不要不急の外出を控えた結果・・・餃子(落語のマクラ)
鈴々舎馬るこです。
寄席は4月12日まで完全に休みになりました。
もう家を出てはいけないということですね。
落語家は本来、週末のイベントで生活費を稼いでいるものですが、仕事がありません。
仕方がないので、餃子でも作ろうとスーパーに行くと、餃子の皮がありません。
先週末もなかった。
今週平日覗いたら大量にあったので、たまたまかと思ったら、今週末も餃子の皮が無い。
これは間違いなく、全員が一斉に餃子を作り始めているのです。
ひき肉を使うならハンバーグでもいいのです。
でもハンバーグは先週作ってしまった。
なぜなら餃子の皮が無いから。
2週続けてハンバーグの舌ではないのです。
餃子なのです。餃子。
だいぶ歩いた肉屋さんに餃子の皮がありました。怒りに任せて、タケノコ餃子、ニラ餃子、セロリ餃子と3種類も作ってしまいました。
今日は餃子パーティーです。
総務省の家計調査の、一世帯あたりの1年間の餃子への支出額全国1位の座を、宇都宮市と浜松市が毎年競っています。
それこそ毎年のように1位が変わるのです。
私は宇都宮に仕事に行く機会が多いのですが、宇都宮が全国1位の年は宇都宮市民はものすごく上機嫌なのです。
楽屋のケータリングに焼き餃子が置いてあります。
打ち上げも餃子です。
冷凍餃子をお土産で持たせてくださいます。
美味しいので大変嬉しいのですが、
反対に1位を陥落した翌年の落ち込みようが激しいのです。
「去年はありがとうございました。餃子美味しかったですよ」
「・・・馬るこさんね、もう宇都宮は餃子の町じゃないんですよ。いまや浜松なんですよ・・・」
そんなに悲観することないと思うんですが。
2019年の総務省発表で、なんと宇都宮は1位に返り咲きました。
その裏には、1人あたりの餃子の年間消費量を上げようと、涙ぐましい努力をしていたことを私は知っています。
昨年、やはり仕事で宇都宮に呼ばれた時、市内でJAZZフェスをやっていたので、2回公演の合間に野外ステージを見に行きました。
「馬るこさんね、宇都宮はJAZZの街なんですよ。何せナベサダの出身地ですからね」
私はこれを聞きながら、なぜ読売新聞のオーナーの出身地だからJAZZの街なんだろうと疑問を感じておりましたが、よくよく考えるとナベツネではなくナベサダ。JAZZミュージシャンの渡辺貞夫さんの出身地が宇都宮だから、JAZZが盛んなんですね。
野外広場で私の目を釘付けにしたのが、JAZZではなく、焼きそばの屋台でした。
「あんかけ焼きそば」と書いてありました。
パリパリした麺にとろりとした中華五目あんがかかってるのが「あんかけ焼きそば」
そう思ってた時期が私にもありました。
普通の焼きそばに皮を抜いた餃子の中身、つまり「あん」がかかっている、餃子味の焼きそばが「あんかけ焼きそば」だったのです。
普段餃子を食べているなら、フェスの時くらい気分を変えてソース味の焼きそばを食べればいいのに、あえて焼きそばを餃子味にすることによって、一人当たりの餃子への年間の消費額を上げていたのです。
これを努力と言わずになんと言いましょう。
今ネットを調べても、宇都宮で餃子のあんをかけた焼きそばの情報は一切出てきませんが、私は去年のJAZZフェスで確かににこの目で見たのです。
「あんかけ焼きそば」を。
宇都宮市民の1位を狙う陰の努力を。
今回の巣ごもりによって、東京都がかなり順位を上げることは間違いありません。
なにせ全員が一斉に餃子を作り始めたのですから。
でも「あんかけ焼きそば」ほどの執念は無いので、1位には遠く及ばないでしょう。
だって私は来週末、餃子ではなくロールキャベツの舌なのですから。