シャミ子が躓いた植木鉢の魅力を語る
注意
・まちカドまぞく6巻までのネタバレ
・宵加減の一部ネタバレ
・ネタ解釈
どうも、らまらまです。
以前、まちカドまぞくでゾンビ対策マニュアル作成委員会ちゃんが好きだという人を見かけてびっくりしました。でもちょっとわかる。あの口元を手で隠してる仕草いいですよね。ミカンへの質問の内容も個性的で(しかも2回!)、あとくせ毛もかわいい。目元が好みだし体育の授業回想で出てきているのもツボです。このまま書いてもいいですが、そうするとゾンちゃんブログになるのでこれくらいで。
(ゾンビ嘘あらすじのとき、マニュアルは役に立ったのかな…)
かくいう私は、1丁目でシャミ子が躓いた植木鉢(以下シャミ転鉢)がかなり好きです。作中に度々登場しては存在感を出す不思議な鉢です。かわいい。そのフォルムやユルさがいい具合に「まちカド」らしさを出していると思います。
今回はシャミ転鉢について気づいたこととか魅力を語っていきます。
本編に入る前に、鉢の登場回をまとめておきます。
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・1巻表紙
・同まちカド駅前MAP
・同14ページ
・同27ページ
・同91、93ページ
・同108ページ
・2巻表紙
・同キャラクター紹介
・3巻77ページ
・5巻表紙(後述)
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単行本以外では、まんがタイムきららキャラット2019年3月号の口絵TVアニメ化記念メッセージ、同2019年10月号付録、ゲーマーズ購入特典、とらのあな購入特典、TVアニメ一期Blu-ray&DVD第1巻パッケージなどで確認できました。情報提供求む。
ストーリーにおける役割
まちカドまぞくの最大の見どころは、やはり「シャミ子の成長」と「キャラ同士の掛け合い」でしょう。序盤ではポンコツさの目立つシャミ子が、経験を重ねるにつれてまぞくとして成長していく姿は、見ていて応援したくなります。頑張れシャミ子!!
何度か読み返すうちに気づいたのですが、ストーリーの軸でもあるこの二つに対し、シャミ転鉢は大きな役割を持っていました。
一つは、「シャミ子の不幸体質(一族の呪い)をわかりやすく示す」というもの。まぞくとして活動を始めるシャミ子へ、はじめて攻撃したのは鉢でした。見ていて結構痛そうでしたね。先に月4万生活の呪いが清子さんの発言で出てきますが、より目に見える形での不幸といえるでしょう。
このシーンを切り取って見ただけでも、何故植木鉢が路上に放置されているのか、シャミ子は気づかなかったのか、ツッコミどころがたくさんあります。それらがすべてシャミ子の交通運(?)や運動神経、うっかり屋属性を裏付ける説明のようにもなっていて、これはこういう作品なのだというのをシンプルに表している、良い例といえます。
案外、危機管理フォームも町中に潜む危険を予知したいという、シャミ子の心理から生まれた言葉かもしれません。
もう一つが「シャミ子と桃が出会うきっかけ」であることです。鉢に躓いてからのシャミ子にはドミノ式に不幸が重なり、しまいにはダンプカーに轢かれそうになります。幸い桃が変身し、片手ダンプしてくれたことで事なきを得ました。で、これがシャミ桃のファーストコンタクトとなります。つまり、シャミ転鉢がシャミ桃の出会いの発端とも取れるわけです。
1巻13丁目で、シャミ子とその家族は、結界により光の一族の襲撃から守られていたことが明らかになりました。
「これは光の一族側がこの家の住人に関わるのを運命レベルで妨げる保護結界」
「多分突破するにはまぞく側からのアプローチか許可が必要」
「かなり複雑で高度な条件づけで…」(桃)(1巻113ページ)
この発言から、この結界はかなり強力なもので、本来シャミ子が魔法少女に会うのは難しいことであった可能性があります(諸説あり)。
これを踏まえると、まぞくであるシャミ子と魔法少女桃を出会わせたシャミ転鉢は重要なはたらきをしたといえるのではないでしょうか。
5巻表紙絵の植物???
話変わって、単行本5巻表紙には謎の赤い花の植物が描かれています。蔓のようなしなやかな茎を持ち、そして何より大きく描かれているのが特徴的です。こんなの原作に登場したか…?花でいえばシャミ子誕生日回にバラが出てきましたが、これにはバラにあるようなトゲが見当たらず、また茎の柔らかさの点でも異なります。本葉の付き方もかなり違うので、別種でしょう。
ご存知の通り、まちカドまぞくは作中に出てきたキャラや小物、舞台で表紙絵が成り立っています。逆に、無関係なものは描かれないのが普通です。じゃあいったい、この赤い花の植物は何者なんだ。何度読み返しても見つからず、気になって夜も眠れませんでした。
ヒントは伊藤いづも先生のイラスト集「宵加減」にありました。アニメ一期決定の記念絵の、シャミ子が持っている赤い花がシャミ転鉢植えであることが明らかにされています。詳しくは宵加減を購入して見ましょう。
赤い花、ね。これに似た花をどこかでみたような…、いやでもまさかね。デジャヴュを覚えつつ伊藤先生のコメントを読み進めると…
「(鉢植えを)まだまだ成長させます」
や、やっぱり〜〜〜っ!!!
もうお分かりかもしれません。赤い花、表紙絵の特徴、成長させますbyせんせぇ。ここから導き出される答えは一つです。
そう、5巻表紙の植物はシャミ転鉢の植物の成れの果てだったんだよ!!!!!!
ありえない話ではありません。
シャミ転鉢植えは登場する度に丈を少しずつ伸ばしています。成長期に大きくなりすぎることくらいあるよね。
まちカドまぞくは、結末が決まっていない段階から全体に素材が散りばめられていて、それらを拾う形で後の展開が描かれていきます。それまで日常風景の一つだった鉢が、後に重要なファクターになっても不思議ではありません。その仄めかしとして表紙に出てきた、というのは考えすぎでしょうか。考えすぎですね。はい。
しかし、すべての始まりともいえるシャミ転鉢が、成長した姿で再び壇上に登場するかも、と考えると胸熱ですよね。私はその手のものがかなり好物です。興奮してきた!段々登場するのが減っていて心配していたところなので、これに気づいてから続きが一層楽しみになりました。
シャミ子の成長を表現
もう一度鉢の役割について考えてみます。
シャミ転鉢以外にも、いくつか別の植木鉢が作中に登場します。純喫茶あすらの店頭に置かれているものや、3巻カバー裏の鉢などです。42丁目、白澤店長がシャミ子のポテンシャルを思考しているシーンにも、植木鉢と蕾んだ鉢植えが描かれています。
「もしかしたら君はその気になれば 沢山の人を助けられるかもしれないね」
「だがポテンシャルが大きくて未熟ということは 将来いいほうにも悪いほうにも大きく伸びる可能性があるということだ」
「…厳しい魔法少女に目を付けられなければいいが…」(白澤)(4巻31ページ 空白を挿入)
植物は育ち方次第で茎を歪んだ方向へ伸ばします。店長の言葉からも、これがシャミ子の将来性の象徴であることは間違いないでしょう。
ここで、シャミ転鉢の登場シーンを振り返るとあることに気づきます。
1丁目では鉢には芽吹いたばかりの植物がありました。この時点でシャミ子はまぞくとして駆け出したばかりです。
10丁目に登場したとき、鉢植えはわずかに成長していました。この直前にシャミ子は、小倉しおんに魔力がゴリゴリにあがりそうな漢方を飲まされています。そして、はじめて危機管理フォームに変身したのもこのときです。
それから暫く経ち、35丁目には蕾んだ植物が出てきます。10丁目からここまでの間に、まぞくはトレーニングを続ける傍らに二人の魔法少女を配下にして、三度も夢魔能力を使用し、インターネットをはじめ、己の過去と向き合っています。
5巻表紙では表紙で遥かに成長した鉢植えが覗いています(この植物がシャミ転鉢植えであるのは述べた通り)。一方で巻内のシャミ子は、蛟と出会い、光闇の存在について詳しく知ります。さらに紅玉とリコに対し連続で夢魔能力を使用、洗脳し仲を取り持ちました。明確にせいいき桜ヶ丘のボスを自覚した発言をしたのもこの巻です。
このように、鉢植えの状態がシャミ子の成長と重なるのです。さらに、単行本1巻と2巻の表紙を見比べると、前者の危機管理フォームシャミ子と後者の鉢のポーズは瓜二つ。そしてアニメ2期のEDのラストは3巻30ページ3コマ目のシャミ子が鉢に置き換わったものとなっています。42丁目以外でも鉢、特にシャミ転鉢がシャミ子の表象となっているのは明らかです。
先述の通り、まちカドまぞくは作品全体に伏線(素材)や小ネタが書き込まれています。鉢植えを通してシャミ子の成長が表現されているのではないかと考えました。
路上にある謎
シャミ転鉢について語る上で無視できないのが、何故路上にあったのかという謎です。普通、あんなに大きな鉢が道の真ん中にあったら危険ですよね。誰かが躓いてしまうかもしれませんし。更に登場毎にその位置が若干変わっているのも気になります。1丁目と10丁目の位置はまだ誤差ともいえそうですが、35丁目でばんだ荘前にあるのは余りにも移動しすぎです。
鉢の各話ごとの位置を図示してみました。
うーんやっぱり不思議。路上にあるのはともかく、何故移動するんだろう。誰かが毎回置き換えてるのかな(何のために?)。
あと考えられるのはシャミ転鉢がまぞくの可能性くらいですかね。鉢自身がひょいひょい〜と自分の意志で動けるのならありそう。これは冗談ではなくて、そう仮定すると、いろいろと興味深くなる点がたくさん出てくるんですよね。例えば、先述の5巻表紙の変わり果てた姿とか、桃色卵の発芽とか。詳しくは次回「シャミ転鉢まぞく説」で掘り下げようと考えています。
草のプレート
最後はちょっとしたネタをご紹介します。
鉢に刺さっているプレートに、「草」の文字が書かれているのが1丁目から確認できます。犬のお姉さん家の犬小屋に「犬」とあるのに似たものを感じますね。草だから「草」って、お姉さんが刺したのでしょうか。
なにより、プレートがシャミ転鉢の吹き出しのようにも見えるのが面白い。草がネットスラングで笑いを表すことから、まるで躓いたシャミ子を嘲笑しているかのような絵になっています。
ネットスラングとしての草は、2000年代前半からネット掲示板などでwwの代わりとして使われ始め、2016年以降一般的に見られるようになりました。まちカドまぞくが雑誌に掲載されたのは2014年からなので、意図的なものかはわかりません。一応。
時代の少し先をみる植木鉢、かわいいですね。
まとめと反省
結論:シャミ転鉢はとっても魅力的
冗談を抜きにして、ここまでメタ的に興味深いキャラクターが他にいるでしょうか。対抗できるのは、ヨシュアくらいなのでは?Googleやpixivで「まちカドまぞく 植木鉢」「植木鉢 シャミ子」と検索をかけてみても、ファンアートが全く見つかりませんでした。本編でも大活躍なのに、かわいそう。この拙文を読んで、少しでもシャミ転鉢を面白いと感じていただけたならうれしいです。
次回は「シャミ転鉢まぞく説」で書く予定です。
ではでは。