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国に骨をおごってもらおう。

名前が呼ばれ、診察室に入る。今日は具体的な手術方法などを決める算段である。若い先生が担当である。俺の大腿骨のMRIを何度も行ったり来たりし、ちょうど良いところで指をさす。

「MRIを見たらですね、痛みが出てない左の大腿骨の骨頭、見えますかね。こっちも、壊死してしまってるんですね」
「……」

壊死し過ぎて後光が差している。左。


「壊死と痛みにはタイムラグがあるので、分かりにくいんですよね。それでですね、こっからはご相談なのですが、うちの病院で治験をやっていまして。骨頭壊死の、まさにこのケースに適用される手術があるのですが、いかがです?)
「……」
「アメリカでは当たり前に行われてる手術法なのですが、自家濃縮骨髄液移植をするんです」
「……」
「つまり、骨髄液を遠心分離機で濃縮圧潰範囲に注入して非圧潰部の細胞に働きかけ壊死進行を抑制するんです」
「……」
「つまり、自分の骨髄液で、死んでない細胞をなんとか元気にしようってやつです。右の人工股関節は費用がかかりますが、左は治験なので費用がかかりません。」
「……」
「つまり!ガーっと細胞を取ってブワーって壊死したとこに振りかけるんですよ!無料で!」

俺はずっと無言である。何せ最初の「実は右だけでなく、左も壊死していた」という事実に言葉を失っていたのだ。だが、先生はそれを治療法を理解してない愚かな患者しぐさと捉えたらしく、どんどん治療法の説明がアホ向けになっていき、最終的に千原ジュニアになってしまった。

俺の頭は真っ白でほとんど断片的な情報しか頭に残っていない。つまり、つまり、

「国に骨をおごってもらえる…ってこと?」

世にも気色の悪いちいかわになったところで、先生は曖昧に頷いて、その日は帰宅する。

まったく、人から奢ってもらって一番嬉しいのは寿司であるが、国から何かおごってもらえるなら、そりゃあ骨が一番である。なお、千原ジュニア氏は最近、同じ病に罹り復活したばかりなので、早々に友達になっていただきたいし、できるなら寿司も奢っていただきたい。

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洛田二十日(らくだはつか)
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