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財津和夫(クリスマスの約束2003)の「青春の影」#69 雨の音と彼女とクラプトン

「歌ってみた」のドラム版「叩いてみた」新シーズンです。
曲目の一覧はこちらにあります。
🔷EAD10を使って叩いてみた演奏曲
ヤマハのEAD10でドラムを録音し、AIで音源のドラムを抜いて、録音した自分のドラムと差し替え。好きなアーティストや想い出の曲を叩いて疑似セッションを楽しんでいます。

夜になって降り出した強い雨の粒が窓を叩いている。
僕は部屋でひとり、クラプトンを聞いていた。
カチャという音がして、ドアが開く。
Mだった…

M とは学生時代につきあいはじめた。彼女は卒業し、社会人に。
僕は弁当配達をしながら音楽活動をしていた。
当時はそんな言葉はなかったがプータロー?
バイトしてるとはいえ学生の延長のような、どこか遊んでるようなくだけた雰囲気を僕はもっていたと思う。
対して、Mは社会人野球で全国大会に出るような立派な会社で働いている。会社に行けば、真面目に働く僕と同世代のちゃんとした?男性がたくさんいる。僕と会っても価値観がずれているんだろう、だんだん笑う事が少なくなっていった。

「rakuda君は実家に帰っちゃうんだよね?広島にずっといるってことはないんだよね?」
「うん、帰るよ。こっちにずっとはいられない」
「いつ帰るつもり?」
「決めてないけど…」
「rakuda君の為にも早く帰った方がいいと思う。早く帰ってよ!」
まるで、僕を突き放すような言葉だった。
いつもこんな話になって、彼女は泣いていた。


今日は会う約束もしていない。
「どうしたの?」と言おうとした僕に彼女は抱きついてきた。
顔は冷たく、わずかだが酒の匂いがした。

「呑んできたの?」

彼女は何も言わず、僕の胸に顔を埋めている。
泣いているのか?とも思ったがそうではなさそうだった。
僕も背中に手を廻して、しばらくじっとしていた。
やっと僕から身体を離した彼女は微笑みながら
「rakuda君、今度一緒に旅行にいこっ!」
と言った。

彼女の言葉は、まるで、僕との別れを告げる言葉のように、僕の耳に響いた。

<了>