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「キャー」という言葉には年齢制限があるという話

A子さんは夫であるB助さんと暮らしている。

A子さんは62歳、子育ても終了し、美容師としての仕事と趣味の卓球で毎日忙しくも楽しく過ごしている。どちらかと言えば男っぽいサバサバとした明るい性格。話題も豊富で話の展開も早い。

夫であるB助さんは、定年退職後、2匹のプードルの世話が現在の仕事、1日の大半を家で過ごしている。どちらかと言えば物静かで、おっとり系、口数も少ない。

仕事から戻ったA子さん、いつも通りリビングで2匹のプードルと共にテレビを見ている夫を確認した。「おかえり」とも言わない、いつも通りの口数の少ない夫。

そんなA子さんの前に、1匹のゴキブリが現れた。普段ならスリッパでパシッと退治してしまうのだけれど、ふと「キャー」って言ってみよう、そんな考えが浮かんでしまった。

「キャー、ゴ・・・」

「ゴキブリ」と最後まで発声する間もなく、A子さんの顔の前に差し出されたB助さんのパーの手。

「ちょっと待って。キャーって言うには年齢制限があるねん」

「はぁ?」

「僕がいなかったら、スリッパでパシッってやってたでしょ?」

見抜かれている・・・

「キャーって言う前に数秒、間があったでしょ?」

見てたんかい!

「若い頃のキャーは僕に響いたけどね」

若い頃って、何歳までなら響いてたんよ??
でも、ちょっと待って、プードルしか見てないと思ってたけど、私の事も見てたのね、私の事、よく分かっているのね。

その間にゴキブリはコソコソと姿をくらました。

こんな微笑ましい夫婦の話を聞きました。ごちそうさま。


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