沢田研二『アイム・セクシー』について
私は、歌手・沢田研二が好きである。
主に、1960年代の後半から、1970年代の後半を、全盛期とし、
その後も歌謡界に影響を与え続けて来た彼について、
数多くの楽曲が存在する事は、言わずと知れた事である。
その中で、『アイム・セクシー』という曲を、ご存知だろうか。
これは、洋楽の歌手、ロッド・スチュアートの同名の曲を、日本語化したものである。
それについて、私の、愚見を述べたいと思う。
01.動画
Youtubeに、関連の動画がある。
以下は、ロッド版である。
ロッド版は、"Da Ya Think I'm Sexy?"というタイトルになっている。
PVの中の、酒場にある、ブラウン管テレビの中に映っている映像が、PV…という遊び心。
夢へ、いざなうかのような、シンセサイザーと、
エレキギター、ドラム。
着崩したファッション。
これらが、いかにも、洋楽である。
以下は、沢田版である。
煙草を吸いながら、という歌い方。
しかし、元が、洋楽とは思えない、自然な歌唱を、披露している。
非常に、楽しめる曲だと思うのだが、
なぜか、沢田版は、CD化されていない。
02.日本語版の作詞家
この歌について、個人的に目を引くのは、
日本語への翻訳に関しての、作詞が素晴らしい、という点である。
但し、その作詞家は、詳らかならず、誰かは分からない。
しかし、ヒントらしきものはある。
同時期に、
ロッド・スチュアートの曲、"Hot Legs"を、
同じく、沢田研二の歌唱用に、日本語化した『ホットレッグス』というものがある。
その曲の作詞家は、岩沢律氏だ。
『アイム・セクシー』の作詞家も、その岩沢氏ではないか、と思われるのだが…。
以下に、勝手ながら、載せてみた。
03.日本語版の歌詞
そうさ "Baby." 行き止まりさ
どこにも 逃げ場はない
追いつめ 狙い つけて
とどめを刺せ ベッドの上…
思いのまま そうさ "I'm sexy?"
勝負は見えた
自惚れ屋の その口から
聞きたい "I love you!"
いつも 涙もない
その手なら 文句はない
"Hold on me!" 抱かれちまえ
あっさり 心 決めて
優しい声 抱き締めるうち
応えないと 泣きを見るよ
思いのまま そうさ "I'm sexy?"
勝負は見えた
自惚れ屋の その口から
聞きたい "I love you!"
稲妻に
撃たれたように
お前は動けない…
いい夢 見たいのなら
跳ねっ返りの振りはよせ
なかなか 落ちないもの
こっち 向かせて みたくなる
気のない素振り してるくせに
潤んだ眼まで隠せない
思いのまま そうさ "I'm sexy?"
勝負は見えた
自惚れ屋の その口から
聞きたい "I love you!"
…思いのまま そうさ "I'm sexy?"…
…勝負は見えた…
…自惚れ屋の その口から…
…聞きたい "I love you!"…
思いのまま そうさ "I'm sexy?"
勝負は見えた
自惚れ屋の その口から
聞きたい "I love you!"
04.解説
ある男が、ある女に出逢った。
「ねえ、『僕』。
私って、綺麗?」
その女は、意のままにならない、跳ねっ返りで、
(非常に、古風で、奥ゆかしい言い方である)
しかも、容貌に自信があるのか、
相当の、自惚れ屋である。
彼は、空想する。
「愛しているわ」
もし、その女に、こう、囁かれたら、
俺は、毎日が、どんなに幸せだろうか。
彼は、更に、空想の中で、女に、「勝負」を挑む。
「もう、私には逃げ場はない、って事ね。
抱いて」
それは、ベッドの上での、奔放な戯れだった。
彼に抱かれて、女は、やがて、稲妻に撃たれたように、硬直した。
それは、女への、彼の「とどめ」だった。
そうやって、彼は、空想で、女と「いい夢」を見ようとする…。
現実でも、あの女を、口説き落としてやりたいが、
落とせるものではない。
しかし、もしかしたら、あの女の、潤んだ瞳は、
今、この俺を意識しているのかも知れない。
「愛しているわ」
彼女は、俺に、こう言わんとしているのかも知れない。
だが、彼には、それを確かめるような勇気はない。
今日も、今日とて、彼は、自分を持て余している限りだった…。
『アイム・セクシー』は、このようなストーリーの歌である。
沢田研二が歌うと、また、雰囲気が出る。
歌の中の男に、共感が出来る男達は、きっと多いに、違いない。
他に、歌詞の所々で、「」に当たる、" "を入れたのは、
その部分は、男の言葉ではなく、相手の、女の言葉に当たるからである。
言わば、歌い手の中で、場面の切り替えが起きていると、考えて欲しい。
そう考えると、映画的な、巧みな歌詞と言う他、ないのである。