烏(からす)カァで夜が明けて
きょう2月3日は「立春」。春の始まりです。
落語で春の始まりといえば「明烏(あけがらす)」。
この噺、好事家によると初午(2月6日)に起きた出来事という設定のようですが、6日には訳あって別の噺のことを書きたいので、今年は前倒しします。
その昔「まんがはじめて物語」という子ども向けのTV番組がありましたが、こちらはさしずめ「らくごはじめて物語」といったところでしょうかね。
春をひさぐ
どうにも堅物な息子を心配した大店(おおだな)の大旦那、札付きの遊び人コンビに息子を吉原に連れていくよう頼みます。
「お稲荷さんにおこもりをする」と騙された若旦那ですが、いくら堅物とはいえ、しばらくいると、春をひさぐ場所であることが分かり…。
ところが烏カァで夜が明けると意外な結末が、というお噺でして。
江戸の夜明けは「烏カァ」
私は落語初心者の頃、明烏以外の江戸落語にも出てくる、この「烏カァで夜が明けて」という場面転換のフレーズを少し不思議に感じたものです。
朝を告げる鳥がニワトリでなく、カラスであることに、です。
しかしカラスの方がなんとも江戸っぽくて、情緒が感じられていいと思うようになりました。
特にこの噺の場合、このフレーズは場面転換だけでない意味を持ち、あまり詳しくは書きませんが、隠語でもあるらしく。
さて、前述の通り田舎の朝はニワトリが告げますが、ミニ吉原のごとき遊郭街「二本松」がかつて存在した信州飯田には、どこの祭りだったか忘れましたが、ハッピの背中に「明烏」という乙な文字を入れている町内があります(これを祭りにおける源氏名という)。現在も。
祭りの後、みんなで二本松に繰り出して、朝方帰ってきたわけじゃないでしょうけれど、飯田の柔らかい文化の一端がこんな所にも表れているんだな、と感じます。
春の朝焼けを見ると、そんなことを思い出したりもします。