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S&P500とオルカンの両方に投資する意味ある?(新NISAの積立枠で投資するファンド、何にする?パート2)

X(Twitter)を見ていたらこのようなポストを見ました。

おお、確かに「ウォール街のランダムウォーカー」でこのような図を見たような記憶があります。で、調べてみたら確かにありました。

ウォール街のランダムウォーカー<原著第13版> Kindleだと283ページあたり アメリカ株と先進国株への分散投資

でもここで使われているのはS&P500とEAFE(ヨーロッパ、オーストラリア、極東)先進国株価指数という具合に、米国株と米国以外の先進国株の組み合わせになります。ですので単純にS&P500とオルカン(アメリカだけで全体の約60%含まれる先進国と新興国)の組み合わせと同じとみなすのはちょっと難しいと思います。

そこで各指数のパフォーマンス(累積リターン)と、どのような組み合わせがリスクが一番小さくなるか、S&P500とEAFEの場合と、S&P500とACWI(MSCI All Country World Index。オルカンが連動を目指す指数)の場合で調べてみました。

なお、取得するヒストリカル・データはドル建てとなります。

S&P500とEAFEの組み合わせ

データの取得

まずヒストリカル・データを拾ってくるところからですが、S&P500指数を算出しているS&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのサイトにアクセスしてみましたが、過去10年分のチャートが見られるだけで、それ以前のデータを見たり、ヒストリカル・データを取得することはできそうにありませんでした。

そこで米国のYahoo!FinanceからS&P500のヒストリカル・データを取得することにしました。

CSVファイルとしてダウンロードといったボタンはありませんが、画面をマウスでドラッグして範囲指定してExcel等に貼り付ければとりあえずはデータを取得できます。

次にEAFEですが、こちらはMSCIのサイトから取得します。

こちらは古い形式のExcelファイルでヒストリカル・データを入手できます。

リスクとリターンのグラフの作成

リスクとリターンのグラフの作成方法ですが、これは「ゴミ投資家のためのインターネット投資術入門」という本に書かれています。古いバージョンですが、Excelでの作成手順も載っているので参考になると思います(「ゴミ投資家のためのインターネット株式投資入門」という似たようなタイトルの本もありますので注意を)。

実は「海外投資を楽しむ会」のWebページから、PDF化された本を買うことができたのですが、今は販売終了しています。

そのため現在は古本を買うしかありません。

この本を書き上げるに当たって参考にした本が「EXCELで学ぶファイナンス〈2〉証券投資分析」らしいのですが、私には難しすぎました。ですので標準偏差や共分散と聞いて「?」となるようであればゴミ投資家の方をお勧めします。

ちなみにゴミ投資家の名前の由来ですが、証券会社から見て1億円以上金融資産を持っている人が「お客様」であって、それ未満は「ゴミ」と呼んでいたことから本の著者がそう名付けたといったことがゴミ投資家本の一番最初の本に書いてあったような記憶があります。

「野村総合研究所、日本の富裕層は149万世帯、その純金融資産総額は364兆円と推計」のマーケットの分類で言うと、富裕層以上が「お客様」ということになりますね。

野村総研 純金融資産保有額の階層別にみた保有資産規模と世帯数

大手証券会社だと「お客様」には営業の電話がかかってきたりするようですが、ネット証券では少なくとも私にはそういう電話がかかってきたことがないので、静かでいたい場合はネット証券一択となります。

グラフの作成

「ウォール街のランダムウォーカー」と同じように期間は1970年1月~2019年12月とし、分散投資のリスク・リターンのグラフだけでなく、1970年からの累積リターンのチャートも作成しました。

まず累積リターンの方を見ますと、2009年2月くらいまではEAFEの方がパフォーマンスは良かったですが、それ以降はS&P500の方が良く、50年目ではS&P500は3,409.43%、EAFEは1,936.94%と大きく差がつきました。

S&P5005とEAFEの累積リターン(197001-201912)

次に「ゴミ投資家のためのインターネット投資術入門」に従って分散投資によるリスク・リターンのグラフを作成したところ、「ウォール街のランダムウォーカー」と違う結果になりました。

ウォール街のランダムウォーカー アメリカ株と先進国株への分散投資
S&P5005とEAFEへの分散投資(197001-201912)

リスクが最小になるS&P500の割合は、「ウォール街のランダムウォーカー」では82%ですが、ゴミ投資家本で作成した方は64%と大きく違います。

「ウォール街のランダムウォーカー」のリスク・リターンのグラフから年平均リターンを見ると50年間によるリターンはEAFEの方が上ですが、Yahoo!FinanceおよびMSCIから取得したデータを見るとS&P500の方が上です。

この時点からデータが違うので、何を信用していいのか分からなくなってきましたが、S&P500とEAFEを組み合わせればリスクは減らせることだけは確かなようです。

著者に「1970年1月から2019年12月のそれぞれのリターンが本と違っているんですけど・・・」とヒストリカル・データを付けて質問してみたいところですが、怖い気もするのでやめときます。

とりあえず検証したところ、S&P500とEAFEを組み合わせればリスクは減るけど「ウォール街のランダムウォーカー」とは違ったね、といったところ止まりでしょうか。

ちなみに2023年10月まで期間を延ばした場合の結果は以下の通りです。

S&P5005とEAFEの累積リターン(197001-202310)
S&P5005とEAFEへの分散投資(197001-202310)

S&P500とACWIの組み合わせ

データの取得

S&P500およびACWIはそれぞれYahoo!FinanceおよびMSCIのサイトからダウンロードできます。ACWIは1987年12月末に設定された指数であること、またデータ期間は長い方がいいだろうということで、1988年1月から2023年10月までのデータを使うことにしました。

リスクとリターンのグラフの作成

S&P5005とACWIの累積リターン(198801-202310)

1988年からのリターンですが、圧倒的にS&P500が優位です。

試しにeMAXIS Slim オルカンが設定された2018年10月末を起点にチャートを描かせたところ、以下のようになりました(ドル建てであることに注意)。

S&P5005とACWIの累積リターン(201811-202310)

この場合でもS&P500の方がパフォーマンスが良いです。

ACWIのリターンがここまで低い理由はヒストリカル・データには配当が含まれていないからかもしれませんが、私が調べた限りでは分かりませんでした。

eMAXIS Slimなどの投資信託のパフォーマンスは以下の通りで、オルカンが5年で100%くらいあり、円安が影響しているのかと思いましたが、2018年10月28日が112.71円だったのが今148.88円だとすると円建てだと1.32倍になり、これをS&P500とACWIのパフォーマンスにかけると104.14%と73.43%になり、投資信託のパフォーマンスと一致しません。ヒストリカル・データ×為替以外の何かしらの要素が関係しているのかもしれませんが、やはりこれについても分かりません。

ファンド一覧

リスク・リターンは次の通りです。

S&P5005とACWIへの分散投資(198801-202310)

S&P500を69%、ACWIを31%にしたときが一番リスクが小さくなりますが、S&P500を100%保有していたときより年平均リターンが1%ポイント減ってしまいます。リスクは月次で0.05%ポイント減ります。月次のリスクから年間のリスクを算出する方法が分からないのでなんともいえませんが、このリスク・リターンのトレードオフが理にかなったものなのか割に合わないものなのか分かりません。

ちなみにS&P500とACWIを50%ずつにした場合は最適比よりもリターンは減り、確かにリスクは減りますが、最適比よりはリスクは大きいのとリターンも小さいため、最適比に持って行った方がよいでしょう。

結局どうなのよ

  • S&P500とオルカンの両方に投資するのはいいけれど、50%ずつの投資でもリスクは減るけど割合を変更すればさらにリスクは減らせるので割合は見直した方がいい。

  • S&P500を100%の場合と、S&P500とACWIを最適比にした場合を比較すると、リターンの減り方に対してリスクの減り方が割に合うかどうかは分からない。

  • eMAXIS SlimのS&P500とオルカンのパフォーマンスと、それぞれのヒストリカル・データ×為替のパフォーマンスに開きがある理由は不明。

くらいしか考えつきませんでした。

そんなわけで、

  • 楽をしたければ1本に絞る。

  • 複数の投資信託に投資するならリスクが一番小さくなる割合で投資する。

  • EAFEとの比較だが、2009年頃まではEAFEの方がパフォーマンスが良いが、これ以降はS&P500のパフォーマンスが良い。ただしS&P500の好調がいつまで続くかは分からない。

といったところでしょうか。

おまけ 1

ACWIとMSCI KOKUSAIとS&P500の累積リターンも出してみました。

ACWIとMSCI KOKUSAIとS&P500の累積リターン(1988年1月~2023年10月)

ACWI
 リターン 6.54%
 リスク 4.39%
MSCI KOKUSAI
 リターン 8.02%
 リスク 4.34%
S&P500
 リターン 9.40%
 リスク 4.24%

MSCI KOKUSAIはACWIとS&P500の中間あたりのリスク・リターンと言えます。あとリスクがACWI>MSCI KOKUSAI>S&P500と多くに分散投資している方がリスクが高いのも謎です。

MSCI KOKUSAIに連動するする投資信託はeMAXIS Slim 先進国株式インデックス(日本除く)ですが、新NISAの積立枠に投資する投資信託をオルカン(ACWI)にするか、eMAXIS Slim 先進国株式インデックス(MSCI KOKUSAI)にするか迷っていました。しかし上記の累積リターンとリスクを見て、eMAXIS Slim 先進国株式インデックス(MSCI KOKUSAI)にしようと思います。

S&P500への投資はiDeCoで毎月限度額(68,000円)積み立てており、積立期間が終わって取り崩すなり全額引き出す頃まではS&P500は強いだろうということでこれ一本にしていますが、それよりも長い期間保有することになるだろう新NISAの積立枠はもう少し分散させた方がいいだろうと思って、オルカンにするか先進国株式で悩んでいましたが、上記のようにしようと思います。個別株でも米国株しか持ってませんし、これ以上米国株に集中させなくてもいいだろうという考えもあります。

おまけ 2

今回作成したリスク・リターンのグラフを作成するときに使ったExcelファイルを以下に置いておきます。必要な方はダウンロードしてゴミ投資家本を見ながらいろいろやってみると面白いと思います。

MD5 3ddd868b1f6cb16081d2716384644bab
SHA256 83317f67be921f3b1dbe38492f8ee77d946b1fce5a9e75e241d2b71019ce6caa


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