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会社の役員が「他の法人の代表者」として会社と取引を行う場合の当該取引は関連当事者取引に該当するか?

監査やIPOアドバイザリーを行っていると関連当事者の開示に必ず触れます。今回は稀に遭遇する「会社の役員が『他の法人の代表者』として会社と取引を行う場合の当該取引は関連当事者取引に該当するか?」という論点について考えてみます。

結論からいうと、この場合の取引は関連当事者取引に該当します。
例題を用いて解説をしていきます。

1.例題の設定

今回の論点をわかりやすくするため以下のような例題を設定します。
A株式会社(以下「A社」)の役員Xが、A社と資本関係がなく、かつXが議決権を保有していないB株式会社(以下「B社」)の代表取締役を兼務しており、会社を代表する権限を有している場合に、A社にとってB社との取引は関連当事者取引になるか?(B社はA社の関連当事者の範囲に含まれるか?)

2.会計基準等の定め

一見すると例題のB社はA社にとっての関連当事者に該当しそうですが、関連当事者の開示に関する会計基準(以下「関連当事者会計基準」) 5項(3)では、財務諸表作成会社の役員が、当該会社と資本関係がなく、かつ当該役員が議決権を保有していないの他の会社が財務諸表作成会社の関連当事者の範囲に含まれるかは明示されてはいません。関連当事者適用指針、財規、連結財規及び計規も同様です。

3.考察

では、例題の取引は関連当事者取引に該当しないのでしょうか?
これに関して金融庁の有価証券報告書レビューで当該取引が関連当事者取引に該当するとの記載がありました。

提出会社の役員等が他の法人の代表者として会社と取引を行うような場合は、関連当事者取引に該当し、関連当事者が法人の場合の取引の判断基準により、開示が必要になる場合があること(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針第16項、第33項)
金融庁企画市場局.平成31年度 有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項.2020,p.31

金融庁企画市場局.平成31年度 有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項

この記載は、関連当事者の開示において実質的な判定を求める会計基準の定めにも合致していると考えられます。

関連当事者の開示について適切な開示を求める観点から、関連当事者の範囲は形式的に判定するのではなく、実質的に判定する必要がある。
関連当事者会計基準 17項

4.まとめ

以上のことから「会社の役員が『他の法人の代表者』として会社と取引を行う場合の当該取引」は関連当事者取引に該当するといえます。

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