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私の3ミリ「これからこれから編」
プロローグ
都会の喧騒から少し離れた郊外に位置する小さな町、そこで暮らす人々は日々の小さな変化を大切にしていた。町の片隅にある小さなカフェ「3mm」は、その名の通り、人生に小さな変化をもたらす場所として親しまれている。オーナーの真由美は、カフェを訪れる客に「3ミリの変化」を提供することを心がけていた。彼女の信念は、人生において大きな変化は突然に起こるものではなく、小さな「3ミリ」の積み重ねによって生まれるというものだった。
久しぶりの客
その日、久しぶりにカフェの扉が開き、元漁師のゆたかが入ってきた。彼は体を悪くしてから人前に姿を見せることが少なくなっており、その表情は硬く、目には以前の活気がなかった。
たまたまその場にいた明美は、中学時代の憧れの先輩であるゆたかの姿に驚いた。しかし、彼がほとんど話さず、笑顔も見せずにいる様子に心を痛める。
ゆたかは、カフェでコーヒーを一口飲んだ後、何も言わずに途中で帰ってしまった。その背中に、明美は勇気を振り絞って声をかけた。
「ゆたかさん、これから!これから!人生はまだまだ続くんですから!辛くても、時間が解決してくれるはずですよ!」
ゆたかは立ち止まることなく、カフェを後にした。
半年後の変化
時間が流れ、春の訪れと共にゆたかは再びカフェ「3mm」を訪れる。
その間に彼は自分と向き合い、少しずつではあるが心の平穏を取り戻し始めていた。
カフェに入ると、真由美と明美に向かって、はじめての笑顔と共に「こんにちは」と言葉を交わした。
「これから!これから!だよね」
と、ゆたかは明るい声で続けた。
この言葉には、彼が感じた希望と、明美からの励ましが心に残っていたことが込められていた。
真由美と明美は、ゆたかの変化に心からの喜びを感じ、彼に暖かいコーヒーを提供した。
三人はカフェで、過去の苦労やこれからの希望について語り合う。ゆたかの話し方には、かつてのいら立ちの影はなく、前向きな未来への期待が感じられた。
海辺のカフェ「3mm」で織りなされる人々の物語は、ほんの少しの言葉や行動が、人生に大きな変化をもたらす「3ミリ」の力を持つことを教えてくれる。ゆたか、明美、そして真由美の再会は、時間がもたらす癒やしと、人との繋がりがいかに人生を豊かにするかを示す一例である。