「Hero's Future ゴウヨク」が語る 伝説の一戦について
皆さんこんにちは
日本代表です
Hero's Future ゴウヨクとして世界大会ベスト4になりました
皆様、応援していただき本当に、本当にありがとうございました。
緊張とプレッシャーの中、声援を糧にいつも通りの、そしていつも以上のパフォーマンスを発揮することができたと思っております。
帰国して数日しか経っておらず、休みたいしラーメン食べたいしアイマス最高!したいところではあるのですが…
この試合だけはいち早く解説しなくてはならない!と奮い立ち筆を取っています。
WCS2024ベストバウト、との呼び声高く僕たちHero's Futureにとっても印象深い一戦です。
あの日、あの場所、あの瞬間。
どうやって勝利を紡いだか?
「ゴウヨク」の視点で語れるのは僕を置いて他にいません。
✳︎有料記事としていますがmagu6o vs Quantal選手のカバレージは無料で読むことが可能です。
有料箇所はスパチャ感覚で設定しておりますのでHero's Futureカッコよかった!と思ってくれた皆様、ご購入いただけると幸いです。
2024年9月8日
未来を掴むために挑んだ闘いの記録
A)準決勝開始前
チーム4-0でトナメ、予選1位を確定させた状態で望んだday1最終戦
チーム「MAX"YEE"」に4-5で敗戦を期している。
2マッチ目までは4-2で圧倒していたものの、最終戦magu6oとたすくに致命的なミスが出た。
彼ら曰く、「勝ち確を捨てた」ほどのミスだったという。
普段の彼らであれば絶対に無いほどのミスを犯したのだなと、彼らの表情から察することができた。特にたすくは青ざめていた。こんな姿は見たことがない。
僕自身も手痛く敗戦。
3人とも脳味噌が溶けきっていた。
チーム4-1
それでもぶっちぎりの1位なわけだが、身の引き締まる敗戦であった。
翌日、運命のday2
決勝は特設会場でやります!と伝えられていたため準決勝は予選と同じところでやるのかな?と思ったのだが…
Hero's Futureの皆さん、準決勝はこちらで行います。
???ステージでやんの???
流石に緊張が走る。
段取りをインプットされ、機材チェックのために卓につく。少し緊張が和らいだものの「ここまできたんだ」と高揚していた。
2人もリラックスしてるとはいえない状態だったが、太鼓の演奏を聴くうちに3人とも落ち着いてきたように見えた。
緊張、高揚、責任感、集中
時間いっぱい。
普段通りとはいかないが勝負に挑むには十分な心持ちだった。
一回戦、全員後攻スタートだったが2-1で勝ち越し。
僕はティアラにGを当てるものの、パライゾス→ペルレイノ→おろかな埋葬の制限カードオンパレードに加えて哀唱コストキトカロスの5枚落としが強すぎて涙。
正直反省のしようがない試合だったし、横が拾ってくれたことを喜び切り替えて第二回戦へ挑むことになった。
B)第二セット
「ゴウヨク」の視点からお話する。
僕の対戦相手はJosh選手
彼の使用デッキは「炎王」及び「罠ビ」であることが分かっており、ユベルに「罠ビ」を当ててくることも分かっていた。
判明していたカードは「無限泡影」「天龍雪獄」「昇天の黒角笛」
「メタビ」の採用カードというよりは「ラビュリンス」の採用カード。
ラビュリンスは罠ビに見えてモンスター効果を多用するためファントムが刺さる。
もしものもしも炎王をラビュリンスに投げられないよう、チームで相談して「ユベル」をぶつける決断をくだしたのだが…
二連続全員コイン裏
キレた
内心皆キレてたがやるしかない。
横から「後攻最高!!!」と叫ぶボスの声が。
そう言われちゃやるしかないね。
無情にも先行5伏せスタート
なるべく罠を開かせるように手数を投げていったのだが相手は罠を一切開かない。
解門+ナイトメアペインでリソースを広げようとしたところで…
全く予想にないカードをぶつけられた。
モンスターの手数札に目もくれず、砂塵の大嵐から開いてきたため伏せがラビュリンス罠や被りの罠、拮抗等のブラフと予想してリトルナイトやアクセスで踏みにいこうとしたのだが…
マジかよ。
モンスター除去を永遠にガメ続けてリソースを奪う発想だったのかと驚嘆。
さらに試合が進行しラビュリンスカードがプレイされる。
このラビュリンスは日本のラビュリンス、テンプレのラビュリンスとは大きく異なる。
ラビュリンスギミックはウェルカム罠5〜6枚+白銀1枚+レディ3枚の計10枚近くのコンパクトさでまとめられており残り全てのカードが妨害罠に当てられた構築であることがこの時点で判明した。
家具が無い以上、ファントムでメタるも何もない。
罠ビ巧者の自覚はあったが罠の開き方が僕とは全く異なっており、他の罠ビ使用者と比較しても例のないものだった。
気づいた時には既に遅く、取り返しのつかないことになっていた。
ラビュリンスミラーにして拮抗、天底でカードを剥がしにいけば勝てていたかもしれないが砂塵の大嵐、天龍雪獄がおそらくフル投されている構築であり厳しい戦いが予想される。
しかも相手の前衛デッキは「炎王」。もし読みを外してしまった場合、ゲームにならない可能性が高く「ユベル」を出すより他無かったのだ。
後悔のような、諦念のような。
僕にしては珍しくメンタルを損ねていた。
お恥ずかしい話だが。
この勝負は落とす。
ただこのまま終わるわけにはいかない。
C)伝説の試合へ
僕が敗北を悟る中、横のたすくが早々に敗北してしまっていた。
ヘッドセット越しにはたすくがmagu6oにアドバイスする声が聴こえた。敗北を引きずらず、即magu6oの試合で勝ち星を取りにいく。素晴らしい判断だ。
まだ僕が試合中だったためmagu6oの様子を詳しく把握できなかったが、状況不利、は間違いないようだ。
後から情報をすり合わせると、Quantal選手がケルドウで戻したグリーフをトップでツモり逆襲を始める前後だったらしい。
「オフにして!オフ」と焦るたすくの声が聴こえていたことは覚えている。ニビルをオフって読ませないようにし、最後の手札1枚を手数札だと誤認させていた。
ようあの場で指示できたな。すげぇよ。
magu6oが受け手、Quantal選手が攻め手であること、炎王vsティアラの複雑なゲームであることを理解し、私にもまだできることがあると考えた。
急に何…?となっている皆さん。
この模式図は各チームの「着席順」である。
ニセット目は…
magu6o vs Quantal
たすく vs Emre
ゴウヨク vs Josh
が対戦を行っている。
現時点でたすく、Emreの試合は終了している。
ただゴウヨク、Joshの試合はまだ途中なのだ。
僕はJoshの「足止め」を選択した。
「足止め」とはどういうことか?
Joshを1分1秒でもゲーム画面に釘付けに、そこまでいかなくても意識を割かせることでQuantal選手への効果的なアドバイスを行わせない、ということだ。
こちらはMDの対戦表から抜粋してきた画像だ。
各対戦カードの真ん中に「リプレイ」の表示があり、これを押すとその対戦カードのリプレイを再生することができる。
本戦プレイヤーもこれと同じ画面が表示されており、所定の時間になると「デュエル」の文字が出てきてこれを押してデュエル開始。
試合が終わると対戦終了カードには「リプレイ」の文字が、そして対戦中カードには「観戦」の文字が出る。
試合が終了した各選手は…
①「観戦」を押して試合中のプレイヤーのゲームをオンタイムで確認しながらヘッドセット越しにアドバイス
②対戦卓を覗き込んで目視で盤面を見ながらヘッドセット越しにアドバイス
アドバイスを行うならこの二つの選択肢が与えられる。
ただ①には大きく三つの欠陥があって…
「残り時間」
「自チームプレイヤーの手札」
「自チームプレイヤーのexデッキ」
の3つを確認することができないのだ。
この3つが分からなければアドバイスもクソもない。
基本的にはアドバイス先の画面を「直接見て」指示を出すより他ないのだ。
さらにもう一つ。
各プレイヤーは「各セットが終わるまで」ヘッドセットを外すことはできない。
ヘッドセットのコードは、座って付けてみて初めて分かることなのだが、ギリ席から立ち上がれないくらいの長さしかない。(年度によって変わるかも?)
要は立ち上がって後ろから隣、ないし隣の隣のプレイヤーの対戦画面を見ることは不可能なのだ。
となると座りながら目線を横に投げて目視することになる。
隣の卓は容易に見ることができるのだが端から端はちょいと見にくい。
ましてやJoshが対戦に集中し、Emreの視野をブロックしていたら尚のこと困難になる。
実際これがどれほど有効だったかは定かではない。
ただ少なからず、真ん中卓のJoshが右横のQuantalに助言することは難しかったはずだ。
いくら勝ちが近いとはいえ、ユベルにはスピリットオブユベルなどリーサルを遠ざけるカードも入っており最後の最後まで考える必要があるから。
ヘッドセットから聴こえる状況的にQuantal攻め側、magu6o受け側。
ティアラの攻めは存外時間を食うため、ここでアドバイス込みで正確に攻められなければタイムアウト、ないしは次のターン受けミスを誘発できると考えた。
その後、僕は敗北。Joshも強気に早期決着を狙ってきた。
ただ時間攻めは十分。
敗戦を引きずって帰国後に配信を見返した。
時間攻めを食いながらデュガレスの打点倍効果を思いついたのは流石だ。
もしかすると途中からアドバイスに入ったJoshの案かもしれない。
さりとて短い時間の中で、オフを徹底したニビルは読みきれない。
頭によぎったとしても「時間がないから勝負を決めてしまいたい」欲望には抗えないはずだ。
決して相手方のプレミではない。
本来ならニビルをルルカロスで踏んで相手手札0
孤島も消して(ここはガルドニクス墓地から消される方がキツかったけど)、シラユキも一回使える。
終いに存在を隠したクルヌギアス。
万に一つもQuantal選手の有利は揺るがないし、他のプレイヤーであれば、いやもしかしたらmagu6o 1人であれば順当に「gg」だったかもしれない。
ただ今回は違った。
諦めの悪い男が2人も横にいたから。
トップドローは増殖するG
悩みどころ。
デュガレス制約でバトルフェイズ不可→ss重ねて妨害増しor面処理に動いてくるのであればGで2ドロー近く狙える可能性があるためGを抱えておく手もあった。
ただここでG召喚としておけば…
①相手の墓地がシラユキ込み7枚なのでシラユキを出すと場のカードor未判明の手札1枚を削ってくれる。
②もし何もなければ咎姫orヒータリンクからガルドニクス蘇生に繋がる。
③ただでさえ少ない時間をさらにもぎ取れるorミスを誘発できる
と判断してG召喚を指示。
相手にターンを渡すと30秒追加、自分のターンになると60秒追加。
基本的には攻め→受けに回る瞬間が時間的に1番苦しく、ミスを誘発しやすい。
そのため③も十分あり得る展開だったのだ。
この辺りからmagu6oはほぼ意識がない。
俺ら2人は2人で意識とか超えてゾーンに入っていたように思う。
文章を紡ぐことはほぼなく、【待って待って】【G?出す?うーん出して!出して出して!】みたいな。
出てきた情報を基に即断即決で勝率の高い方を選ぶ。
相手に時間を使わせているがこちらもスレスレ。
とはいえGを出さなければペルレイノ巻き込まながらシラユキプレイという展開にはならなかったはずだ。
リトルナイト⇄リトルナイトの自爆も考えたがバトルフェイズ経由無しでリトルナイトを除去られにくいと判断。
であればリトルナイト、裏になったG、トップの手数からリンク値を繋げると考えていた。
こいつが出てくるまでは。
想定外
激痛に身悶えしたが、幸いにも相手はハゥフニスを召喚した。
ルルカロスのコストにしなかったことからおそらくトップドロー。
ドローカードを消費したことから妨害の追加無し。
トップはディアベルスター
攻め→受け→攻めと進行したためG召喚から30+60=90秒回復して迎えた「ラストターン」
ここを逃すと負けが確定する。
正直このドローを見て僕は敗北を確信した。
お恥ずかしい話5秒くらいは2-4か…苦しいな…ラビュリンスぶつけるべきだったかな…なんで今なんだ…と落胆していた。
magu6oも意識が完全に切れかけていた。
でも1人だけ、magu6oのディスプレイを鋭く睨む男が横にいた。
気づいた時には「負けを取り返す」ことではなく「ここを勝ちにいく」方向に頭がシフト。
ライフ1400、3000打点が全員「縦」…
炎王相手にはモンスターを「縦」で置かないでください。ヒータに自爆されるので。
ふと思い出した。
調整の間、何度も何度も何度もたすくがmagu6oに教えていたことだ。
なんだこんな簡単なことだったのか。
僕は途中も途中からアドバイス陣に入った身。
すぐさまmagu6oにエクストラを開かせ、アルミラージとヒータの存在を確認。
magu6o!ヒータ!
そう叫んで直ぐたすくもgoサインを出した。
magu6oはまだ回路がつながりきっていなかったが、たすくは【チェーン1、チェーン2で組んでください】と発言しており俺と同じ未来が見えていた。
「ヒータ、出しますよ?」
【【出して!突っ込んで】】
【【チェーン1ガルドにして!】】
【【麒麟?止まって!止まって】】
気づいたらルルカロスが盤面から消えて手札にエクセル。
「エクセル出すよ?何サーチする?」
magu6oの疲弊は目に見えていたが走り切るしかない。
ただこの時、不思議と覚えているのだが、magu6oは確認を取らず自然とポプルスコストにリンクリボーを蘇生していた。
あ、いけるかも
確信があった。
ぶつん
同時に頭の中で何かが切れる音がした。
幸か不幸か、突然冷静になって集中が切れてしまったらしい。
フランベ押し込み、この後の執着点が決まりきっていない。
「どっち押し込めばいいですか?!」
直感的にカレイドハート!と言いそうになったが、たすく主導でクルヌギアスを選択。僕も異論はなく、クルヌギアス押し込み。
15、14、13…
サンライトでキリンを拾うところまでは見えてる。
でもリトルナイトが無いとなると、咎姫?でもこれやるならカレイド押し込みのはずで俺も直感でこの絵が見えたからカレイド押し込みを進言しかけた。
【ウーサ+神天焼でよくないですか?】
僕は試合運びを見れておらずてっきり神天焼を使ったものかと。
冷静に、ただ淡々と勝ちをもぎ取る道が見えていたボスは凄まじい。
俺も当然goサイン。時間がない中ではこれが最速最短最善だったから。
残り4秒でターンを返した。
サンライト→キリン回収までは見えていたもののどうやってキリンを起動させる?アンブロ?と悩んでいたため、ポニクス回収が付与されるこのルートはそういった点でも非常に優秀であった。
キリンが起動可能→ガルドニクス蘇生可能なため、アポロウーサを戦闘破壊することは敵わない。
かくして30秒→60秒の回復の後モンスターを並べて勝利となった。
画面上ではmagu6oとたすくが喜びを爆発させていたと思う。
僕はというとウーサ+神天焼以降は祈りつつ頭を休めていたため2人ほど感情の爆発は無かったと思う。
まだ終わっていない。
次を勝って初めて決勝の舞台がこじ開けられる。
その後のことは配信画面で起きた通りだ。
だが僕に語れることはまだ残っている。
最終戦ゴウヨクvsEmreの試合については以下有料ページでおまけとして記載する。
MD、世界大会ならではの駆け引きが随所に光る試合だったと自負しているため良ければお買い求めいただきたい。
スパチャ代わりの購入も大歓迎です。励みになります。
D)終わりに
ここまで読んでいただきありがとうございます
WCS
想像をはるかに超えて緊張したし、楽しい大会でした。
自分の全てを出し切れる相手がいる、仲間の強さに助けられる
一回戦最終セット、四回戦、準決勝第二セットと個人的には印象深いゲームが多いです。
ここでしか感じられない熱があり、この瞬間のために今まで頑張ってきたのだと。
感無量です。
Hero's Futureでもう一度戦えたら、と切に願うばかりですがDCは過酷。
形を変えて皆様とお会いすることになるかもしれません。
2025年度以降も応援よろしくお願いいたします。
WCS2024 マスターデュエル部門 個人成績世界トップ
これからもただ最強を示す
(出典)
遊戯王OCGデュエルモンスターズ カードデータベース
【決勝・準決勝】Yu-Gi-Oh! World Championship 2024/ day2 youtubeより
https://www.youtube.com/live/GKY9Ya5HGiI?si=yiuDS8PnQXK_CTh0
E)おまけ
準決勝第二セットのその後、準決勝最終セットについて話せたらなと思っております。
Hero's Future敗北のロード
この試合を振り返ることは、僕にとっても2人にとっても辛い。
帰国して数日経った今、ようやく配信を観ることができた。
第三セット ゴウヨクvs Emre
命に換えても勝利を掴む
その軌跡と思考について
F)第三セット ゴウヨク vs Emre
ここから先は
¥ 500
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?