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シャミ子が炒めたたこさんウィンナー考察

注意
・まちカドまぞく最新話(2024年04月号)までのネタバレ
・ネタ解釈


 どうも、お久しぶりです。ツイッターの名前を変えました。どうでもいいね。

 まちカドまぞくにおいて、「食」が重要なファクターであることは明らかです。「シャミ子?今日のご飯何?」「これを揉むと桃の香りが強まってごはんが美味しくなるんです」などの火力高めの台詞のほか、まぞくが誰何にとって食の対象であったり、シャミ子のバイト先が飲食店であったりと作中の至る所に散りばめられています。詳しくは拙稿「食からみるまちカドまぞく」を読んでいただくとして、しかし最新話(キャラット04月号掲載)を読むに、どうやらこれも情報の更新が必要なようです。

 さてさて、此度は改めて食の観点からまちカドまぞくを捉える機会として、たこさんウィンナーをテーマに考究してみます。



 たこさんウィンナー解剖


 たこさんウィンナーは原作8話に初登場しました。シャミ子が試食販売のバイトをしているところに、偶然桃が通りかかります。そのときにシャミ子が売っていたのが「おもいざわウィンナー」です。ガーリック味やバジル味などがあるようで、彼女はそれらをたこさんの形になるように炒めていました。

 このウィンナーと元ネタとなったのは、信州ハムの爽やか信州軽井沢かと思われます。同ブランドの「ガーリックウインナー」「3種のハーブ&レモンポークウインナー」と商品名がみつかりましたので、おそらく当たりでしょう。

 まず注目すべきポイントが、このたこさんがシャミ子の作中で初めて調理したものであることです。今でこそすっかり飯炊きまぞくとなった彼女ですが(最新話必読)、この時点ではまだ、清子さんから料理を習っていませんでした。序盤で洗濯でもやらかし、全体的にポンコツさが目立っていた彼女が、不慣れな中でも肉に切り込みを入れたり炒めるたりはそれなりにできていました。料理が壊滅的になる桃と全く対称的になっています。

 さらに、シャミ子から桃へ、結果的にあ〜んする形でこれの授受が行われたのも興味深いです。1巻でシャミ桃の間でやりとりがあった飲食物をまとめると、次のようになります。

ポテト(桃→シャミ子)
ねぎとろデニッシュ(桃→シャミ子)
3倍に薄めたスポーツドリンク(桃→シャミ子)
かしわ天(桃→シャミ子、ちくわと交換)
ちくわ(シャミ子→桃、かしわ天と交換)
たこさんウィンナー(シャミ子→桃)
八つ切りパン(桃→シャミ子)
コーラ(シャミ子→桃) ※夢の中
おもいざわ天然水(シャミ子→桃)
ハンバーグ(桃→シャミ子)

 ご覧の通り、1巻ではシャミ子が桃へ食べ物を与えるという構図は殆どできておらず、むしろ桃からの「ほどこし」の方が多くなっています。その上、シャミ子→桃となっている例も交換だったり、夢の中だったりで、桃のほどこしと同列に扱っていいのか微妙なところです。たこさんウィンナーに至っては試食販売のものであり、現在の飯炊きまぞくとはまるで毛色の違う事例となっています。この記事を執筆中の段階では「だからどうだ」とこれ以上なにかを説くことはできませんが、研究の貴重な資料としてこれから参考にしていきたいです。


 たこさんはまぞく…?

 さて、そもそも彼女が売っていたのはなぜ、たこさんウィンナーなのでしょうか。数ある試食販売される商品の中でウィンナーが選ばれた理由は、たこさんの形にされたのはなぜでしょうか。

 勿論、杏里から紹介されたバイトであることから、ウィンナーの販売となったのは自然な流れです。あるいは、物語に華やかさを出すために「たこさん」にしただけなのかもしれません。しかし、まぞく学を志す身として、ここで敢えて一つの仮説を立ててみます。

 ずばり、「たこさんウィンナーはまぞくの象徴であり、シャミ桃のあ〜んは闇堕ちのメタファーとなっている」。


 順を追って説明します。注目したいのがまちカドまぞくとも関連の深いユダヤ教における蛸と豚の扱いです。

 旧約聖書(『レビ記』第11章)では、水中に棲む生き物で、ヒレやウロコのないものを忌むべきもの、食べてはいけないものとしています。さらに同章で豚も反芻をしないため食べてはいけない、死体を触ってはいけないとあります。蛸も豚も、その他のいくつかの動物たちとまとめて汚れたものと説明されています。

反芻するもので、ひづめが割れ、完全に分かれている動物はすべて食べることができる。

レビ記/ 11章 03節 

ただし、反芻するだけか、あるいはひづめが割れているだけのものは食べてはならない。らくだ、これは反芻するが、ひづめが割れていないので、あなたがたには汚れたものである。

レビ記/ 11章 04節

豚、これはひづめが割れて、完全に分かれているが、反芻しないので、あなたがたには汚れたものである。

  レビ記/ 11章 07節

これらの肉を食べてはならない。死骸に触れてはならない。これらはあなたがたには汚れたものである。

 レビ記/ 11章 08節 

水の中に住むすべてのもののうち、食べることができるのは次のとおりである。水の中、すなわち海や川の中にいて、ひれとうろこのあるものはすべて食べることができる。

 レビ記/ 11章 09節

しかし水に群がるものや、水の中に住むすべての生き物のうち、海や川にいても、ひれやうろこのないものは、あなたがたにはすべて忌むべきものである。

レビ記/ 11章 10節 

あなたがたには忌むべきものであるから、その肉を食べてはならない。その死骸は忌むべきものとしなければならない。

レビ記/ 11章 11節

水に住みながら、ひれやうろこのないものはすべて、あなたがたには忌むべきものである。  

レビ記/ 11章 12節


 この扱われ方から何かを連想しませんか?そう、「世界の矩から外れたもの」です。
 5巻収録の58話で、蛟がまぞくのことをこう説明しています。

「仮令今の世で害がなくとも 異形の者 異能のもの まつろわぬ者 世界の理を乱すものは古代の諚により誅せられる」(蛟)

 このように、光の一族は神代に定められた矩から外れたという理由でまぞくを否定し、討伐対象としています。

 蛸や豚とまぞくが非常に似たように扱われているのがわかります。つまり、蛸であり豚*であるたこさんウィンナーはまさに忌避対象≒まぞくのメタファーである可能性があるのです。

*ウィンナーには豚のほかに牛肉が使われていることもありますが、爽やか信州軽井沢の商品はすべて豚肉です。


 それだけではありません。2巻21話、しおんの黒魔術ラボが描かれているコマの中に、怪しげな置物たちとともに、たこさんウィンナーらしきものが漬けられた瓶が並べられています。置物がバズビーズチェアや、渡邊金三郎断首図などを元ネタにしているように見えるのを踏まえると、たこさんを闇属性として扱っているとも十分考えられます。

 もしたこさんウィンナーと闇属性を関連付けられるのならば、そこから「光の一族の敵」や「清くない≒汚れている」などの要素とも結びつけることも簡単でしょう。先程の旧約聖書との関連性についても信憑性が出てきます。 


 再度ストーリーに注目します。桃は試食したあと、シャミ子がひっくり返してしまった焼きたてのたこさんたちを、魔法少女に変身して救います。そのときの彼女の言葉が「シャミ子の頑張りを無駄にしたくなかった」です。これまでも布石は打たれていましたが、彼女がまぞくに絆された決定的な瞬間ともいえるでしょう。この直前には、闇の力に目覚めたあともバイトでお金を稼ごうとする姿に感心しているので、それまで幾分か訝しんでいた心情から、優しい彼女を真に理解し始める転換点とわかります。

「そもそも…こやつは精神的にも闇堕ちの準備はとっくに整っていたのだ」(リリス)

 後に起こる桃の闇堕ちには、光の正道から外れることと、シャミ子にぞっこんフルーツポンチという二つの意味があります。まぞくからは差し出された蛸の形をした豚肉を食べるという原作8話の一連のシーンは、まさにこれらのメタファーといえるのです。


 反省とまとめ


 今回はたこさんウィンナーについて考えてみました。急遽書きあげたものなので、今までよりもはるかに拙い文章になってます。すみません。
 実は、黒魔術ラボのコマについて気づいたのは闇堕ち云々の仮説を立てたあとのことです。正直自分でもびっくりしました。
 まちカドまぞくについて調べていると、思わぬところで新しい知識を得るというようなことをよく経験します。ユダヤ教の禁忌とか、呪いの椅子とか。そうそう、英国で蛸がデビルフィッシュと呼ばれているのは嘘…らしいです。少なくとも一般的ではないっぽい。この話を初めて聞いたときは信じちゃってました。こういった考察では嘘を書かないように気をつけたいですね。
 改めて、まちカドまぞくと食の関係は本当に奥が深いので、もっとよく研究したいと思います。ではでは。

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