かねてから妻と「犬を飼いたいね」と話している。
数年前、犬を飼うことを具体的に考えた時、近所に保健所があることを知った。
僕は妻に「犬を飼うのなら保健所に保護されている犬をもらい受けよう」と話した。
しかし、保健所に保護されている犬たちは僕たちの住むマンションのペット規約に即しておらず、話は立ち消えとなった。
昨晩、妻が新しくオープンするペットショップのチラシを見せてくれた。
多数の子犬と子猫の写真の胸元には品種と値段が掲載されていた。
愛くるしい子犬に付けられていた値段は「¥10,000~」だった。
僕は生き物に値段が付いていることを好ましく思っていない。
子どもの頃は、ザリガニ、カメ、カブトムシなどを飼育したことがある。
だけどそれらは自然環境で生息していた生き物たちだ。
命の値段など考えることはなかった。
ペットショップのホームページを見てみたら、子犬と子猫の正確な値段が掲載されていた。
値段の後ろには「(税抜)」と記載されていた。
僕はやるせない気持ちになってペットショップのホームページを閉じた。
ペットショップの子犬や子猫たちは、自分たちの命に値段が付いていることを知らず、愛くるしい表情やしぐさを振りまいている。
その姿を見ていると僕はたまらなく切なくなる。
もし、子犬をペットショップで買ったとしたら、貰い手のない子猫を引き取って飼っている友人は良くは思わないだろう。
かつては人が人に値段をつけて奴隷として売り買いをしていた。
21世紀になった今も人は利己主義によって他の生物たちの命を軽視する。
そんなことを言っていたら肉も魚も食べられなくなってしまうのだけれど、なんかしっくりこない……。