悲愴をヴィオラで弾いてみませんか
ベートーヴェンのピアノソナタ『悲愴』はピアノを弾く人なら誰でも練習する曲ですし、そのテーマは有名すぎるくらいですが、音域が低いのでヴィオラ向きかなと思っておりました。そこで色々と市販のヴィオラ編曲版を探してみたのですが、弦楽器がわかってない人の編曲だったり、原曲と違う調性になっていたり、構成が簡略化されていたりするのでガッカリ。特にベートーヴェンは調性にこだわって作曲しているのでなんで他の調に変更するのかな。原曲の方が弾きやすいのにね。ヴィオラは、バイオリンと違ってフラット系調性が得意なのでAs-Dur、Des-Dur、Ges-Dur、バッチ来いという感じです。特にAs-Durだと開放弦のC線とG線がいい感じで鳴るんですよね。
ちなみにB-Dur版の楽譜もあって弾いてみたのだけども、この調では開放弦がC、G、D、Aが共鳴するので明るい感じになってしまって、長調なのに薄暗い愁いや、かすかな希望みたいなものが、消えてしまう感じがします。As-Durにすることによっていい感じの音色になるですよね。ベートーヴェンの頭の中では弦楽四重奏が鳴っていたのかも。アレンジャーは弦楽器用に編曲するときは調性も考慮して考えてくれないといけませんね。
原曲のAs-Durの楽譜としては、IMSLPにあるZitt先生の版はなかなかよかったけども、Zitt先生が加筆している部分がちょっと演奏効果が薄い感じで、なら自分で編曲するかということで作ってみました。
コンセプトとしては以下としました
・原曲の調性、構成を変更しないこと。
・加筆する場合はベートーヴェンの魂を継承すること。
・ヴィオラ無伴奏でも楽しんで弾けるように。
・中級者が無理なく弾けるようにすること
・運指をつけること。
ただ運指は弾きやすさを重視しております。表現的に上を目指す上級者ならさらによい運指があります。
運指は、ヴィオラの市販版ではついてない場合が多く、その言い訳として、自由に弾いてもらいたいとか、先生に教えてもらえとか書いてあるのですが、弦楽器奏者にとって運指は表現上、非常に大切なのでベーレンライター版やヘンレ版では一流奏者の運指をつけてあるのですよね。これがとても参考になる。クライスラー、ハイフェッツの運指が書いてある楽譜も同様。バイオリンを習っている人なら運指をカバーできるかもしれないですが、ヴィオラから入る人は運指を考案することはほぼ無理ですよね。
偉そうに書いてしまいましたが、バイオリンの運指とヴィオラの運指には違いがあるとは思いますが、私はバイオリン感覚で運指をつけているのでヴィオラの方からみると結構不満があるかもです。
ららトーク版に関しては、弾いてもらって感想とか修正点があればご意見承ります。編曲していて思ったのですが、ベートーヴェンの指定しているアーティキュレーションの一部は弦楽器向きではないところもあるので、どうしようか迷ったのですが、とりあえずそのままにしております。
※変更履歴 2023/07/02 65小節の運指変更
演奏ヒント:
・音程は開放弦のC線とG線を基準にすると取りやすい。
・装飾音のところはテンポを落とすが、古典派らしくテンポはキープ。
・IIはD線、IIIはG線で弾くことを意味します。
他にピアノ伴奏版や伴奏音源も作っているけれどもこちらはアップの希望が多ければアップしますかね。ピアノの人が伴奏しやすいようにほぼ原曲どおりで一部省略という楽譜になっており、原曲どうりに弾いても合わせることができるでしょう。
この曲は、弦楽四重奏曲向けにアレンジするとぴったりきますね。ベートーヴェンの言いたいことがよくわかる良い演奏です。