「そうだ!伊勢参りに行こう!」
『そうだ京都、 行こう』でお馴染みのJ R東海のCMが好きである。
「ああ!京都行きたい!」と思わせるのがバツグンにうまいCMなのである。
この『そうだ京都、行こう。』のキャッチコピーで、約30年もこのCMが続いてきたのだから驚きである。
以前より抱いていた素朴な疑問。
京都(関西圏) って、このC Mの放映圏なのだろうか。
京都在住の方は、あの京都へのいざない方が素晴らしいC Mをご覧になったことがあるのだろうかと。
もしも観たことが無いのだとしたら、ちょっと気の毒に思う。そう思ってしまうほど、厳選された京都の魅力を15秒にギュッと濃縮した秀逸なCMなのだ。
便利な時代になったもので、「そうだ京都、行こう。」と思えばカンタンに京都に行けてしまう時代だ。
ちなみにわたしの場合は、「そうだ奈良、行こう。」となるのだけれど。(縁もゆかりもない土地ながら、なぜか奈良県が好きで好きでたまらない)
とはいえ、疫病過多の時代なので、気軽に観光や行楽での移動がはばかれる・・・なんて時には、落語を聴いて気持ちだけでも旅に出る。
〝旅〟に関する落語ですぐに思いつくものは、【兵庫船】と【七度狐】
二演目とも上方落語であり、〝笑話集〟と呼ばれる仮名草子が元ネタになっている。
笑話集は平たく言うと〝ギャグ本〟で、現代のコンプラに抵触するような下卑た笑いの取り方をする内容が多々含まれていると思われる。いかにも落語演目の元ネタとして使われやすい題材が揃っているのだろう。
【兵庫船】と【七度狐】の元ネタとなった笑話集は、江戸時代、1790年代後半に出版されている。なんと、十返舎一九で有名な滑稽本『東海道中膝栗毛』の出版よりも早いのだ!
『東海道中膝栗毛』自体を読んだことは無いが、そんなわたしでも〝弥次さんと喜多さんがお伊勢参りに行く話〟ということくらいは知っている。
だってだって・・・『真夜中の弥次さん喜多さん』を映画館まで観に行ったもんねーーー!
・・・って、コレ17年前(2005年公開)の作品なのに、長瀬くんも中村七之助も変わらないという驚き。
『真夜中の弥次さん喜多さん』の原作はしりあがり寿の漫画作品だけれども、それ自体が『東海道中膝栗毛』のオマージュ作品である。非現実的な描写も多く、元ネタにどれだけストーリーを寄せているのかはわからないが、キャスティングも良かったし、監督もクドカンなのでとてもおもしろかった。
さて江戸時代には、お伊勢参りが爆発的に流行ったらしい。
『真夜中の弥次さん喜多さん』では、「そうだ伊勢参り、行こう。」くらいに気軽に出立していますが、当時の〝旅〟は通行手形を要する関所を越えなければならず、また莫大な日数や費用がかかるものでした。もしかすると、現代の私たちが海外にバックパックの旅行に行くよりも、精神的・肉体的・経済的な負担が大きいかもしれません。それでも他にアミューズメント施設が無い時代は、みんなでお蔭参りに行ってうぇいうぇいするのが人生の一大イベントだったのでしょう。
そんなお伊勢様への珍道中を綴った『東海道中膝栗毛』、令和の教科書に掲載されるくらい作者とともに後世の名を残しているところからも大変なベストセラー本だったと推測されます。
なにせ、〝ギャグ本〟〝観光ガイドブック〟〝B L本〟の要素を兼ね備えていたのですから、当時としては画期的な本であったのは間違いないでしょう。
【兵庫船】と【七度狐】も〝二人の男性が旅をしている〟という設定の笑かし噺なので、聴いていると、まるで弥次さん喜多さんが旅をしているように感じるのですよね。おそらく、十返舎一九が笑話集自体か、落語演目になった【兵庫船】や【七度狐】をヒントに『東海道中膝栗毛』を書き記したのではないかと思う。十返舎一九は、非常に落語に明るい人だったそうだ。
『東海道中膝栗毛』には落語演目を彷彿とさせる描写が、やはり登場するようなので・・・もうね、このnote書いているうちにアマゾンでポチってしまいましたよ。笑
便利になった現代だけど、不便になった疫病時代なので
「そうだ旅に、出よう。」
「そうだ伊勢参りに、行こう。」
と思ったときには・・・
現地に赴くことも素敵だけれど、難しい場合には是非とも【兵庫船】【七度狐】を聴かれるか、『東海道中膝栗毛』を読まれることをお勧めしたい♪