第4回:デマレージ回収:支払能力が低い荷主への対処(船社・FWD用)
こんにちは!ラクです。
今回も、前回に引き続きデマレージ(保管超過料金)の問題についてです。
今回は…
\デマレージ回収どころか…
コンテナをターミナルから引き取ってもらうことすら、難しくない?💦/
そんな中での対応を考えていきます。
今回は、「支払能力の低い顧客への対応」についてお話します🍀
はじめに…
今回のブログの続きです。
前回のブログをご覧になっていない方は、まず以下からご覧ください。
前回のブログでご紹介した、以下の図を使ってご説明します。
今回もまた、以下の本の内容を参照します。
「支払意思」について
著書ではまず、「支払意思があるかどうか」が回収の可能性が高まるということが書かれています(p72)
これはとても大切なことです🎈
特に海運業界の話で、デマレージが嵩んでいる状態だと、そもそも「コンテナをターミナルから引き取る意思があるのか」…という、その意思の確認がめちゃくちゃ大事なわけです🌈
Consignee側で具体的にどういった事情があるのか、キチンと把握する必要があります📝
「コンテナをターミナルから引き取るように促す」という行為は、船社やフォワーダーとして対応を適切に行っていたという記録を残すだけでなく…
なぜ引き取れていないかという事情を聞き出すためにも、重要です🙆♂️
リスク予測ゾーン
このゾーンに入る会社は、以下の特徴があります。
たとえば以下のような状況が考えられます。
1.資金繰りの悪化
急な支払いの発生:Consigneeが予期せぬ費用(例えば、法律改正や関税の変化、追加の運送費用)に直面し、資金繰りが一時的に悪化する場合。
資金調達の困難:銀行や金融機関からの融資が受けられない、あるいは条件が厳しくなった場合。
2.市場の変動
為替レートの変動:為替相場の急激な変動により、輸入コストが予想以上に上昇したため、Demurrageまで余裕がない。
需要の低下:市場の需要が突然減少し、商品が売れにくくなる場合。
そして…
ここからはおそらく、これまで参照してきた著書や、
普通の債権回収の本とは異なった見解になってきます。
まずは、サッサとコンテナを引き取ってもらうことが何より大事!
減額や分割払いを受け入れたりするなど、「とにかく少しでも払ってもらえる方法」を相手と自社で合意するなど、アクションを急ぎましょう🏃♂️
なぜすぐに引き取ってもらうのか?
ここは3つに分けて説明しますね。
1.実費の面
ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、
船社側で発生している「コンテナ保管のための実費」という点だけで言うと、そんな大した金額ではありません💰
ただ、「コンテナを荷主が全然CYから引き取ってくれない」ということは、
そのコンテナを次のブッキングに使えない状態が続いています💦
船社側にとっては「逸失利益」が発生してるわけです☔
そこでその逸失利益分をDemurrageに上乗せたりしています。
また「ターミナルの運営会社」と「ターミナルの管理者」など、
複数の関係者においてマージンを乗っけていたりするわけです。
もちろん、それらも大切な経費なので、
デマレージとして徴収すべき費用であることは分かります。
しかし「最も困る状況」は、実はConsigneeやShipperが「引き取る意思すら無くしてしまうこと」なんです。
そこまで行ってしまうと、法的手段を考えざるを得ません⚖️
それで全く回収できないわけでは無いのですが…
とにかく手間と時間がかかります⏰
弁護士費用なども検討する必要がありますね。
そんな事態になるよりは…サッサと引き取ってもらった方が結果オトクなんです。
2.留置権や競売
中途半端に(?)B/Lを勉強してしまうと、Lien (留置権)や、競売にかけること可能性を言及してくるマネジメントがいますが…
それらの権利行使をするのにも、適切なステップを踏む必要があります。
そしてそれは、一人でやるのには限界があります。
そもそも競売にかけたところで、すぐに現金化できるわけではありません。
結局、自分の時間や労力、あるいは弁護士などの協力を仰ぐとなると、さらに時間も費用も労力も使います。
こういったときに大切な考え方は「損切り」や、「サンクコスト」です。
「どうやったら多額のデマレージを回収できるか」ではなく、
「どうやったら自社の損失を軽減できるか」という方向へ、
考えをスピーディーにシフトさせることが肝要です。
3.Shipperに支払ってもらえないのか?
おそらく約款では、「船社(あるいはフォワーダーは、関係者に対して費用請求ができる」ようなことが書いてあるかもしれません。
特にConsigneeが払わないのであれば、Shipperや契約当事者への費用請求を検討するのは自然でしょう。
もちろんShipperが建て替え払いに合意するなら、それが一番いいです🌈
ただ、ここは経験上になりますが…
揚げ地側で生じたコストをShipperが建て替え払いなんてしてくれたこと、一度もありません。
逆にShipperにずっとこちらから伝えて「払ってください!払ってください!」なんて言っているうちに、Demurrage金額は膨らんでいきます。
現実的には、あまり良い手とは言えないのでは…というのが、個人的な感想です。
それでも、タダで引き取らせない
先ほどもお伝えしたように、「まずは取り得る手を出来るだけ使い、引き取らせること」がとても大切です。
たとえば分割払いを認める場合、以下のような合意書を取り交わすのも手でしょう。(以下はあくまでサンプルです。弁護士などに相談することをお勧めします)
1.分割払い合意書について
KNM貿易株式会社(以下「甲」という)とABC商事(以下「乙」という)は、以下の条件に基づき、分割払いに関する合意を締結します。
第1条(合意の対象)
甲は、乙に対して提供する商品の代金について、以下の条件に基づき分割払いを認めます。
第2条(支払い条件)
支払い総額:¥1,000,000(消費税込み)
支払い回数:10回
各回の支払い額:¥100,000
支払い期日:毎月末日(最終支払い日:●月×日)
第3条(延滞金)
乙が支払い期日を過ぎても支払いを行わなかった場合、以下の条件で延滞金が発生します。
延滞金利率:年利14%
延滞金の計算方法:支払い期日から実際の支払い日までの日数に基づき計算
第4条(違約金)
乙が連続して3回支払いを滞納した場合、甲は残額の一括支払いを請求できるものとします。その場合、乙は未払い分の総額に加えて、違約金として未払い分の10%を支払うものとします。
第5条(その他の条件)
本合意書に記載のない事項については、甲乙協議の上、別途定めるものとします。
本合意書は、双方の署名または捺印をもって成立します。
本合意書の内容を確認し、以下に署名または捺印することにより、甲乙は本合意書を承諾したものとします。
署名欄
甲:KNM貿易株式会社
代表取締役 ________
乙:ABC商事
代表取締役 ________
逆に言うと…
減額や免除、分割払いなどといった方法で、何とかしてコンテナをヤードから引き取らせ、かつ合意したDemurrage料金を引き取らせるのが最優先です。
相手の支払い意思をくじくようなことはNGです🙅
2.必ずOrigin側と連携する
問題が発覚した段階で、輸出地(Origin)側のマネジメントも含め、今回の問題は必ず共有しましょう。
要は、「今回、日本のConsigneeのABC商事さんが、支払能力不足のため、Demurrageを全額払うことが出来なかった」ということです。
このことにより、Origin側では以下のようなアクションを取る必要があります。
これらは「ブッキングを受ける前」に合意することが大事です❗
いったんブッキングを受けると、「前回と同条件でブッキングを受けることを同意した」と暗にみなされる可能性もあります。
そのスタンスを取られると、こちらも強く行きづらくなるかも知れません💦
次のブッキングを受ける前に、特に営業は顧客との今後の商売関係も含めて、しっかりと顧客と話をしておく必要があります。
3.B/Lの発行を取り止めることは可能か?
少し補足的な観点ですが、仮に「次のブッキング」を受けた場合、「B/LをShipperに発行することを控えることはできるのか?」という点です。
Bookingを受けた後で、
「未払いだから、B/Lを発行しない」のは、
慎重さが必要!
以下はHague-Visby RulesのArticle 3-3の内容です。
この条約内容だけを捉えるのであれば、B/Lは発行「しなければ」なりません。
(まぁ…この条約自体、コンテナの運送を前提にしていないので、時代錯誤的なところがあるんですけどね…)🚢
ただ、ONEの約款(2024年6月現在)を見ると、「Any documents」とあるのでB/Lも想定しているのかもしれません。
ただ、具体的に「B/L」という明言をしていないので、やはり注意は必要ですね。
「契約上の法的問題になりそうなこと」は、なるべく避けた方が無難です。
さてさて、また長くなってきてしまいました!
今回はこの辺で~
続きは、以下から!