“落語くん”とわたし。
20代前半のころ、新宿に遊びに来たときに何気なく入った末広亭がわたしと落語の初めての出会いでした。
総じてなんとなく楽しかったのですが、すべての演目が終了したときに一番記憶に残っていたのは『ロケット団』だけでした。笑
(↑ニャース率いるモンスター系の悪役組織ではありません。あしからず。)
当時のわたしには、TVなどでも馴染み深い漫才のほうが素直におもしろいと思えたのでしょう。
もちろん、今も昔も『ロケット団』の漫才はとてもおもしろいのですが、それ以上に当時のわたしは、落語が醸し出す“人生の詫び錆び”や“人間の悲哀”などには感情移入できないほど幼かったのかもしれません。
その時の寄席にどんな噺家さんが上がっていたかを思い出そうとしても、残念ながら誰の顔も名前も思い出せないのです。
わたしの“落語くん”への第一印象は、
「可もなく不可もないんだけど“イマイチ”なんだよね。」
「“落語くん”いい人なんだけど、ぱっとしないんだよね」
というところで落ち着いたのでした。
つまり、前回のnoteに記した『落語も恋も3分で決まる』という持論を持ち出せば、わたしは“落語くん”との恋の可能性をたった3分間で無いと判断し、“落語くん”のほうもまた、3分間ではわたしの気を引くことが叶わなかったのです。
まぁ、そもそも、彼に問題があったわけではなく、当時のわたしが“落語くん”の大人の魅力に気づけなかっただけなのかもしれません。
そこから10年以上の時を経て、今度は偶然にも神田の街で“落語くん”とすれ違いました。
“落語くん”との久しぶりの再開に懐かしさを覚えつつ、彼に誘われるままに連雀亭へと歩みを進めました。
「え。これがあの“落語くん”なの・・・?」
見違えるほどに魅力的な男に変貌を遂げていた“落語くん”。
わたしは、驚きを隠せませんでした。
「こんなにも、人の心にダイレクトに響いて揺さぶりをかけてくるなんて・・・!」
そこから、“落語くん”のことが気になりだしました。
そして、頭も心も彼のことで埋め尽くされてゆきました。
知れば知るほど魅力的な“落語くん”。
徐々に気になる存在から、無視できない存在になり、、、そして、今に至ります。
今でこそ、落語が大好きになりましたが、最初に落語に触れてから現在に至るまで実に10年以上の空白があることを考えると、やはり“落語における第一印象”はとても大事なのだと感じます。
もし、わたしがあのとき、連雀亭でもう一度落語に出会わなければ、今後も一生落語にハマることはなかったかもしれません。
ある説によると、“第一印象”を覆すにはお互いがじっくり話し合って2時間かかるそうです。
また、他説では、“第一印象”は半年から2年間ほど意識のなかに刻まれると言います。
わたしの場合は“第一印象”が覆る前に10年以上かかりましたが。
『最初の3分で相手の心を掴んでおくことがいかに大切か』ということが、よりよくお分かりいただけたと思います。
チャンスは1回
時間は3分
ウルトラマンだってきっと、そんな気持ちで宇宙怪人と戦っているはずなんです。←
噺家さんにとったら毎日演っている落語かもしれないけど、そのお客さんにとったら“最初で最後の落語”になるかもしれないですもんね。
だから、わたしは今日も“初回”のような新鮮な気持ちで仕事に臨んで励みます。
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