ノート的境界線群 11号
1.新作詩
「宇宙十分の一」
星が減り始めていると分かった時には
九割の星は消滅していた
光がここに来るまでの間に
終焉してしまった仲間たち
銀河を巡った船たちが見つけたのは
様々な痕跡ばかりだった
誰もがどこかに逃げて
誰でもなくなってしまったのか
必ず訪れる老いと死は
星にも宇宙にも存在する
未来に投げ捨ててきた無責任に
ついに追いついてしまったのだ
私たちは看取れるだろうか
青くはなくなっていくとしても
たった十分の一の寿命でも
何億年もあるというのに
過ぎてしまった十分の九が
まばゆさを増していく
そんなことは知らなくても
九割のものは殺してきたのに
残念なのは宇宙を弔う存在が無いこと
ささやかな生前葬を執り行おう
産んでくれてありがとうございました
育ててくれてありがとうございました
輝いてくれて そして深い闇をくれて
永遠を思わせてくれて 有限を知らせてくれて
全てにありがとうございました
星が一つ消えても気づかない
そんなことが毎日続いて
無になってしまうのだろう
この星が消えてしまっても
光は旅を続けていく
どこかの銀河の誰かにも
ありがとうを伝えておこう
ありがとうございました
ありがとうございました
2.新作短歌
ログインが忘れ去られた魔法石集めて回せ火星の風車
3.旧作詩
「無限の言葉」
少女と少年は
いつまでもしりとりをしていて
どこまでも終わらなくて
無限の言葉の中で
老人になっていく
木々は枯れて
新しい芽も伸びられるとは限らずに
影のなくなったことに気がつかないまま
無限の言葉の中で
永遠を見つけた
強い風が
運んでくる
新しい言葉を
もう 少女でも少年でもない
二人の影が
新しい芽を枯らして
何も風をさえぎらない
どこまでも続く
★こんな作品が書けたんだなあ、と思ったりします。七年前のものです。この後、同じテーマでいくつか作品を書いたと思います。つまり、持ってるネタは案外少ないという(笑)
4.あとがき
「宇宙十分の一」は、詩と思想新人賞で一次選考通過でした。通過したことはうれしい半面、二次に進めなかったということでまだまだ頑張らなければならないという思いです。初めて小説で一次通過したのが、19歳の時でした。その時はたいへん嬉しかったのですが、一次通過が何回か続き、二次に進めないことに悩むようになりました。初めてその壁を越えたのは、29歳の時です。そしてその先の壁は、まだ越えたことがありません。また十年かけてでも、越えていきたいと思います。