変革期を生き抜く“次世代の不動産人”とは -中編-
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2023年の不動産業界の将来とは? 現状や課題から詳しく考察【前編】
2023年の不動産業界の将来とは? 現状や課題から詳しく考察【後編】
為替はこれからどうなる?
風戸 為替はそうですね、だいたい米ドルと日本円、そして他の新興国通貨ってまあ米ドル連動になりがちなので、基本的にドル円を見ておけばいいと思うんですけど。今年はやっぱりドルの金利の上昇、天井が来てて、年の後半ぐらいにかけてGDPの予測とかそういったのも含めてちょっと下がるんじゃないかっていう中で。逆に日本は4月以降、まあいまでもそうですけど、10年国債は0.5%になっているので、去年のような円安進行みたいなものはやっぱり考えづらいとは思うんですよ。
大西 長嶋さんは、世界的に見て相対的にもうドルが安いんだっていうことで円が高くなる要素しかないっていうポジションですよね。
長嶋 藤巻(健史)さんとか、言ってますね。超円安になるそうですね。でもそれを言ったら、ドルはもっとひどいですよって話だし。
特にこのウクライナ以降ですね、ルーブル経済圏ってのはGDPの半分を占める国がもうそっち行っちゃったんですよ。ということは、もうドルの基軸通貨体制ってのは終わっちゃってて。半分以下の世界でいまやってるって話なんですね。そんなドルが強いわけがないだろうという風に俺は思ってるわけ。
ということなので、ちょっと前までドル円ルートは110円ぐらいってのが長かったですよね。で、この前一時150円とかになって、それがいま戻して130、120円台とかになっている。たぶん100円切らないぐらいの範囲であれば大勢にあまり影響ないと思いますけども、100円切ったぐらいのところからだんだんもう人のマインドみたいなところも含めていろんな影響が出てくる可能性がある。俺は100円を切るのが当たり前だと思ってるので。過去最高値っていうのは、70円だったことがあったかな、その最高記録を今回更新する可能性すら、あると思ってるんです。
大西 そういう中でお話を不動産にぎゅーっとまた戻していって、ご質問をいただいているんですが、海外の方から見た時に日本の不動産のマーケットってどう映るんだろうと。ズバリ風戸さんはどう思われますか。
風戸 いいとか悪いとかなかなか言いづらいんですけど、すごく特殊なんですよね。海外の人から見ると、日本はいまでこそコロナで不動産上がりましたけど、基本的には全然上がらない、全然上がらないけど利回りはなんとなくちょっと新興国と同じぐらいの利回りの場所もあったり、みたいな感じですごく特殊に見えている。海外の方が日本以外の国も含めて不動産を見たときに、インカムゲインだけで見てる人ってほぼゼロなんですよね。その国の成長に合わせたキャピタルゲインがどのぐらい見越せるのかっていうのを、その国の経済予測、まあGDPとか人口増加とかって全部世界銀行とかが出してるので、そういう数字を見ながらみなさん見てるんですよね。
でも日本って、明るくないけど安定してるように見えるんです。で、この円安で「ここだ!」みたいなタイミングで触手が伸びたっていうところなので。為替が良ければこのバーゲンセール絶対欲しいんだけど、でも普通の状態だったら、「なんか絶対に取れるかわかんないけど大丈夫かな」みたいな形に映ってるという感じですか。
福田 キャピタルゲインをアピールするってけっこう難しいと思うんですね。日本のいまのファンダメンタルとかを考えるとすごく厳しいから。たぶん、逆にもし海外の人に不動産を買ってもらいたいと思った時には、インカムは一定程度あると思うんですけれど、まずはなんか、心の利回りが上がるっていうか。それを買うと超楽しいとかテンション上がるみたいな。そこをアピールするほうがよっぽどありそうだなと思ってます。
大西 あと、風戸さんがおっしゃった「安定」っていうのもすごい大きいんじゃないかというふうに思っていて。これだけいろんなことがグダグダにもかかわらず、政治的にも国の状況的にも落ち着いてる国って、そうそうないですよね。
長嶋 日本がグダグダとか、岸田さんは何も決めないとかいろんなこと言ってますけど、他の国の政治はもっとひどいですよ。
大西 もっとひどい上に、暴動とかクリティカルに危ないことも起こってるじゃないですか。それがないんですよね。
長嶋 せいぜいちょっと渋谷でデモをやるくらい。他の国に行ったら洒落にならないですからね。
大西 だからそういう意味でいくと、日常的な治安のレベルだったり医療のレベルだったり、そういうものを相対的に世界の中で眺めていくと、なんかグダグダしてるけど安定してるなっていう。
あとはその、心の利回りって素敵ですね。だから、自分が物理的に何かあった時にあそこだったら行ってもいいかもしれないとか、そこに不動産があるということによって自分がちょっと安心していられるみたいな。そういう感覚を推していくっていうのがわかりますね。
ありがとうございます。こういう話をずっと続けたいんですけど、今日のメインテーマにまだ入ってないので(笑)。「変革期を生き抜く“次世代の不動産人”とは」がテーマですから。いま実際に変革期にあると思うんですけど、いまどんなその変革の波に日本が置かれていて、変革後はどうなっていくと見ているのか、長嶋さんから頭出しお願いできますか。
(ようやく)メインテーマへ……
長嶋 もう、大半の不動産業界人は必要ないんじゃないですか(笑)。テクニカルなところで言えば、もう賃貸契約は最初の入り口から契約引き渡しのところまで無人でできるようになってますよね。売買のところはまだそこまでできていない。という中で、もう人間の営業がいないほうがむしろスムーズに事が進むみたいなこともあると思うんです。囲い込みとかもしないしね。botのほうがよっぽど誠実に答えてくれる、みたいなね。
でもそういう時だからこそ、そういう状況だからこそ、この人のアドバイスを聞きたいとかこの人から買いたいというニーズがむしろ強まる。だから不動産業界のブラックジャックみたいな人が出てくると思うんですよ。ブラックジャックは医師免許を持ってないんだけど、「俺の手術は1回2,000万だ」みたいな。だから、仲介手数料も上限を取っ払っちゃって、もう俺は10%だぜとか、一律何千万だぜ、みたいな感じだけど、「どうしてもこの人の話を聞きたい」「この人を通じて買いたい」という一部の存在が持ち上がり、あとはBotに置き換わる。
大西 いきなり結論的な各論に入ってしまったんですけど、なんか、この数年で不動産業界や産業界にどんな変化が起こるのかなっていうことをまず頭出ししておきたかったんですけど、福田さんはどういう風にご覧になってますか。
福田 僕もいま、長嶋さんの話に乗っかろうかなと思っていたんですが(笑)。いまだと、大手企業さんも自分たちのプロダクトありき、サービスありきで考えるっていうのはなかなか厳しいというか。それはやっぱり消費者の思いや考えていると少しずつ乖離してるっていうのはみなさん気づかれていると思うんですよね。そんな中で新規事業を立ち上げていくという話をしながら、そのアプローチ方法がわかんない。シンプルに消費者が何を求めてるのかっていうことをうまく反映させていけばいいんでしょうけど、できない。いままでやってきてないので。どうやって消費者の声を聞いてそれをプロダクトやサービスに反映させればいいのかがわかんないなぁ、みたいな感じなんだと思いますよね。
僕ら、よく大手の企業さんからはそういうことをやりたいんだけどやり方がよくわかんない、けっこう大変そうだし面倒くさそうだからエンジョイワークスさんやってくれないかな、という感じでご相談があるんです。でも、本当に真剣に考えてやっていかないと、どんどん求められているものと乖離が広がっていくと思うので。そういうことをやっぱり真剣にやる企業、もしくは産業が残っていくんじゃないかなと思ってます。
したがって、トップダウンでサービスを作っていくことだけではなくて、きちんとマーケットの声を聞いて、ボトムアップでそういったものを作っていくことが求められるんじゃないかなと。
大西 かつ、声を聞いていく人たちがすごい多様化してますよね。だから、これを作ったらこのマスに投げかけておけば売れるという風なことはもうとっくに終わっていて。なので、いろんなニーズのある人たちから声を吸い上げていくってことになると思うんですけど、そういうことって福田さんの 会社ではどんな風にやってるんですか?
福田 長嶋さんの話にも通じるんですが、不動産っていうのは1個しかないし、同じものはないんですよね。けれど、個人の方々にとってその不動産がどう必要なのかっていうことをきちんと汲み取って伝えられるというか、わかり合えるかということがとっても大事だなと思うんですね。だからそれをきちんとナビゲートするっていうか一緒に考えられる人がたぶんブラックジャックになるんだろうなと思ってまして。
物が一緒だから誰が売っても同じってことではなくて、消費者が何を求めていて何を実現したいからその不動産を買うのかってことを一緒に考えられて分かり合える人。きっと消費者はその人から買いたいと思ってるので。不動産の仲介ひとつとってもそういう風になってくるんだろうなとは思ってますし、例えば僕らはそういうことだけじゃなくて、空き家の再生をしていく時にも、「うちは企業的にこういう再生をすればうまくいくだろう」というアプローチではなくて、「この空き家をどういうふうに再生していけばおもしろいか、楽しいか、よりいいものになるか」ということをみなさんと一緒に考えていくっていうスタイルなんですよね。なので、「なんかこういうものが欲しそうだな」ではなくて、「間違いなくみなさんが欲しいものを作る」っていうアプローチになっています。
長嶋 そういうローカルのことをちゃんとやらない不動産屋さんは必要ないよねって話になっちゃうと思うし。ほうっておいても、これからは中央集権構造が崩れるじゃないですか。
まずは、いまの国の予算、いまのように組めなくなりますので。実際の税収は、いま40〜50兆円でしょ。それを倍以上の借金して100兆円以上で組んでるわけですよね。これもできませんみたいな話になったら、戦後のドッジ・ラインみたいな感じでどうするっていう話ですよ。で、例えば衆参両院でいま議員が七百数十人いますけど、もう10分の1でいいんじゃない?って。だってガーシーなんかが議員やってるんだぜ、みたいな。
極力アタマをちっちゃくして、ローカルの基礎自治体とかせいぜい都道府県の単位で物事を決めてやっていきましょうよみたいな話が急にこう降りてきた時に、演歌歌手のように地道に地域のことをやっている不動産屋さんがいるとか政治家がいるような地域って、足腰強いと思うんですね。逆に、いつも中央ばっかり見てて「補助金もらえないかな〜」みたいな感じでやってる自治体って、急に梯子を外されちゃってどうしようみたいな感じになっちゃう。自治体がいま1740くらいありますけど、大半がたぶんそうなるんだと思いますよ。
大西 風戸さんはいかがですか。
風戸 ちょっと話が変わっちゃいますが、変革っていうところでいくと、コロナもあったんですけど、働き方は完全にシフトチェンジしたなっていう感じがしていて。
大西 不動産業界はしてないという説もありますけどね。
風戸 でもけっこうできてくるんじゃないかな。不動産業界ってこう、管理する業界だと思うんですよ。実際、僕は新卒で仲介会社に入ったんですが、外でチラシを撒きながら、自分が売ってる空き部屋で2時間ぐらい寝てたりするんです。サボってるんですよ。で、途中から管理ソフトを入れられてサボれないように管理されてきた。それが、コロナで一部リモートでやるみたいな形になっていって。そうなった時に、いまの副業の流れもそうなんですけど、もう何を副業してるかも見えないわけですよね。あのまあ管理できるかもしれないですけど、もう一個別のパソコンがあったら何でもできちゃうと思うんです。eコマースなんかね。で、そういった中で、管理がそこまでされないとなった時に今日のテーマでもあるんですけれども、不動産業界で働いている人が次に何を付加価値として自分が身に着けるべきなんだっていうことに気づき、会社に依存しない働き方・稼ぎ方を見つけていくのが今年、変革期のいまだと思うんです。
大西 ありがとうございます。いよいよ、じゃあ個々の不動産業界人がこれから何を武器にしていったらいいのか、どう生きていけばこの変革期を生き延びられるのか、あるいは先程福田さんがおっしゃったようなローカルに張り付いて多様化したニーズを吸い上げていくっていう。経営者の福田さんはいいんですけど、じゃあそういう人は育てられるのか、みたいな。そういう話に掘り下げていきたいと思います。ということで、ここからはらくだ不動産のエージェントも交えてやっていきたいと思います。
(後編へ続く)
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