ノート的境界線群 5号
1.新作詩
「打算的」
見ず知らずの人は愛せない
その人のために涙も流さない
会えば嫌いになるかもしれないし
私の恋人を奪うかもしれない
誰にでも優しくはできないし
誰にでも優しくありたいわけでもない
それでも
誰かが傷つく姿は悲しい
私であったらと考えても
ただ苦しむ姿そのものでも
悲しみは勝手に湧き上がる
好きになれる人を好きになって
嫌いになる人はできるだけ避けて
残った心で そのわずかな心で
祈ることができたならば
見ず知らずの人に
祈る心があれば
優しいと思ってもらえるだろう
架空の花を美しいと言うように
浮ついた思いであっても
悲しみが無い方がいいと
少しでも願っていれば
私を傷つけに来る人が
まだ見ぬ普通の誰かが
私に気が付きにくくなるかもしれない
祈ろう
打算的に祈ろう
2.新作短歌
自意識が暴走してる小指にも爪の長さがあると知った
3.旧作詩紹介
「なみだ」
なぜ
みんな
だまされるの
なぜ
みえない
だれもかれも
ながれていくもの
みつけたとき
だいたいわかった
なぜ
みょうに
だるいのか
なくしていくもの
みすみすのがして
だいそれたなみだながす
★十年ほど前の作品だと思います。縦読みですね。詩は「限定」があると書きやすいので、「自由にどうぞ」と言われる方がきついことがあります。あと、ひらがなだけって魔力がありますよね。多用は注意っ。
4.あとがき
パソコンが変わると諸々のパスワードがわからなくなることがあります。過去の自分の思考を想像して、なんとか思い出そうとします。……かっこよくいってますが、だいたい無理です。過去の自分、未来の自分にも分らないパスワードを考え出すとは、見事じゃ……と、これは昔の自分の詩を見ても思うんですよね。私、何考えていたんだろう、と。
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