変革期を生き抜く“次世代の不動産人”とは -後編-
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2023年の不動産業界の将来とは? 現状や課題から詳しく考察【前編】
2023年の不動産業界の将来とは? 現状や課題から詳しく考察【後編】
大西 ご紹介しましょう。らくだ不動産の副社長を務めております山本、そしてらくだ不動産エージェントの村田です。よろしくお願いします。
ご質問をいただいています。このような変革期に消費者の方々のニーズは変わってきて、いままでの企業モデルが崩壊するような事態になってきて、働き方も変わってきているその中で、不動産仲介としての戦い方、AIに駆逐されない生き残り方についてどう考えてますか?
これからの不動産人はAIとどのように向き合っていけばいいのか
村田 そうですよね、AIに勝つことってやっぱり無理ですよね。AIより査定を早くするって言ってもね。1秒で出します!っていうのは難しいですから。だから、AIと共存しながらAIを味方につける。
さっき長嶋さんが言ったんですけど、いろんなAIが乱立してきて、それぞれが査定についてさまざまな案を出してくるとします。で、A案、B案、C案と出てきた中で、「どれがいいですかね村田さん」ってことに絶対なると思うんです。そこでいかに勝ち取るか。
でもそれにはAIの知識も必要になってくるでしょうし、周りの知識も必要になってくるでしょうし、だから、AIを下に置くイメージですよね。
大西 みんなの関心としては、そうやってAIを使っていく、そして最後、AIに3つまで候補を絞り込んでもらった時に「この3つのうち、どれがいいんですかね」って相談される人はどんな人なのか、ということなんだと思います。
村田 それは山本さんに(笑)
山本 そうですね、AI、そもそも私は必要だと思ってます。不動産業界ってAIを入れたほうが革新的に成長できるなという感覚はもちろんあるんですけれども。「じゃあAIは未来作れるの?」となると、いまのAIが導き出す答えって、我々が作り上げてきた成約事例から出されたものなんですよね。必ず人が先に歩いて、その後をAIが歩いてるっていう事実がある以上、一般的な事務作業みたいなものをAIが代替することがあっても、日本の不動産の市場は人が作ると思うんですよね。なので、AIに支配されるのではなくAIをうまく使いこなしながら、AIじゃできないことをやる。
アパレルショップなんかで、店員さんに付きまとわれるとすごい鬱陶しいじゃないですか。そういう時ってAIのほうがいいなと思ったりすることも多いと思うんですけど、それと同じような感覚で、やっぱりなんかこの人が好きだから買うんだとか売るんだっていうような話はこの先もずっとあると思いますし。AIによって無機質なものが出れば出るだけ、逆に人は温かみが欲しくなると思うので、そういう意味では、不動産業界に携わってる方っていうのは、ソウルフルな方が今後生き残れるんじゃないかなと思います。
長嶋 いま、どこの不動産屋のチャットボットも正直しょぼいじゃん。欲しい答えが来ないこともあるし、ちょっと変化球を投げるとバグっちゃう。でもあれも時間の問題で、たくさんのデータを吸収すれば一人前感が出てきて、そのへんの人間よりもマシみたいな感じになると思うのね。あとはよくわかんないけど、あの途中ではきっとなんか「うちは三井のリハウスより査定を1%高くするアルゴリズムを入れよう」とかね。紆余曲折はある思うんですけど。
でも、賃貸だったらまだしも、売る・買うというシーンでいまの人たちは100%AIに任せられるんですかね。背中は全く押さない、押されない。そんな状況で売るとか買うとかを決断するのか問題ってありません?
山本 ありますね。先程のご質問への答えとしては、自分がAIの知識を作る人間だっていう意識を持って取り組んでる方がたぶん生き残れる方なんじゃないかなというところですよね。
「不動産×○○」を持っている人材が生き残る
大西 風戸さんいかがですか。
風戸 まず、不動産仲介っていう言葉がもうなくなっちゃってもいいのかなと思うんですよね、これを機に。AIや他に替わるサービスが出てきて仲介の人たちがいままでのものはダメっていう前提のもとで、まあAIを使いこなせるという大前提はあると思うんですけど。
その中で選ばれる人ということだと、僕は「不動産×○○」っていうのを持ってる人だと思っていて。例えば「不動産×金融知識」とか、福田さんがやっているような「不動産×再生、リノベーション」とか、私がやっている「不動産×海外」かもしれないですけど、そういったものがあることが前提になってくるんじゃないかなと思います。
もう一つは、不動産の売買だけやってた人ではなくて、不動産の管理もわかる人、賃貸もわかる人、建築もわかる人。よく「T型人材」っていままで呼ばれたんですけど、不動産のベースがあって、売買や売却だけすごい掘り下げている、まあ村田さんが昔そうだったように売却の専門家みたいになった人。でもそれだけでは、買う時とかリフォームしたい時に、また他の方に相談することになるじゃないですか。掛け合わせでもう一個何かを持っていて、いろんなこと知ってそうだから最初に相談しようと思ってもらえる人材がAIに代わって選ばれるんじゃないのかなと思ってます。
大西 AIってすごく合理的じゃないですか。AIと今後共存して、より強くなっていく人間の持ち味みたいなところが、非合理性とか非連続性とか、言語化できないとか見えないものとのつながりとか、そういう部分ではないかと思っていて。
人が人を好きと思う気持ちって、最も合理的じゃないじゃないですか。でもここがすごく大事になってくるんじゃないかと思っていて。そういう意味では、機能で切り離さないというか。「不動産の仲介を頼むから不動産会社のこの人」みたいなことではなくて、「物件の広告が出ているこの担当の人」みたいなことでもなくて。プライベートとかそういうふうなところが曖昧になってきて、「プライベートでつながっているこの人が好きだから、この人、確か不動産もできたはず」みたいな。そういうところから軸もできてくるというか、それが大きくなってくる。そういうやり方をしているのが福田さんの会社ですよね。
何かを愛する気持ちがソウルになり、
ソウルの強さが人を惹きつける
福田 完璧なフリというか(笑)。僕はそれでしかなかったって話なんですけど、もはや不動産会社なのか不動産業界なのかは関係ねえかな、っていうぐらいには思ってます。
で、さっきの掛け合わせの話は、最低限ある方がいいかなとは思ってます。技術的な話ですよね。でもやっぱり大事なのは、山本さんのおっしゃったソウルだと思います。
ソウルがあると、その人すごい好き、おもしろいと思えますよね。僕らのエリアだと、不動産知識だとかそれを取引する技術があるのは前提として、例えばめちゃめちゃサーフィンが好きとか、口を開けばもう波の話と板の話しかしてないみたいなやつのほうが、いい不動産を扱うやつになるんじゃないかなって思ってます。
長嶋 そこで温まったついでに不動産の話になる。
福田 いや、完璧そうですね。僕はバーベキューばかりやってたので。
大西 本当に福田さんは街の人たちとずっとバーベキューしてて、周囲の方に聞いても「福田はバーベキューです」みたいな。
福田 長嶋さん、大西さんのお二人も、湘南に来ていただきましたけど、やったのはバーベキューだけでしたもんね。
大西 私は実際いくつか仕事ご一緒させていただいてるんですけど、バーベキューの記憶しかない(笑)。でもそこから、不動産をお願いしますとか、家を建てるんでお願いします、みたいな。そういう感じですよね。
福田 結局、何が好きかが明確であることは非常に重要だなと思ってます。例えば、我々のエリアであれば「湘南に引っ越したいんです」と聞かれ、「いいですね、なんでですか?」と言うと、お客さんも「なんとなく」とか「サザンが好きだし」とか「海が近いから」とか、いろいろあるんです。でも、「なんでそうしたいのか」を深掘りしていくと、そこは言語化が難しい。それを僕たちは一緒に考えるんですよ。「なんで湘南に住みたいのか」「何が好きなのか」という深掘りをずっと続けていくと、物件と出会う頃には「自分はこういうことが好きで、こういうふうに生きていきたい」って、もう話せるようになってます。我々のお客さんはね。
そうするとその方はもう、そこまで言語化もできてるし、自分のこともわかってるし、地域の良さもわかってるので、絶対人に伝えたくなるんです。なので、自分のおうちに友人を呼んで、自分はこういうことが好きでこういう生き方をしたいからここに住んでるんだってことをその友人に言うんです。そうするとそこにはソウルがあるので、そこに来た友人は「めっちゃいい! 自分も引っ越したい!」ってなるわけ。そうすると、「じゃあ一緒に物件見に行く?」みたいな話になったりするんですよ。そうなると、その人は不動産屋じゃないですが、「不動産を語る人」になってきて。で、いい物件を見つけて、でも調査したり契約したりはできないですよね、宅建の資格もないし。「そこだけエンジョイワークスさんよろしく」みたいな。要は、お客さんと物件がマッチングしてあるんであとはよろしくね、みたいな状態。こういうことがあり得るんですよ本当に。
長嶋 別に、不動産屋だけが不動産を語る必要はないってことですよね。好きな人が好きな観点で語る内容が自然とトークになっていく。
福田 おっしゃる通りで、その人が不動産屋なのか、不動産業界で働いている人なのかどうかはあんまり関係なくて。そのエリアのことがめちゃくちゃ好きでいろんなことを教えてくれる人がお客さんは欲しいんですよ。
大西 そうすると、その街に住んでいてそこの街にコミットしてるというかその街にすごく愛着を持ってる人が最強のエヴァンジェリストであって、宅建知識がある人がそうなるとは限らないということですよね。
福田 最近は、主婦の方で「もう私このエリアが好きすぎて、このエリアの良さを周りの人に伝えたい」って方がいるんですよ。周囲の不動産の相場感も入ってるんです。うちの新人の営業の子よりよっぽどよく地域のことも相場のこともわかってる。で、「街が好きすぎるから何か仕事したいです」みたいな。そしたら、「マジですか、やってください」みたいな。
宅建の資格がなくてもいいし、マッチングまでできれば、あとはこっちがやりますから、みたいな。そういう業務委託の方もいらっしゃるんです。
長嶋 でもこういう話をすると、そういうのって湘南だから、一定のブランドイメージとか価値観があらかじめある状況だからそれができんじゃないのって話になりません? それ、確かにそうなんですよ。それがあんまりないところ、例えば越谷とか、春日部とかさ。こういう街だったらどういう風にすればいいのか問題ってありますよね。
福田 湘南はわかりやすいんです。なぜなら海があってサザンがいて、カルチャーがあるわけですよね。その地域の自然とか歴史とか文化に紐づいているとわかりやすいし、いいなとは思います。けどそれがまあ仮にないとしても、まあ人がいればなんとかなる。そこのコンテクストがあってもなくても、めちゃめちゃおもしろい人がめちゃめちゃおもしろいスナックをやっているとか古着屋をやっているとか、そんなことでいいんですよ。そういう人がいればそこにやっぱり求心力が生まれるし、そこ行ってみたい、その人に会ってみたい、となる。
大西 そうなんですよね。さっきの風戸さんの話の中にあった、「不動産仲介っていう言葉がもう必要ない」っていう話に私も賛同なんですけど、今日の主題なんですけど、不動産業界人は自分たちのことを不動産仲介って呼ぶのを止めるっていうところからなんじゃないかと思ってるんですよ。
風戸 そうですね。やっぱり不動産エージェントって言葉がけっこう出てきて久しいと思うんですけど。不動産の取引の代理人であったりとか、あとは仲介っていうと……。あ、なんか思い出したんですけど、私、仲介会社に新卒で入る時に、親に「本当に不動産仲介と証券だけはやめてくれ」って言われたんですよ。昔から周旋屋(しゅうせんや:売買や交渉の際に、当事者の間に入って調整を行う人のこと)とか呼ばれててイメージが悪いと。
実際、仲介ってそういうイメージがあって。不動産の用語で言えば仲介じゃなて媒介じゃないですか。仲介業みたいになってるだけであって、本来は不動産の取引の代理人であるわけだし、あとはコンサルティングが入ってくるので不動産のエージェントだったりコンサルタントって名前の方がこの業界に入ってくれる人が多くなるんじゃないかなと思うんですよね。
大西 先程のその福田さんのお話を聞いていると、プロフェッショナルとして宅建免許を持って、知識の研鑽に努めている、他の資格もたくさん持っている、みたいなことも大事なんですけど、たぶんそれ以上に大事なのは、人としてどうかっていうところなんだと思うんですよね。
そして、人としてどうかっていうことも2つあるんじゃないかなと話を聞きながら思っていたんです。
一つが、福田さんもずっと言っていた、エクストリーマーであるというか何かを強烈に愛しているっていうエッジが立っている点や、その人としてのチャーミングな魅力みたいなところと、あとは倫理観ですかね。自分自身が人としてどういう哲学や美学を持っていて、自分の仕事の行方がどういう社会を作っていくというふうに考えているのかとか、どんな未来を希望してるのかみたいな。その哲学とエクストリームな愛が相まって、人を伝播していく。「私もここに住んでこういう風な暮らしをしてみたい」「私もここに住んでこのおもしろい人の仲間になりたい」みたいな。そういう熱を順次生んでいくのかなって思いながら話を聞いてました。
長嶋 人としてちょっと人間性に問題のある俺が言うのもなんなんですけど(笑)、やっぱり、幅広い知識と見識があるには越したことがなくて。例えば哲学とかあるいは歴史観を伴った宗教観みたいなこととか、いま学問が細分化されているじゃないですか。でもそういう話を一通りみんな知っておいたほうががよくて。その上で幅広に物事を見渡せるっていう状況に、まだたぶん間に合うと思うので、この1、2年ぐらいである程度やっといたほうがいいと思いますね。
冒頭で言ったように、いろんなものの価値観が、いざ梯子を外された時に「あれ〜!」みたいな、トムとジェリーのマンガみたいにさ、気づいたら落ちている、みたいな。ああいう感じにならないようにしないといけないよね、ってことです。
大西 どうもありがとうございました。
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