藝術は吐瀉物だ
藝術、物種と云うものは、吐瀉物であると思ふ。
口に入れて、嚥下する。消化されてゆくものは自らの身体から抜け落ち、散っていく。
消化しきれない脂もの、味の濃いもの、ヒト科ヒト族以外には毒にさえなるもの、
手違いで通ってしまったアレルゲン、方々の寄生虫なぞ、肚の中に這入るるが消化され得ぬもの。
そんなものが溢れて、口から手から脳から足から、じわり、と分泌される液、それこそ藝術の真髄で或る。
藝術とは、血生臭いもので或る。背目せざるを得ぬような、汚物である。
何か異物が、ヒトの中で破裂を引き起こして、はじめて出づるのが真の藝術で或る。
害を及ぼし、床を汚し、拭い去るのに多くの時間を要するものこそ、あはれで或る。
終わりのないエゴイズム、華麗なる自己賛美、究極の自己肯定。
天から与えらるるものでなく、身体の内側から嘔吐きの後にどっ、と吐き出されるもの。
「作家」だとか、「クリエイタ」とか、体裁だけの言葉では表せない、
果てしなき不健康、病ひ。
きちがいに成って初めて、藝術は生み出される。