第5回:デマレージ回収!支払能力が低い荷主への対処②(船社・FWD用)
こんにちは!ラクです。
今回も、前回に引き続きデマレージ(保管超過料金)の問題についてです。
今回は…
もっとも回収が難しい「損失覚悟ゾーン」…!
支払能力も低いし、支払意思すらない…
ケースとしては、レアな部類に入りますね。
\もうどうしたらいいか、分からん!/
そんな中での対応を考えていきます。
はじめに…
今回のブログの続きです。
前回のブログをご覧になっていない方は、まず以下からご覧ください。
そして今回もまた、以下の本の内容を参照します。
「特殊案件」である
前回ご紹介した「リスク予測ゾーン」では、まだ「支払意思」が確認できる部類でした🌟
それはまぁ当然といえば当然で、ビジネスですからね…
船社やフォワーダーにモノ運んでもらっておいて、
コンテナをなかなかターミナルから引き取らず、
挙句の果てに「もう引き取りません」「デマ払えません」とか…
本当に意味不明ですからね💥
著書では、このゾーンに入る顧客を「特殊案件である」としています。(p81)
そりゃそうですよね💦
ここまでくると、前回の「リスク予測ゾーン」でも検討したように、以下については必ずアクションを取りましょうね。
「リスク予測ゾーン」との大きな違い
また…
「リスク予測ゾーン」大きく異なることは、「支払意思がないこと」。
これはつまりは、「コンテナをターミナルから引き取る意思すらない」ということが言えます😨
逸失利益とか、関係者へのマージンとか、そんなこと言ってられない…
実質的なコストだけが、どんどん膨らんでいく一方です。
これは一大事です❗❗❗❗
あらゆる手段を講じる必要があるため、スピードが命!
「えー…めんどくさいなぁ」と思った方もいらっしゃるかと思います。
そこで、今回のブログでは、出来る限り「取り得る手段」についてご紹介していきます。
実入りコンテナを別場所に移動する
もはや、「引き取る意思がない」ということが分かっている場合、コンテナを長々と荷卸しされたターミナルに置いておく必要がありません。
ここは税関との相談が必要になる可能性もありそうですが…
大丈夫そうであれば、もっと保管費用の安い場所へ移すことも、検討したほうが良いと思います。
積み地への協力を仰ぐ
輸入側としては…
\そもそもこんな商売を取ってきた、輸出側が悪い!!/
…ということは、やっぱりあるわけです😅
まぁ、「悪い」というわけではないのですが…
社内における積み地(輸出)側の担当部署が、揚げ地(輸入)側の担当部署にすべてを丸投げするのは、良くないですね。
輸入側の担当部署は困っているので…💦
実際、会社にも損失を出しかねない状況である以上、積み地側の協力は必須と言えます🙆♂️
積み地側の協力とは、例えば以下のことが言えます🌈
a) Ship back を受け入れてもらう
この選択肢は、モノによっては可能だったりします。
転売がたやすい商品だったり、商品価値が高いものだったりすると、Shipper側としても返品を受け入れてくれるかもしれません。
また、Shipper側の「ブランド」が関わってくるものであれば、勝手に輸入地で変に転売されるよりは、まず元の輸出地側に戻したいという意図が働くかもしれません。
逆に問題になるのは、食料関係などです。
大豆や麦、飲料などといったものであれば、当然時間が経てば腐ります。
(実際、たまにあるんですよね…)
そういったものをShip backされても、積み地に戻ってきたころにはさらに劣化している可能性もあり、返品は現実的ではありません。
その場合は、輸入地側での廃棄を検討する必要がありそうです。
b) Shipper側に全部 or 部分的に負担してもらう
これはShipperさえ合意すれば、さほど難しくは無いでしょう。
ただまぁ…
多くの場合、そんなにカンタンにはいかないんですけどね(笑)
まずは「Consigneeが貨物を引き取る日」を予めShipper、Consigneeと共に協議して決定し、その日の前提でDemurrageを算出します。
その金額を、全部あるいは部分的にShipperに負担してもらうという方法です。
ONEの約款には以下の様にあります📚
ここで言う「Merchant」の定義は、1条にて定義されています。
よって、約款に従えば、Consigneeによる未払い金があれば、当然のごとくShipperに対して請求ができるというわけですね。
c) Shipperの海上運賃に、当面上乗せしてDemurrage回収する
ここは営業判断になります💰
しかし、運賃のファイリングが必要なFMC関係の航路だった、既に数年契約で結ばれている運賃契約などであれば、少し厳しいでしょう。
(そもそもそんなガチガチの契約を結んでいる顧客が、こんなDemurrageすら払えないConsigneeと商売関係にあること自体、稀なんですけどね)
ただ、もしこれが可能なのであれば、これも選択肢の一つです👍
d) 同じShipperからのBooking停止および法的措置
これももちろん手段のひとつでがありますが…
実際のところ「ConsigneeがDemurrageを支払わないから、Shipperに対して法的措置を取る」というのは、あまり見たことがありません。
それだと、「Shipper側の財務状況も悪いから、法的措置を取らざるを得ない状況である」という、かなり厳しい状況ということになります。
ましてや、Shipper側の国の法律は、こちらでは分からないことが多いです。
必ず輸出側の担当者と連携し、場合によっては加盟するP&I Clubに相談して、信頼できる弁護士を紹介してもらってもいいかも知れません。
(P&I Clubの内容については、また別の機会に…)
船社やフォワーダーが廃棄することは可能か?
これは…難しいところです。
結論から言うと、「出来なくはない」です。
それぞれの船社やフォワーダーで加入しているP&I Clubと協議のうえ、ひな形のようなものが用意されているのでは無いでしょうか❓
俗にいうところの「Abandonment Letter」ですね🌟
その物品に対して、Consigneeが持っている権利を放棄してもらうわけです。
少なくとも、以下のようなことを「B/L所有者」に保証してもらう必要があります。✍️📄
i. 貨物の引渡しを受ける唯一の当事者であること。
ii. B/L番号[〇〇〇〇〇〇](「B/L」)の正当な所持者であること。
iii. B/Lに基づくすべての運送人の権利は留保されること。
ⅳ. B/Lの約款が、契約の内容を構成していること。
ⅴ. 貨物の処分を目的としてB/Lを運送人に返却すること。
ⅵ. 貨物放棄において提供する保証は、期間および金額に関して無制限。
ⅶ. 準拠法は、◇◇法に基づくこと
ⅷ. 裁判管轄は、▽▽▽とすること。
場合によっては、「船社あるいはフォワーダーに対する損害賠償請求権を、一切放棄する」…みたいな文言を、加えているものもあるかも知れませんね。
ただ…結局のところ、権利放棄されたところで、船社やフォワーダーが転売することもなかなかモノによっては難しいんですよね…
Abandonment letterによる手段を使用する場合、P&I Clubに事前に相談し、クラブ経由でサーベイヤーを通じて転売の可能性などを探ってもらいましょう。
転売が難しければ「産業廃棄」する必要がありますが、これもなかなか高いです。(100万以上は覚悟した方がいいでしょう…)
ただ、長々とコンテナを放置しておいて、だらだらとコストを削られてしまうようであれば、損切りと捉えてそういった手段を取ることは、検討しておくことは大事です。
少なくとも、決裁権限のあるマネージャーなどには、なるべく早めに相談を持ち掛け、状況について理解してもらうように努めておきましょう。
終わりに…
さて!全5回にわたってお話ししてきた「デマレージを回収せよ!」ですが、いかがでしたでしょうか?
まだ書き足りないことがあるかも知れないので、加筆修正をしていくかも知れません💦
特にこの「第五回」の対象となっていた「引き取る意思もなく、支払能力もない」顧客は、タチが悪いです…
よって、本当に本当に大切なのは、社内関係者にそこを理解してもらうことです🍀
もし今回のブログが、そのお役に少しでも立てたなら、何よりです。
自分でも、「かなりマニアックなことを書いたなぁ」と思っているのですが、船社やフォワーダーとして対応する可能性があるものの、マニュアルとして確立されていないのでは(?)と思い、Noteにすることにしました。
お気づきの点や、他にお困りのことなどあれば、また何か書けたらなぁと思いますので、その際はぜひご連絡下さい!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?