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令和7年度 九州大学理学部数学科3年次編入試験合格体験記
こんばんは。
九州大学の編入試験の結果発表があり、合格したので合格体験記でも書こうと思う。
この体験記が来年以降の受験者の助けになればうれしく思う。
自己紹介
私は国公立大学の理学部化学科に通っており、数学の授業が楽しすぎたので数学科になることにした。高専生で受けに来ている人とはかなり違った経緯で受験に臨んだと思う。自分の大学の転科試験は範囲すら公表されないお粗末さだったので、編入試験も同時に受けることにした。
試験までの勉強
私は自分の大学でも数学科と化学科と教職の単位を同時にとっており、またバイトや人間関係の忙しさもあって試験の対策をほぼできないまま夏休みを迎えた。おそらくこれはありあえない水準であり、高専等の人らは半年から1年前までに試験対策を始めるのが標準的だと思う。
ただ私は自分の大学の授業で解析学や線形代数、また位相の初歩的な内容は一通り数学科と一緒に履修してたため、筆記試験は難なく解くことができた。数学科の学部2年時点での平均的な理解度があれば、テクニック的な部分以外では筆記は困らないと思う。
夏休みに入ってから初めの1週間で微積分の復習をし、残りの2週間で過去問の演習をした。過去問の演習は九州大学の難しそうなものを中心に、この方の解説動画にお世話になった。
具体的な勉強としては、以下のものを使った。
線形代数:
・理工系新課程 線形代数 基礎から応用まで 培風館
1年生の初めに買わされた。読みやすく、補足も多くていい教科書だったように思う。なんだかんだ言って一般のベクトル空間にもかなり触れている。正直2年のはじめまでこれを読んで勉強していた。
・線形代数 長谷川浩二 日本評論社
2年の数学科の専門講義をこの教科書を書いた長谷川先生本人が受け持ってくださっていたが、最後の方は飛ばし読みした。もっとちゃんと読めばよかったと後悔している。網羅性が高く、これを読んでおけば編入試験において向かうところ敵なしだと思う。実際、今年度の九大で出たアフィン変換についても触れている。
・演習の授業
このおかげでほとんど編入試験に対して特別な対策をしていない。数学科における答案の書き方も学ばせてもらった。
解析学:
・解析学の授業
関数列、収束の定義、実数の性質については1年の数学科の講義でみっちりと入れられていたので、安心だった。逆に微積分や収束性の具体的な計算はあまりできておらず、夏休みに慌てることになった。そして完成せずに本番を迎えた。反省している。
・微積分の基礎 浦川薫 朝倉書店
正直夏休みまで全然勉強しておらず、慌ててこれを購入した。実数のところはかなり緩く書かれている印象だった。1週間で死ぬ気で全部読んだ。読みやすかったし全体の復習に最適だった。
位相数学:
・位相の授業・演習
・松坂位相
これで一般の数学科2年前期並みに理解した
試験当日の流れ
9:20 試験室集合
受験者は30人程度おり、うち5人ほどが来ていなかった。
7割がたの人はスーツで来ていた。私は私服だったけど、正直どっちでもいいと思う。飲み物は出してはいけなかった。
9:30~12:00 筆記試験
九大の編入験は2時間半で大門が4つ。線形代数2題に解析学2題で、過去問は理学部HPで公開されている。
問1、問2はまあ解けたのだが、問3問4は難しかったので部分点を狙いに行った。問3は(2)は存在性だけ書き、随分時間を使ったものの解けなかった一意性は途中まで書いて放棄した。問4は(3)までの計算をして、(4)はすぐに思いつかなかったのでほとんど解かずに見直しに走った。このおかげで見直しに10分ほど使え、問1を自信をもって提出できた。問2はチェーンルールを使って書いたが、これで十分なのかあまり自信がなかった。
この年の問題は難化していたことを後でTwitterで知ったが、演習で難しそうなものを中心に解いていたおかげで特に難化したとは感じずに、落ち着いて解答できたと思う。
12:00~15:00 昼休憩
いま考えるとかなり良く解答できていたと思うが、解いた後は筆記で落ちたと思いこみ、休み時間は小説を読んだりパソコンゲームをしたりした。久しぶりにパソコンゲームができてめちゃくちゃうれしかった。筆記試験の結果だけ見ていくかと15時までだらだら待機した。
15:00~ 1次試験結果発表・面接待機
筆記試験が予想外に通っていたので、ここから面接まで解きなおしをした。結局問3(2)と問4(4)は解けなかったので、飽きて位相の勉強をした。15人ほど受験者がいるにも関わらず1人1人呼んでいたので、めちゃくちゃ時間がかかった。後ろから3人目だったので疲れた。
筆記試験の時は7割がたスーツだったのに、ここに残っている人間は半分以上私服だったのが数学科らしくて面白かった。
教科書とお菓子を持って行った方がいいと思う。
面接
3人の試験管の先生に試験の感想、志望理由、今までにどのような数学をやってきたか、を主に質問された。
試験の感想は、「問2は証明が十分か自信がなく、問3は一意性が解けず、問4は(4)の数列に関して思いつかなかったので全体としてあまり自信がなく、1次試験を通ったのが意外だった」と緊張していたのもあり思ったままに言ってしまった。
志望理由はあらかじめ考えていた内容をしゃべった。とにかく「なぜこのまま化学科にいるのではなく数学科に移る必要があるのか」の主張を厚くしようと思い、「数学科でのリアルタイムな学びに教科書を読むだけでは得られない魅力を強く感じた。化学科で独学で数学を学ぶのではなく、数学科で対話をしながら学びたいと思っている。」「幾何や代数にまだあまり入れていないと思うので、このまま数学科で学びたい」ということを伝えた。なぜ九州大学にしたのかを聞かれたが、正直「福岡に住んでみたい」という理由しかなかったので、「土地柄が好きで、学生も優秀な人が多いと聞いていたため」という限りなく薄い理由を答えてしまった。答えた後、落ちたかなとまた思った。
今までの数学の勉強については特にいうことがなく、「線形代数と解析学を数学科の授業で学んだ。複素関数も全学でやって、英語の人の教科書を読んだ。今は松坂位相を読んでいる途中で、さらに多様体に興味があるのでこの後は多様体の基礎を読みたいと思っている。」という内容を答えた。今後の展望を滑り込ませたのはちょっとずるかったと思うが、2年前期でいえるほど勉強してるやつなんて相当いないはずなのでセーフだと思って言った。
10分ほどで面接は終了した。ほかの人に比べて長いとも短いとも感じず、手ごたえはあまりなかったので落ちたと思った。
感想
合格発表はインドの小さいレストランで見た。嬉しすぎて叫んだ後泣いてしまい、インド人に怪訝な表情を向けられた。
あんな面接で受かったのは、在学しているほうの数学科で証明の書き方をみっちり演習させてもらっていたのと、多様体の基礎を読むとかいうまだやってもいないことを面接中に語ったのが良かったのだなと思った。
筆記で問3(1)でとりあえず存在性だけ示し、問4(4)を即切りしたのはナイスプレーだったと思う。これは数学科で受けた期末試験の経験が生きた。
ちゃんと具体的なの数列の収束判定や具体的な関数の微積分をもっと練習しておけばよかったことは、後悔している。受かったからいいものの、実は試験1週間前はやる気が全く出ず、ほとんどだらけていたのも良くなかった。もし落ちていたら言葉にできないほど後悔していたと思う。
上の画像の解析入門は辞書としてしか今のところ使ってない。佐武先生の線形代数は試験の後にちょっと読んだが、転科後の授業についていくのに精一杯で夏休み後は読めてない。合格後の忙しさを考えると、線形代数の後半を夏までにもっと完成させておけばよかった。
北海度大学の不合格体験記も書いたので、是非読んでもらえると嬉しい。
本命だった転学科試験の方も無事合格し、その体験記とおまけで一連の試験についての振り返りも書いた。
聞きたいことがあればコメントしてもらえればおそらく返信できるので、ぜひしてください。
ここまで読んでくださって、ありがとうございました!