#小説
【短編小説】「あるもの」
あるものが、闇の中でため息をついた。
「ああ、幽霊、妖精、ゾンビ、宇宙人。全部やり尽くしたなあ。もうみんな驚かないよ」
あるものは、なんにでもなれる。でも、なにものでもいられなかった。だれもあるもののことは知らない。あるものはいつも違うものだ。
「恐れて欲しいなあ。あるのかないのか疑ってほしいなあ」
あるものは闇から這い出て、世界の中を進んだ。ぐるぐると歩いて、驚いた。
「びっくりだ! こん
【短編小説】休日シーソー
多くの瞳が、こちらを向いていた。
きっと、今日は休みの日なのだろう。家族連れが多い。
目の前には、かなり旧型のパソコンが置かれている。僕の家には、なかった。必要がないというか、使い切れないというか。
「随分と賑やかですね」
奥から、女性の声がする。
「こっちに来てよ。一人じゃ気が重い」
返事はなかった。無理もない、彼女はまだここに慣れていないのだ。
「あーあ。なんかするか」
パソコンに
【短編小説】 年末パズル祭り
そうだ、それ以上のイベントを作ってしまえばいい、と考えた。定着するには季節に合ったものがいいし、一人で家にいる理由ができるのがいい。そして、世間の支持を得るにはお金が動く方がいいだろう。
そこで考えたのは、「特大カレンダーのパズルを作る祭り」というものだった。これならば家でするのが当たり前だし、年末にやる理由があるし、お店も儲かる。
まずは自分でやってみないと話にならない。パズルを買う
本当のサンタクロース
布団の中で、僕は寝息のまねを続けていた。
今年こそは。今年こそは起きてなきゃいけない。
どれぐらい時間が経っただろうか。足音が、こちらに近づいてくる。
気付かれちゃいけない。必死で眠ったふりを続ける。ごそ、と音がして、枕元に何かが置かれたのがわかった。足音が、遠ざかっていく。
しばらく時間がたって、布団から顔を出す。いつもの年と同じように、大きな箱が置かれていた。
僕はその箱