モグラ・福尾 第2話
『あなたの心のふすま、お閉めします』
そういって名刺を差し出してきたのは、やや大柄なサラリーマンであった。
『わたくし、モグラ福尾と申します。お見知りおきを。』
そう言って名刺を渡してサラリーマンは帰っていった。なんだよ営業外にオレが営業かけられるのか?wウケるな。
俺の本名は「干酢 トウヤ」、源氏名は「トウヤ」。繁華街のホストクラブにで働いている。最近、掛飛び(後で払うといって客が姿を消すこと)ばっかりでウンザリだ。店が貸してくれる寮の家賃さえ払うのがキツイ。
そんなとき、このあやしげな小太りサラリーマンにあった。
ワラにもすがる気持ちで、俺はモグラ福尾の名刺の裏に書いてある『BAR ジェノス』へと向かった。
BAR ジェノス
マスターが水割りを差し出してくれる。
モグラ「ようこそお越しくださいました、なにか悩みがおありなのですよね?」
トウヤ「そうなんですよ、最近、掛飛びばっかりで大赤字なんですよ…」
モグラ「お会計をせずにお店を出るのはよくないことですよねえ」
トウヤ「本当ですよ。困ったもんです。あ、ここのお会計は」
モグラ「心配いりませんよ、トウヤさん。行きつけなので私がごちそうさせてください。第一私がお誘いしたのですから。」
トウヤ「あ、ありがとうございます!」
モグラ「掛飛びの件ですね。私が明日の晩、お客さんからお金を回収して、トウヤさんのお店まで支払いに参りますよ。」
トウヤ「えっ!?でも皆連絡がつかなくて…….」
モグラ「なあに、心配いりませんよ。」
半信半疑のまま帰宅すると、すぐ眠りについてしまった。
起きると18時。19時出勤なので急いで準備をして店に向かった。
「トウヤさん!掛飛びされていたお金が帰ってきましたよ!」
会計の木村が言う。嘘だろ??しかしそのスーツケースにはしっかりと掛飛びされた額が領収書とともに入っていた。
モグラ福尾の名刺とともに。
その日の営業はうまくいった。とにかくモグラ福尾に感謝しなければ。
営業終わり、ふたたびあそこへ向かうことにした。
BAR ジェノス
トウヤ「モグラさん!ありがとうございます!おかげで家賃も安心して払えます!」
モグラ「フォッフォ、それはよかったです。」
トウヤ「それで、手付け金はいくらくらいでしょうか…?」
モグラ「わたくしボランティアなので、お金は一銭もいただきません。しかし…」
トウヤ「しかし?」
モグラ「絶対に枕営業だけはしてはなりません。よろしいですね?さもなくば…」
モグラ「あらら、言い終わる前に帰ってしまいましたね、せっかちなお方ですね、、、」
翌日
トウヤ「代表寮の家賃払えずすみませんでした!これ、今までの分です!」
代表「お!たすかるよ~トウヤくん。それで、少し相談なんだけど」
トウヤ「はい…?」
トウヤ「(代表が言うには、今日世界でも有名な財閥の娘さん、ザイバーツさんが来る)」
トウヤ「しっかり準備しないとな、、、」
開店
「いらっしゃいませ!ザイバーツ様!」「いらっしゃいませ!!」
「当店ナンバーワンの”トウヤ”をご紹介させていただきます!」
ザイバーツ「この子、トウヤくん?いいわね、指名」
「はい!ただいま!」
「トウヤくーん!ザイバーツ様からご指名です!」
トウヤ「(緊張するな….)はーい!」
ザイバーツ「トウヤくん、見れば見るほどいい男だわ、、」
ザイバーツ「私の財閥、後継ぎがいないのよ、うちのマンションに今夜こない?」
トウヤ「(機嫌を損ねたらうちの店ペチャンコだ、、)」
トウヤ「はい!行きます!」
トウヤ「(どうせ冗談だろ、、)」
ザイバーツ「この子トウヤくん、早退したいらしいわ!」
「は、はぁ、、」「かしこまりました!」
「ご来店ありがとうございました!」
気が付くと、豪華なベッドの上。ザイバーツが裸でオレの上に乗ろうとする。
モグラのことば、、、「枕営業はしてはいけません。」
オレは必死に抵抗しようとするが、手も足も動かない。見ると、手錠足かせで固定されている。
気づくと、事は済んでいた。
ザイバーツは、急に父親を呼ぶと、父親のグレート・ザイバーツがいた。
グレート「こいつは20000ドルで、アセルハイシャンに売ってしまおう」
トウヤ「(そ、そんな、嘘だろ?枕営業しただけで人身売買なんて…)」
『あれほど言ったじゃありませんか。枕営業をしてはならないと。』
モグラはビルの隙間を歩いていく。
「掛飛びはもちろんいけませんが、枕営業もいかがなものかと、思いますねえ。もっとも私は、それほどの体力はありませんがね、、フッハッハッハ」
モグラはビルの谷間を抜けて、どこか遠くへと消えていった。