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企画・猫の詩を読ませてくださいに参加します

Mei&Meさんの企画「猫の詩を読ませてください」に参加します。

詩は10代のころは読んだことがありますが、それからはさっぱりです。
ちゃんと推敲していませんが、すみません。
実話を元にしています。うちの実家のネコの話です。ヘッダー画像はそのネコです。オリオンビールのお歳暮がチラッと写っています。
詩のタイトルはそのまんまですが「僕とお母さんとお父さん」です。
---🐱


僕とお母さんとお父さん



僕がはじめに気づいたとき
たくさんの兄弟にかこまれ
みんなでちびっちゃい威勢で
みゃあみゃあ鳴いていた

そしてすこし大きくなると
独立心たくましく兄弟たちは
次々に旅立っていったのだが
僕はぼうっとしていた
僕はお母さんのそばにいてぼうっとしていた

それでもノラのお母さんは
僕を食べさせるのに苦労していたので
僕は人にもらわれた
お母さんは最後に僕を見て 微笑んだ

新しい人のお母さんとお父さん
僕はここになじむべく
いい子にしようとしてるつもりだったけど
僕の動作にお母さんとお父さんは
いちいち楽しそうに笑った
だって珍しいものばかりだもの
一日が100時間あっても足りませんよっと
僕はうちじゅうどんどん体験していったのだ

お母さんにだっこされるのが大好きで
お父さんのお腹で丸くなるのが好きだった
お母さんはあったかくて
お父さんのお腹は丸かった


何年かした僕はこの家の立派な息子なのだ
お母さんは相変わらず僕をかわいがり
お父さんは僕の写真をたくさん撮った
大きく引き伸ばしたり
何シーンか集めてコラージュ
僕の写真が飾られた

にゃあにゃあ
なあなあ
お母さんとお父さんが微笑みながら
僕をかこんでテレビを見る
お母さんはテレビで
しょわしょわしょうわ〜
という番組が好きだった
しょわしょわしょうわ〜
とよく口ずさんでいた



ずっと僕は僕の人生を楽しんだ
ずっと僕は僕の人生を気に入った



あるときお母さんとお父さんが出かけて
なかなか帰ってこなかった
やっと帰ってきたので
僕はふくれて文句を言おうと待っていたのだが
お母さんとお父さんは悲しそうにしていて
僕はだまった

お母さんはへんだった
相変わらず僕をかわいがって
だっこしてくれるけど
お母さんの手がどんどん細くなった
でもきっとこれは年を取ったからにちがいない
お父さんのお腹も前より丸くなくて
しゅっとしてしまったからだ

お母さんがときどき家からいなくなった
長いあいだいなくなった
僕はどきどきした
でも待ってるから
待ってたらきっと帰ってくるから
僕はもう大きいからがまんできるんだ


ある日お母さんがおかしい
またどこか行ってしまうようだ
お父さんがばたばたしていた

お母さんは最後に僕を見て 微笑んだ





それからお母さんは帰ってこない
車に乗ってどこかに行ってから
帰ってこない
でも僕はしんぼう強いから
待ってるんだ

黒い服の人たちが
ある日突然うちに来た
知らない人はごめんだよ
僕は家の2階に飛んでった


新しい大きな家具が来た
ろうそくがあって
お母さんの写真がかざってて
お父さんはそこに毎日
コーヒーを置いたり
食べ物を置いたりした
その家具の前の座布団があったかい
僕のためにおまけで買ってきてくれたのかな
そうだここに座って
お母さんが帰ってくるのを待とう


2022年のお正月に
お父さんと2人の子供たちが家に集まった
お父さんは
お寿司を買って
お雑煮と豚の角煮を作って待っていた
なにインターネットを見れば作れるもんだと
子供たちに話していた
お正月なのにお母さんは帰ってこないなんて
お母さんもなかなか失礼だ
僕は座布団に座って
ムッツリとみんなに背を向けた


お母さん
きっと帰ってくるよね
僕は待ってるから
寒い日は座布団で
暑い日はベランダで
お父さんが車に乗せてきてくれるから
それとも歩いて帰ってくるかな
お母さんが帰って来たら
僕はおかえりって言う
僕は待ってるからね
怒ってないからね
マグロのおやつをくれたら
僕はそれで帳消しにするんだ
僕はできたネコだ
自分で言うのもなんだけど
僕はたいしたネコなんだ
ああそろそろ今朝もお父さんを起こしに行って
朝ごはんをもらうんだ
もう起きるね
それじゃあね

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