支援センターより「鴻巣 麻里香 さんとは」
※この記事は、社会福祉法人 京都障害者福祉センターの「法人ニュース」に掲載した、2022年度6月号の記事を転載しています。
2022年の 1 月から 5 月にかけて、毎月1回の頻度で行われた研修会に参加しましたので、その研修会の感想や印象に残った部分について報告致します。
その研修会は「鴻巣 麻里香(コウノス マリカ)さん連続講演会」という、名前通りの「鴻巣麻里香さん」という方の講演会で、主催は鴻巣麻里香さん連続実行委員会、支援セン ター「にしじん」さん等協賛の研修会でした。
まず、この「鴻巣麻里香さん」ですが、皆さん知っておられるでしょうか。私は全く知らず、研修会の案内を見て早速名前をネット検索して知りました。フジテレビ系の「セブンルール」に取り上げられた方でも あり、福島県白河市で活動されているソーシャルワーカーです。
下記に簡単に紹介致しますが、より詳しく はネットで検索してください!
・精神科医療機関で約 10 年勤務し、東日本大震災後の福島で被災された方や避難された方のメンタルケア に従事。
・その後退職し、子どもの居場所づくりとして「KAKECOMI」を開始。
・「子どもまかない食堂」から始まり、女性や子どものための「セーフティシェアハウス」の運営、「ソーシャルワーク相談室」を行っ ている。
さて研修会ですが下記のタイトルで行われました。
1 回目…駆け込みのココロミ~自立しつながるソーシャルワークの試み~
2 回目…自己責任社会に抗う①申請主義と制度のスキマ
3 回目…自己責任社会に抗う②トラウマインフォームドとソーシャルワーク
4回目…自己責任社会に抗う③ジェンダーと貧困
5 回目…カケコミのレシピ~自己責任社会に抗うためにひとりひとりに今できること~
鴻巣さんのバッググランドには、母親が外国人であった事で小学生の時にイジメを受け、家庭が一時困窮した過去があります。1年ほどでその問題は解決しましたが、「居場所がなく」、「孤立した」経験は、その後も「世間を「色めがね」で見てしまう」。それは「トラウマ」であり、その「トラウマ」は「私には価値がない」という信念を積み重ね「人間関係が不安定でうまく生きる事ができなくなってしまう。
その「色めがね」をかけ世間を生きていく中で「同じ事を生まないためには何が必要なのかと考えた時に、日頃からつながりあえる、孤立しない、 助けてと言わなくても気付き合える関係、どんな状態になったとしても家は失わないでいられる事としてこの取り組みにつながった」そうです。
そもそも「色めがね」をかけてしまう可能性の高い、脆弱性のある社会保障制度に問題がある事、そしてこの脆弱な制度のスキマから抜け落ちる 「困っている人」の困りを「自己責任にしない」ソーシャルワークを体現しています。
最近の相談の具体例として、ハイティーン(18 才や 19 才)の女の子からの相談が増えているそうです。「虐待で逃げている」といった理由で鴻巣さんのところに駆け込んでくる。18 才ではお金もないし、家は契約ができない。(4 月から民法改正で 18 才成人となったが)ケアや支援が必要という課題がある中で、 そこには制度がない。 また DV 被害で逃げてきているが、DV 法は基本的に「配偶者」とされており、配偶者以外の DV では法の対象とはなりにくい現状があり、セーフティシェアハウスの必要性につながっているそうです。
この研修会、1 回 3 時間の講演会であったため、振り返ると沢山の学びとなったわけですが、鴻巣さん が話された話の中で印象に残った部分が下記の内容でした。
「人権というものに対する価値観のすり合わせを丁寧にしている。善意ではなく人権。善意は自分に権力がある事を忘れさせてしまい、いい気持ちにさせ、いい人になれると感じるので危うい。なので、善意では なく人権を視点に考える事や動く事ができる事が大事。」そのため「私は権威を剥ぎ取ろうと常に意識している」という内容でした。
私自身、相談員をして 20 年弱になりますが、指摘されるように「いい気持ち」を求める部分があります。 その事で失敗し、反省する事も多いのですが、人権から考え、社会構造の問題に目を向ける。
申請主義の問題や逆境体験から生まれる「色メガネ」という「トラウマ体験」への理解、「ジェンダー差別構造」で排斥される人たち…の視点は、今後の私達の活動の課題として突きつけられているように感じています。
この研修会ではどの回も深く考える必要があり、自分の中での整理が及ばない、思考が追いつかない…といった感覚に囚われてしま い、この場ではうまくまとめられない事が多いのですが、自身の振り返りと併せ、鴻巣さんの事や鴻巣さんの活動や思考を知る事ができ、知らない方にも知って頂く事ができたらという思いから記事にさせて頂きました。
ホームページや Twitter、フェイスブック等で情報発信されてい るので、刺激が欲しい!という方はぜひともアクセス下さい。また ミネルヴァ書房から「ソーシャルアクション!あなたが社会を変え よう!」という本も出版されていますので、ご興味がある方はご参 照ください。