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先生、切った骨頭くれへんやろか。

手術前の最終診察である。
私は執刀担当医師に次のようなことを話した。

「せんせ、あんな、骨頭あるやろ、俺の骨頭。もう使い物にならへんのやろ。やったら、どうやろか、俺に切り取った骨頭、くれへんやろか。いやちゃうねん、何もけったいなことに使おう思てんのとちゃうよ、いうとくけど。みくびられたら困るわ。そうやなくて、まずな、骨頭をな、こうラスカルみたく肩に乗せてな、思い出の場所めぐって、お礼を言いたいねん。お前がいなかったらこの段差もあの段差も越えられなかった、お前がいなかったら、このカラオケ館の男子トイレは階下だった場合、を越えらへんかったなあ、いうてしみじみ、段差ばっかりやんかって苦笑したいねん。わかるやろ。いや、確かにな、確かにこれは俺の自己満足やもしらんよ?でも理由はこれだけちゃうねん。俺、息子おるやろ?知らん?おんねん。患者の家族構成くらい覚えとかんかい。まだちっさい息子がおんねんて。その息子とな、将来、切り取った俺の骨頭で、その、なんちゅうたらええんかな、早い話が、投げっこしたいねん。キャッチボールやな、言うなれば。昔、お前をようさん抱っこしたりおんぶしたりしてきた骨頭を泥に塗れて投げ合いたいんや、河川敷で。ほんでちびがよう言いよんねん。あかんわ、お父ちゃんの骨頭、軽すぎて麩菓子みたいや、ほんだら俺がアホいうたりいな、あんな、お父ちゃんの骨頭、壊死してん。だから、軽なってんの。みなまでいわすなてほんま、みたいか感じやねんけど?どやろか?」

医師は尋ねた。
「出身は関西でしたか?」
いいえ。
「骨頭は、あげられないんです。」
そうですか。

医療廃棄物として捨てねばならないらしい。
俺の骨頭、壊死した上に、捨てられてまうんやと。ほんま、俺の骨頭らしい最期やで。 

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洛田二十日(らくだはつか)
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