しょーがねーなー。とりあえず譲渡価額の5%ということで。株価が20倍になることなんてまずないだろうから取得価額を低くしてペナルティを科すよ」なんだと思います。
こういうのを見て「金持ちの特権だ!」みたいに言う人たちがいるかもしれませんが、元々はやることをやってない人たちへの救済措置みたいなものですし(取得価額0円にしたっていいはずです)、20倍以上になる株を掴む難しさくらいは知っててもよさそうに思います。テンバガーを探す人、「こういうのがテンバガーになる」と言う人は結構見かけますが、実際にテンバガーを掴んだという人は、NVIDIAに160万円くらい突っ込んで10年掴み続けて3億円以上になったとX(Twitter)で言っていた人だけです。ある意味、希少種というよりツチノコみたいなものです。私は自信があってNVIDIAを買ったわけではないです。「AIとやらでGPUが注目されてるみたいだけど、本当に役に立つのかねー。一時的なブームなんじゃない?」と疑心暗鬼になりながらも、取り逃がすのもなんか悔しいしそこそこ利益が出たらラッキーと、とりあえず投資するときの最小単位の額だけ買っただけです。欲深がたまたまいい方向に転んだだけです。
ちなみに「金地金の場合でも5%ルールが適用される」ですが、国税庁のこちらのページにも書かれていますし、「金地金 取得価額が分からない」「取得価額 5%」なんかで検索するといろいろと出てきます。土地や建物でもOKです。
その金地金ですが、最近金(ゴールド)の価格上昇で金に注目されているようですが、1グラム1,000円を切っていたときに15万円ほどの評価損を抱えてて純金積立を続けるかどうか無茶苦茶悩んだ身からするとずいぶんと上がったものだなぁなんて思いますが、1グラム1,000円で買い、円安などがあっても2024年12月27日で14,610円と15倍に満たないのですから、やはり20倍ってのは非常に難しいのだと思います。1970年までに買っていれば20倍以上になったようですが。
そういえば「金」の文字がつく某国会議員が亡くなったあと、金庫の中を調べたらワリトーと金塊がゴロゴロと出てきたという話を思い出しました。ワリトーは今は聞かなくなりましたが昔はよく見かけました。確か税率が20%のところが18%とちょっとお安いのと、誰が買ったのか分からないようになっていたように思います。金塊についてはいろいろとありますが、200万円以上の売却をしたときに自動的に税務署へお知らせが行くようになりました。その影響か、金地金を売りに行ったら「小口にしなくていいですか?」と何度もしつこく聞かれました。そういう金融商品なんだと思います。
日本人はもっと税について勉強してもいいように思います。特にサラリーマン。
税については最近いろいろと不平不満を言われる方を多く見かけますが、でも税について勉強をされている方はパッと頭を思いめぐらせてみてもちょっと思いつきません。先日もテレビで元国会議員の奥さんにこんだけ税の優遇措置を受けているというニュースにアレコレ不平不満を言っている人たちがいましたが、「もしいま親が亡くなって相続することがあった場合、いくらくらいの税を納めなければいけないのだろう?」と気になって調べたら、「配偶者の税額の減税」という、夫婦であれば国会議員に限らず誰でも利用できるルールがあることを見つけるかもしれません。でもテレビでは国会議員の特権のような報じ方をしていたようで、もしテレビのことをマスゴミと呼んでいながらテレビを見続け、それの言っていることを真に受けているのだとしたら、よく聞く「情弱」って何を指す言葉なんだろうって思います。
税については下記の書籍が最初に手にしてもいいように思います。第3版、第4版を読んだときは凄く驚きました。
特にサラリーマンなんかは取りっぱぐれのない存在ですから一番に勉強すべきだと思うのですが、年末調整でいくらかのお金が戻ってくることに満足しているようです。「103万円の壁」の103万円がどのように算出されているのかも調べもせずに「103万円の根拠を言え!」なんて言おうものなら、税についてトコトン知り尽くしている自民税調から「コイツ、自分で調べることもしない馬鹿ですらない」と相手にされないどころか存在自体気づかれないくらいに私は思っています。私も存在していることに気づかれてないと思っています。
とりあえず目次とサラリーマンやパート、アルバイトをやっている人たちが気になるであろうところの一部を貼っておきます。2,000円ちょっとでこれらの謎が解決するのですし、「少なく申告したら利子を付けて納めさせるのだから、年末調整で戻ってくる分にも利子を付けて返せ」くらいにはなれると思いますのでお得だと思います。2,000円ちょっとを出し渋って、役に立つのか分からない株の本を何冊も買ったり、投資情報の定期購読をするようであれば、それは何かが間違っているように私は感じます。そういうことを沢山やってきたから自信を持って言えます。
だからこんな奴の言うことなんか真に受けず、ちゃんと自分で調べてください。ちょっとした好奇心と、無駄な行動力が大事だと思います。沢山ケガをしましたが(現在進行形)、いまのところ生きています。