ノート的境界線群 2号
1.新作詩
「化け物」
お祭り騒ぎにまぎれて
僕は踊っている
仮装が素晴らしすぎて
本物には気付けないんだ
考えてみてごらん
この世の中に
化け物として生まれて
二十年生きることを
草だったら
何も考えないで済んだのに
悪魔だったら
憎んで呪って笑えたのに
天使だったら
空を飛ぶだけで祈られたのに
なんで僕は僕になったんだ
毎日これが続けば
みんなわかるはずさ
化け物だって悪くない
夢さ そんな夢さ
2.新作短歌
淡々と続く日々こそ怖くなる増えるワカメが増えないように
3.旧作詩紹介
「べイビー・トマト・トマト・抱っこ」
裸で踊る 笑う 何故か
トマト 食べたくなって
冷蔵庫 開けようとしてやめる
赤ちゃん 動かないから
中のもの 全部捨てて
今冷やしてるんだった
おっきなトマト 買いに行かなくちゃ
ちっちゃなふさ 見たら
抱きしめたくなる きっと
八百屋さん 笑う きっと
「19個ぐらいください」 元気だったから
そういえば 冷蔵庫は満杯だから...
涙 頬伝ってるのわかる
何でかな 悲しいのは
私のこと 責めてる誰かのせい
ベイビー・トマト・トマト・抱っこ
癒されるなら 18個まで
潰しちゃっても まだ大丈夫
ベイビー・トマト・トマト・だって
私の中に 戻っていくなんて
やり直せるみたいじゃ ダメ
生まれるはずだったこと 黙っててごめん
代わりにプチトマト 山ほど買った
だけどもう 白状するね
ベイビー・トマト・トマト・もっと
二人で食べたい そう言えたら
今の私も 嬉し泣きだって言える
ベイビー・トマト・トマト・やっと
切り出せるって 思ってるのに
冷蔵庫の中には たくさんの赤ちゃん
裸で踊る それで 終わり
明日はいっぱい ケチャップ作って
トマトの思い出 さようなら 抱っこ
★大学生の時の作品です。文芸部で一番反響があり、自分でも気に入っています。音楽の影響を受けており、リズムやサビというものを意識して作っていました。このときはまだ、「どうせ現代詩の世界では評価されないし」と思いながら書いていたのです。
4.あとがき
一日一作は書いている時期があり、ある頃の原動力はなんだったのだろうと考えます。一つ考えられるのは、昔はパソコンもなく、将棋もそれほどしていなかったから時間があった、ということでしょうか。駄作もいっぱい作ったのですが、それも礎になっていると思います。詩誌に投稿するようになって作風も変わったのですが、あえて昔の感じで書いてみることもあります。今回はその中間のような作品ですが、いかがでしたでしょうか。