2022年は中小企業がASEANへ進出するラストチャンスの年だ。
少子高齢化が進む日本。特に中小企業はASEAN市場での事業展開を始めないと生き残ることができない。
そのチャンスが来年2022年一杯までです。
あと1年しかありません。
人口6億人超のASEANは引き続き成長市場で、日本からの距離も近く、親日国も多く、日本の企業に取って間違いなく重要な市場です。
実際、現在13,000社以上の企業がASEANに進出している。
現在タイもインドネシアもコロナで苦しんでいるが、ワクチン接種率が高まるにつれて新規感染者数が激減したという日本の事例でお分かりかと思うが、ここ数ヶ月での経済回復が確実視されている。
コロナ前よりASEAN市場の有望性は語られてきたわけで、いよいよそれが再スタートする時期がすぐそこまで来ている。
わが社も名もなき地方の中小企業であるが、2015年に満を喫してタイに生産工場を設立した。
中国、インドの電力不足のニュースが日々飛び込んでくるが、わが社は電力インフラ関連の製品ゆえか、コロナの影響は微々たるものであった。
我がタイ工場の最大の関心はワーカーの感染者数で、いかに工場の稼働率を維持できるかなのだ。
ではそもそも論であるが、なぜASEAN市場で日本企業が人気があるのかだ。
3つの要因がある。それは、
①日本人は信用・信頼できる。
日本人は嘘をつかない、約束を守るのだ。
中国駐在を経験した私が今でも中国に対する拭えない先入観は、中国との契約は単なる紙切れに過ぎず、交渉は夜の酒宴で決まるというものだ。
私が出会った中国人の多くは、平気で嘘をつき、約束は守らない人が多かった。
合弁事業を進める際も、10年以上の提携関係を希望したが先方は最長3年だと譲らなかった。その理由が最終調印段階で判明したのだが、先方は単にうちの技術が欲しかっただけだった。幸いそれが分かった時点で合弁交渉は中止となったが、本当に背筋が凍ったのを今でも忘れない。
②日本の製品やサービスの品質の高さ。
現地事業での基本は製品の生産・サービスは日本側が行い、相手は事業インフラを提供するケースが多い。
日本企業の品質の高さを表す言葉『安心・安全』は、世界ナンバーワン商品が少なくなってきたとはいえ、メイドインジャパンの製品がサービスを含め、世界最高水準であることは間違いない。
『品質では日本』、これが今でも日本企業の強みだ。
③投資における事業継続期間の長さ。
日本の終身雇用制度は見直されつつあるが、日本企業がASEANで事業展開する場合、重視するのが現地事業の継続性だ。できるだけ長く事業継続したいという根底思想が、ASEAN相手国のオーナーの考えと一致するのだ。
付け加えるがASEAN側がオーナー企業で、オーナーが経営者を兼ねているケースが多い。
つまりオーナーファミリーは永続的に事業を行いたいのだ。
先方は出資比率もメジャーであることを前提としないので、経営権に関しても柔軟性がある。
中国の場合は、合弁事業の場合は出資比率が法律で決められていた記憶がある。日本側の事業に対する貢献度が圧倒的に大きくても、分配金は出資比率の範囲に留められるという理不尽さがあった。
ここまで書けば、それじゃASEANへの進出は、いままで通りじっくり市場調査して事業計画書を十分に練ってからでもいいんじゃないかと思われる人が多いと思うが、実はそうも言ってられない状況があるのだ。
2022年はASEAN進出へのラストチャンスである理由を二つ述べる。
①現地の財閥(タイの場合、CP、サハ、セントラル)はすでに中国との提携を進めているという事実。
私もタイ工場を設立し、一旦タイ国内のマーケットを制覇し、更なる事業展開を図るために4回ほどインドネシアへ営業のために飛んだ。
そこで目にしたのは、中国製の格安製品がすでに訪問した5年前からインドネシアに入り込んでいたのだ。
わが社の製品の場合、日本とASEANでの市場価格を比較すると、ASEAN価格は日本の半分程度である。しかしインドネシアでの中国製の競合製品の価格は更にその半値であったことに衝撃を受けたのだ。
これじゃ材料費すらも出ないなと即座にインドネシア進出をあきらめた経緯がある。
時代はDX(デジタルトランスフォーメーション)だ。
テクノロジーにより現実世界のあらゆる事象がネット上の仮想世界に取り込まれ、そこでの事象や経験がシームレスに現実世界にフィードバックされることで、現実世界の利便性が格段に向上する流れとなりつつある。
さらにここにAIや量子コンピューターによるパワーとスピードが加わるとその流れがさらに加速する。
DXはあらゆる産業で発生するため、これまでにない新しいビジネスチャンスが訪れると期待されている。
前述したようにすでに中国はASEANの財閥企業と電子商取引の分野やファイナンスの分野で手を組み始めている、いやすでに手を組んでいるのだ。
ASEANの多くの人がすでにそのサービスの恩恵を受けているのだ。
よってこれまでの日本の得意技である、品質&サービスだけでは勝ち残れない時代へとなりつつあるのだ。
品質&サービス、それに加えるべきもう一つの要素が必要なのです。
2022年はASEAN進出へのラストチャンスである理由の二つ目ですが、
②日本企業の決断の遅さが致命取りとなる。
わが社が2015年、タイに現地法人を立ち上げた際も、中小企業がASEANへ進出する最後のチャンスと言われていたのです。
その最終期限が来年2022に迫っていると私は考えます。
ASEAN財閥グループはオーナー企業であり、事業の遂行に際し、彼らは即断即決で物事を決めます。
中国との提携が既に進んでいるという話をしましたが、中国も即断即決をビジネスの基本と考えています。両方ともスピードを重視しています。
方やずっと言われ続けてきたのが、日本企業のサラリーマン体質です。
何事も現地では決まられず、本社に伺いを立て、本社内での稟議による決済が常態化してきました。
大企業ほどその傾向が強いばかりか、中小企業の場合はトップがASEAN事業への関心が薄く、物事を決めようにも決められないのです。
そうです、『決められない日本企業、決められない日本人』が問題なのです。
ASEAN財閥は中国との提携交渉ですでにスピード感を身に付けています。
日本の品質&サービスには信頼感はあるも、一緒に事業を進める段階において日本企業の意思決定の遅さにより提携を解消する可能性が高いのです。
以上の話をまとめると今後ASEAN市場への進出を考えている中小企業にとっての課題が浮き彫りになりました。
それは、
①新たなビジネスモデルの構築
②現地決裁権の強化
ということです。
ではどうすればよいのか?
①先ずは現地へ飛び、市場ニーズを把握することです。
ずっと日本にいて、ネットニュースを検索しているだけでは何の役にも立ちません。郷に入れば郷に従えです。
幸い、タイは来月の11月1日より日本人の隔離なしでの入国を認めます。
パタヤやプーケットを目指すのではなく、タイの工業団地にある日系企業の現地トップ(マネージングディレクター)に話を聞きに行くのです。
現地の日系企業に人脈がない場合でも、自社の類似製品を製造しているとか業種が似ている会社を探して、電話でアポ取りすればいいんです。
現地の日系企業の駐在員はここしばらく日本へ帰国できていません。
日本から話を聞きたいと訪問してくる日本は大歓迎されるはずです。
そしてあわよくば、その人脈を使ってタイの財閥グループにコンタクトを試みるべきです。
・ASEAN市場にはどんなニーズがあるのか?
・我々に何が期待されているのか?
・我々は何を提供できるのか?
・我々はどのような新しいビジネスモデルを構築すべきなのか?
そして既に現地法人を保有する中小企業の方へのアドバイスです。
すぐにやるべき事の二つ目です。
②新らしいビジネスモデルの構築は、現地法人トップの責任で行わせる。
それと共に、決裁権を現地に与える。
そもそも新しいビジネスモデルの構築を現地に任せるなんて冒険だとか、現地に決裁権を与えるなんて恐ろしくてできないなんて言う社長さんがおられると思います。
じゃ何のためにASEANへ進出したのですか?
何のためにASEANへ進出しようと思っているのですか?
既に進出されている企業、これから進出しようとしている企業共に、ここで改めて考えてみるべきです。
・企業は永続なりですよね。では、自分の会社を永続させるための事業方針はすでに盤石ですか?その事業方針は、常に変化する世界のビジネス環境に臨機応変に対応できる戦略ですか?
・当初から現地化を促進しようと言っていたのをお忘れですか?現地のトップは相変わらず日本人ですか?現地スタッフへの権限移譲は確実に進んでいますか?
時代の潮目は刻々と変化しています。
モテモテだった日本企業は、もうすでに中国の大きな風呂敷の中に包まれようとしているのです。
もう時間は残りわずかです。2022年までにASEAN市場とどう向き合うのか、具体的に動かないと日本もろとも沈没していくしかないのです。
悲観的と思われるかもしれませんが、悲惨な目に遭う前にやるべきことを探し、即決断と実行あるのみです。
そんじゃまたね!
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