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「音楽隊」原案:焦げ付くチューバッカ
【原案】
*ゲーム実況動画でよく目にするゲームのクリアのスピードを競う競技
「RTA(リアルタイムアタック)」を元に原案を考えました、とのことで
*RPGの世界。昔はモンスターがうじゃうじゃしていたが、
ゲームの進行上、行く必要がないと判明してしまい、すっかり過疎地に。
*モンスターたちは暇を持て余し、肥満化が進む。
そこへ勇者が久しぶりにやってきた…というものでした。
「隊長、起きてください!」
草陰でうたた寝をしていれば、音楽隊の隊員に叩き起こされた。
「見てください!勇者です」
指差した先に顔を向けると、我が目を疑った。紛れもなく、「わがBGM音楽隊Y-1789部隊」の地区に、勇者が向かってきているのだ。
「一体なぜ?この地区は攻略の必要がないことが判明して以来、誰も立ち寄らなくなったのではなかったか」
「わかりません!ただ勇者の格好を見る限り無課金。何も知らずに迷い込んでしまった可能性があります」
まずい。管轄区域に冒険者が足を踏み入れたにもかかわらず、BGMが鳴らなかったら音楽隊全員のクビが飛ぶ。
「全員、直ちに配置につけ!『フィールド音楽1』の演奏開始!」
そうは言ったものの、何年も放置した楽器の状態はひどく、俺の指揮棒だって、ずいぶん前、串の代わりにして燃やしてしまった。そんな状態で始まった演奏であるからに、全てを馬鹿にしたかのような音が鳴り響く。
幸いにして勇者は気づいていない。ただ腹立たしいのがこの地に居着くゴブリンどもである。すっかり醜い脂肪の塊になっていた奴らであるが、我々の失態に気づくと、こちらを向いてニヤニヤ笑いやがる。
「あの腐れゴブリンども」
「まあ、ここは我慢だ。ほら、勇者がゴブリンに気づいた。『戦闘1』の演奏準備だ!」
バトルシーンは技の見せどころである。音楽隊として名誉を挽回しなくては。
「隊長!妙です!勇者が剣を抜きません!」
「どういうことだ?」
「さあ!何やらまごついています」
なるほど。戦い方すらわかっていない素人だというのか。これはBGMも「戦闘」ではなく「全滅」の演奏準備に切り替えた方がいいかもしれない。
「隊長!大変です!勇者がゴブリンを手懐けています!想定外の事態です!曲を変えるべきでしょうか?」
なんてことだ。勇者はゴブリンにエサを与え、仲間にしている…我々がぼうっとしている間に、大型アップデートが行われていたのだ。当然、この場面で演奏すべきBGMの情報など我々の手元にない。
「隊長!ご判断を!」
しくじった。情報のアップデートを怠った罪は重い。万事休す。全員、クビだ。
「…隊長?」
「『全滅』だ。『全滅』を演奏しろ」
やがて、今のフィールドに相応しくない、物悲しい旋律が響く。それは我々が唯一、勇者のためでなく、自分たちに向けて奏でた曲となった。
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