私が女性ラッパーのヒプマイ参戦を怖がる理由

平成最後の日、まあ昨日なんだけど、フォロワーさんとヒプマイの話をしていた。その中で「ヒプマイの楽曲提供に女性ラッパーは来てほしくない」というようなことを言ったのだけど、言葉が足りなすぎたので、誤解のない表現で言い直すべく文章にする。



前提として、この話をした時点ではヒプマイの作中でラップをした女性は勘解由小路無花果(以下、無花果様)だけで、彼女が作中においてどのような立ち位置なのかも未だはっきりしていない。

なので、今から書くのは狭い範囲の偏った情報と憶測に基づいた妄想であり、今後の展開によっては撤回すべき話にもなりうるような、ただの杞憂だ。


まず、私が「来てほしくない」と言ったときに頭に浮かんでいた「女性ラッパー」像は、いわゆるジェンダー規範やミソジニーに対して反旗を翻すチャレンジャーたち(あっこゴリラさんとか)だった。
不勉強なもので、現在のヒップホップシーンにおいてどんな女性ラッパーがいて、どういうスタンスで活動しているのかは把握できていないのだけど、ホモソーシャル色が強いとされるヒップホップの世界において、彼女たちのような「戦う女性ラッパー」の存在感というのは小さくないだろう。


一方、ヒプマイ作中における「ラップをする女性キャラ」、すなわちヒプノシスマイクを使ったクーデターでH歴を始めた言の葉党メンバーは、今のところメインキャラクターであるディビジョン代表メンバーたちの「敵」としてのみ描かれている。
無花果様は男たちを「下郎共」と呼んで蔑む態度を取り、彼女の上司である乙統女様は「男」である天谷奴を「利用している」と冷たく言い放つ(そういうのはあまりに安易なミサンドリー描写だとも思うのだけど、話がそれるのでとりあえずおいておく)。


今後ヒプマイの楽曲制作に女性ラッパーが関わるとしたら、無花果様のような「ラップをする女性キャラ」の曲を提供する、という形になると思う。私が「女性ラッパーには来てほしくない」と言ったのは、その時思い浮かべた女性ラッパー像、すなわち「戦う女性ラッパー」が目指すものが、制作陣が設定した「ラップをする女性キャラ」の在り方と大きくズレるのではないか、と不安になったからだ。もう完全に被害妄想(?)なのだが、その理由を書いていく。


私はヒプノシスマイクというコンテンツを「(良くも悪くも)少年ジャンプ的」と思っている。ここで言う「少年ジャンプ的」とは、話の内容というより(内容的にはジャンプというよりホビアニ文脈だと思う)徹底して「男性目線」で作られている(楽曲プロデューサーもメインシナリオライターも男性だ)ことに起因する、無邪気な(あるいは無批判な)ホモソーシャル的価値観のことだ。

だが、そういったホモソーシャルこそ、「戦う女性ラッパー」たちが相対化して疑問を投げかけている価値観ではないだろうか。私が気になっているのは、
「ヒプノシスマイクという、ホモソを内面化した制作陣によるホモソをバリバリに体現したコンテンツに彼女たちはどう対峙するのだろうか」
ということだ。正直、楽曲提供オファーを出して断られても仕方ない気がする。
だが、それよりもっと怖い(完全に杞憂で一人で怖がってるだけなんだけど)のは、「戦う女性ラッパー」から提供された楽曲(以下、「戦う曲」)を引っさげた無花果様が、作中で軽い扱いを受けてしまった時のことだ。


正直、今の私は、今後無花果様のキャラとしての掘り下げがどのように・どこまで行われるか、あまり期待できていない。極端な話「実は男性が苦手で偉そうな態度は恐怖の裏返し」みたいな矮小化とか「実は可愛い物が大好き」みたいな安易な萌キャラ化とかが何の気なしに行われてもおかしくないと思っている。そして、そういうことが起こってしまったときに、無花果様が「戦う曲」持ちだった場合のダメージハンパないな、ということも強く思っているのだ。

今想像している「戦う曲」とは、一人の人間としての女性をエンパワーメントするような楽曲のことだ。私は無花果様という「ラップをする女性キャラ」にそういう曲を歌ってほしいし、無花果様がそういう曲が似合うキャラだったらいいなと思っている。
でも、もしそんな無花果様が作中で「本当は強がっているだけの女」みたいな「ホモソーシャル的物語にありがちな女性キャラ」という文脈に巻き取られてしまったら、何というか「戦う曲」ごと貶められた気分になってしまう気がするのだ。「戦う女性ラッパー」、ひいては私自身を含めた「戦う女性」(ここで言う「戦う」とは、既存の価値観に違和感を覚えてできる範囲で声を上げる、程度の意味)自身が、ホモソ的物語の中で無邪気に消費されてしまうような感覚を持ってしまう気がするのだ。


もちろん、ここまで書いてきたことは全部なんの根拠もない妄想だ。ただ、今後女性ラッパーがヒプマイ楽曲に参戦する可能性自体は決して低くないとは思っている。そうなった時に、その楽曲および歌唱キャラを大事にしてくれるヒプノシスマイクであってほしいな、と願うばかりである。


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