彼の人生そのものが詩
四国一周をするために広島空港に降り立ち、尾道を通ったので尾道ラーメンを食べた。いや、尾道ラーメンは尾道ラーメンだったが、食べた土地が尾道だったかは定かではない。兎に角、尾道ラーメンが美味しかったという記憶だけは鮮明に残っている。『頁をめくる音で息をする』を読みながら、20年ほど前の記憶が蘇った。
この本は、古本屋弐拾dBの店主である藤井基ニさんが書いた本である。古本屋弐拾dBのことは雑誌かSNSで知った。遅い時間に開店する古本屋というのが印象的だった。『頁をめくる音で息をする』を読みながら、遅い時間だからこその、(お客さんとの)やりとりなのかもしれないな、と思った。私は158頁のお客さんとのやりとりが特に好きだ。
人の悲しみを理解できる人でありたいと思っていたことを思い出した。悲しみを知る人。あきらめているけれど、気概も持ち合わせている。粋。本も終盤に差しかかり、そんな言葉が頭の中に浮かんだ。粋という言葉が頭の中に浮かんだのは、藤井基ニさんが、中原中也に憧れ、詩人になりたいと思ったからかもしれない、とこれを書きながら思った。
詩を読みたくなった。古本屋弐拾dBに置いてある詩を読んでみたいと思った。尾道には行けそうにもないけれど、今は、ネット上で販売している店も多い。私は弐拾dBと検索した。弐拾dB通信販売所というサイトが出てきて、「雑居雑感」、「在郷の詩人木下夕爾」を購入した。