表紙2

ノート的境界線群 17号

1.新作詩

「青い香り」

無色透明に生まれたかった
そうでなければ鮮やかな光の下で
抱かれたまま育ちたかった
世界は単調に過ぎて
僕はまっすぐにひねくれた

自分で作った盤を抱えて
走り抜ける先
いつもの場所には柵
風もさえぎられている
絶望の種が落ちているよ

一人じゃ
角換わりできないだろ
帰ってこいよ ねえ ねえ
間違いだらけでもいいから
時間よ狂って
あの人

青い香り 少し揺れて
空を回す 声を舞わす
見上げた 先には
光 とっても薄い光

少女は溶け込むように
僕の前に立っている
ボロボロになった盤から
どこか懐かしい香り
彼女は7七に角を置く
僕は3三に角を置く
地面の底から咆哮が聴こえた

世界が目覚めた


2.新作短歌

静寂を夜の湖畔に逃がしたら明日の朝には大海の泡


3.旧作詩

「初の枯れ」

教室の机の一つ一つに
失われた名前を刻んでいった
花よりも先に花瓶が足りなくなる
貴方達の罪は埋没するでしょう
私一色に染められすぎて
新しい世界を見つけたら
他の誰かを傷つけてください

春の新緑は怖い
枯葉否定する彼らは
再び死へと行進を始める
肯定の連鎖は靴底の呪いを
虚空へと吐き出させる
直角の庭に植えられた
リミット八か月の花
私はあなたにあれを見せたくない

この我儘を見透かした貴方は
何も残さずに消えていった
私はせめてその罪を
勝手に貰ってもらおうとして
より重い罪にした

チョークを五本束ねて
境界線を何本も引いた
カーテンを引きちぎって
教卓の目を閉ざした
白く濁った爪の中
赤く澄んだ未来が語りかけてくる
散る間際の覚悟は
最も若々しい妬み

★ 七年前の作品です。今と作風が違います。ただ、書きたいことは変わっていないような。細かいことですが、私は常に最後の一行に悩んでいます。この頃は体言止めでなんとかしようとしていた……のかもしれません。今は繰り返しが多いです。


4.あとがき

今回の新作詩は、四年以上前に書いたものです。「エウレカ将棋詩」というあまりにも狭い対象のものだったのでお蔵入りしていました。あと何作かあります。エウレカと将棋、どちらも分かる人は少ないと思うのですが、何となくで楽しんでいただければ。実は初めて、「詩と思想新人賞」で入選しました。まだ一番になれていませんので、もっともっと頑張っていかなければ、と思っています。ふざけながらも真面目に、詩作を楽しんでいければよいなあ、と。


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清水らくは
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