閉鎖病棟
これから載せるのは過去に新聞社に投稿し、掲載された内容です。年齢などは当時のものですのでご了承ください。
突然ですが、皆さんは"閉鎖病棟"という言葉を聞いてどのような想像または印象があるでしょうか。
その名の通り、鍵がかけられた病院の病棟という印象だったり、中には刑務所のような場所なのでは?と想像する方も少なからずいると思います。確かに、病院によって閉鎖病棟の「造り」や「雰囲気」といった部分では若干違ってきます。
これから私が語るのは、私が長らくのお付き合いさせて頂いている病院の閉鎖病棟で感じた事、得たものです。
精神科閉鎖病棟という場所への印象が、少しでも変われば幸いです。
早速ですが、私について少しお話したいと思います。
私は19歳の頃に鬱病と診断され、初めて精神科閉鎖病棟に入院しました。それから25歳(現在)になるまで自殺未遂・過量服薬・自傷行為などを繰り返したり、摂食障害という新たな病気になったりと閉鎖病棟への入退院を何度も繰り返してきました。短い時は数日間、長い時で1年10ヶ月入院したこともありました。
閉鎖病棟は名前にあるように病棟に鍵がかけられ、自由に出入りできない閉鎖された病棟です。売店へは毎日決められた時間内だけ行けて、患者さんによっては看護師さんの付き添いがないと売店に行くことが許されない方もいます。
そんな閉鎖された病棟、入院したことのない方からすると「普通に考えて頭がおかしくなっちゃうよ!」と思うことでしょう。何の治療になるの?と。
しかし、そんな閉鎖病棟にも得るものがあるのです。
それは治療法でも、新しい薬でもありません。"ひとの暖かい心"です。
私は毎年のように入退院を繰り返す中でいつも感じるのは、患者さんとの関わりから感じる人の心の暖かさです。毎日同じルーティンだとやることもなく暇なので同じ病棟に入院している患者さんとお話をする機会が多いです。最初はお互い分厚い壁を立てて会話をするのですが、気づけばその壁もいつの間にかなくなってしまいます。涙ながらに病気になるまでの辛かったお話や今の苦しい気持ちを語って下さる方や、楽しかった頃の面白い話をしてくださる方、病気が治ったらこんな事やあんな事がしたいと夢を語って下さる方…色々な患者さんと関われて私は自然と患者さん同士ではありますが元気を貰っています。
精神的な病気になられる方のお話はどの方のお話を聞いても、その方(患者さん)が優しすぎる人が多いなとわたしは感じました。いつ入院しても感じる暖かさは同じです。
それは、閉鎖された空間だから語り合えることで、お互い相手の心と自分の心と向き合える良き機会になる場所なのかもしれないな。とわたしは感じました。
閉鎖病棟とは、私個人の意見になってしまいますが、人の心のぬくもりに触れることができ、さらに自分自身の心とも向き合える暖かい治療空間だと思います。