データマネジメントの導入方法

これまで、データマネジメントについて以下の順番で説明してきました。

  1. データマネジメントの重要性

  2. データマネジメントとは何か

  3. DXとデータマネジメント

  4. データマネジメントに関するコンセプト・システム編

  5. データマネジメントに関するコンセプト・データ編

今回は、データマネジメントを企業に導入するにはどうすればよいか次の順番で説明します。


データマネジメント成熟度モデル

次の図は、DMBOKのデータマネジメント成熟度モデルを、各分野別に詳細化したものです。

データマネジメント成熟度モデル

データマネジメント成熟度モデルに合わせて、次の図のように、データ利活用の成熟度も上がり、DXが進みます。

データ利活用の成熟度

データ利活用の成熟度がレベル4以上でデータドリブン経営が実現できた状態になります。

データマネジメント導入の概要

次の図は、事業のライフサイクルを表しています。

事業ライフサイクル

ビジネスには、その存在意義になる事業パーパスがあります。
「ビジョナリーカンパニーZERO」という書籍では、事業パーパスを
組織が存在する根本理由
とし、組織の行方を照らす星のように、常に努力すべき目標ではあるが、完全に達成されることはない(100年間に渡って会社の指針となる)と明記しています。
それに対して、ビジョン(書籍ではミッション)は、
大胆で説得力のある野心的目標
とし、明確なゴールと具体的期限がある、達成されると、新たなビジョンが設定される(理想的な時間軸は10年から25年)と明記しています。
以下、ビジョナリーカンパニーZEROからの引用です。


山岳地帯で案内星を追いかけるたとえ話を思い出してほしい。
パーパスはこの案内星で、常に地平線上に浮かんでいる。
決して手の届かないものだが、常に前へ前へと導いてくれる。
一方、ミッションはあなたがその時々に登っている山だ。
頂上に着いたら、再び案内星に視線を戻し、次に登るべき山を選ぶ。

ビジョナリーカンパニーZERO

ビジネスがビジョンを設定して、それを実現するための事業戦略を策定し、実行するサイクルを、ここでは「戦略サイクル」と呼びます。
戦略サイクルは、次のフェーズから構成されます。

  1. 設計フェーズ
    ビジネスの本質的な型(ビジネスモデル)を設計するとともに、事業戦略の本質である戦略マップを策定し、戦略目標に対するリスクとコントロールを設計するフェーズです。

  2. 戦略フェーズ
    事業パーパスを具体化したビジョンを設定し、それを実現するための事業戦略を、戦略マップを具体化することで、策定します。
    事業戦略は、BSCとアクションプランに展開されます。
    ※BSCのKPI目標値にはリスクの許容度を反映します。

  3. 構築フェーズ
    戦略フェーズのアクションプランに基づいて、ビジネスシステムを構築します。

  4. 運用フェーズ
    構築されたビジネスシステムを、会計期間ごとのマネジメントサイクル(PDCA)を通して運用します。

データマネジメントは、次の図のように戦略サイクルを通して、データマネジメントが管理され(レベル4)、データドリブン経営が実現できる状態を目指します。

データマネジメント導入の概要
  1. データマネジメントモデルの設計
    データマネジメントの目的と方針を設定し、それを実現するためのデータアーキテクチャ(概念レベル)、データ管理基盤(基準レベル)、データマネジメント組織(ジョブ)、データマネジメントプロセスを設計し、データマネジメントポリシー(目的、方針、基準、手順)としてまとめます。
    なお、データアーキテクチャはエンタープライズアーキテクチャ(EA)の一要素です。
    また、データ管理基盤は、テクノロジーアーキテクチャの一要素です。
    データマネジメントモデルの設計をすることでデータマネジメントが定義されたレベル(レベル3)になります。

  2. データマネジメント戦略の策定
    データマネジメントのビジョンを設定し、それを実現するためのデータアーキテクチャ(論理レベル)、データ管理基盤(製品レベル)、データマネジメント組織(部門)、データマネジメントシステム構築プランを設計、策定します。

  3. データマネジメントシステムの構築

    1. データ管理基盤の構築
      データマネジメントシステム構築プラン(データ管理基盤構築プラン)に従って、データ管理基盤を構築します。

    2. データマネジメント組織の構築
      データマネジメントシステム構築プラン(データマネジメント組織の構築プラン)に従って、データマネジメント組織を構築します。

    3. データマネジメントシステムの検証
      データマネジメントプロセスに従って、データマネジメントシステム運用し検証します。

  4. データマネジメントシステムの運用
    データマネジメントプロセスに従って、データマネジメントシステム運用し、データマネジメントが管理され(レベル4)、データドリブン経営が実現できる状態を目指します。


次の図は、データマネジメント導入プロセスの全体像を表しています。

データマネジメント導入プロセスの全体像

また、次の図は、データマネジメントモデル設計の流れを示しています。

データマネジメントモデル設計の流れ


それでは、データマネジメントの導入プロセスを詳細に見ていきましょう。

ここでは、製造業者向け産業機械を製造、販売する山田産業という架空の会社にデータマネジメントを導入するケースを通して、データマネジメントをどのように企業に導入するのか具体的に説明します。
山田産業は、製造業者向け産業機械を製造、販売する会社です。
仕入先から部品を購買し、産業機械を製造して顧客に販売します。
産業機械の保守は、全国にある保守サービス会社が代行します。
山田産業は、保守サービス会社に保守部品を販売します。

山田産業のビジネスモデル

データマネジメント導入の詳細

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