強烈に尊敬する人はいますか?
『尊敬』は、周囲の人々を巻き込んで目指すゴールに連れて行ってくれる。
尊敬する人の言葉や行動にから多くの事が学べ、自然と自分が成長していく。
『嫌悪』は、周囲の人々に悪影響しか及ぼさない。
彼がどれだけいいことを言っても、どれだけいい仕事をしたとしても、彼から学ぼうとは決して思いません。
今までの人生で強烈に尊敬できる人が一人だけいました。
新卒で地元の企業に入社して26年間働いた会社にその尊敬する人はいました。
地元企業は、当時7,000名の社員がいる会社で、その本社部門の副社長がその人でした。
その副社長に始めて出会ったのが、当時私が鉄鋼部門の製造部長になりたての頃でした。
私の部門では鉄を溶かす溶解炉を稼働させており、夜間電力を使用するしているため、溶解炉が稼働するのは深夜時間帯でした。
ある日、そこで突発事故が発生し、火傷による負傷者が出たのです。
原因は溶かした鉄のお湯を保管する炉体(内面は熱に強い耐火物が施工されている)という入れ物があるのですが、その炉体を冷やすための冷却水が炉体から漏れ出て、鉄のお湯に接触し、水蒸気爆発を起こしたためです。
第一報は現場の組長から家で寝ていた私に入りました。
これはマズいと飛び起き、現場へと車を走らせました。
現場に到着すると同時に救急車が到着し、けが人の搬送の段取り中でした。
また炉体(釜)に残った溶けた鉄のお湯はそのまま放置すると、炉体(釜)が修理不能となるので、残湯を他の炉体(釜)へ移す作業が組長の指示のもと急ピッチで進められていました。
思わず組長に向かって、『けが人の状況は?』『さらに爆発する可能性はあるのか?』と、冷静さを失いながら叫んでいる自分がいました。
このような火傷負傷者が出るような現場の事故は10年ぶりでした。
けが人を乗せた救急車が出ていくと同時に、消防車が来るわ、労働基準監督署の担当者が来るわで、てんやわんや状態に陥りました。
幸い、炉体冷却用の水配管のバルブを閉止できたので更なる水蒸気爆発は起こらず、残湯の移送も順調に済み、消防車の助けを借りる必要はありませんでした。
しかし、気になるのは火傷負傷者の容態です。
耐熱服を着ていたとはいえ、1000℃を超える鉄のお湯が体の一部に降りかかったものですから、相当の火傷を負ったことは容易に想像出来ました。
結局その深夜は組長、作業員と過ごし、関係者全員で朝を迎えました。
他の部署の社員が出勤するにつれ、現場には野次馬根性丸出しの社員や、心から心配で見に来てくれた社員もいました。
この文章を書きながら、当時の記憶が熱くよみがえってしまって長文になってしまいました。
所属する事業部の上司や本社への事故報告を済ませ、さっそく事故原因の究明と再発防止対策を考えなければなりません。
事故原因の究明と再発防止対策を明確にしないと、操業開始の許可が官公庁から下りないからです。
先ずは製造部長として事業部内の関係者を招集し、第1回目の会議を開催しました。
その日から会社に泊まり込みの生活が始まりました。
いくつかの想定した原因を一つづつ理論的に裏付けをする作業が難航しました。とにかく物的証拠だけでは真の原因を突き止めることが非常に困難でした。
突発事故から3日目の朝、関係者と一緒に現場検証をしていると、そこに突然、本社の副社長がヘルメットをかぶってやってこられました。
『おい、○○君、大丈夫か?寝ているのか?寝れないだろうな。』
『まあ、話を聞こう。会議室に関係者を集めてくれ』
本社のナンバー2が現場に来られた。これは大変だ。
そうとうなお叱りを受けるに違いない。そう思いました。
副社長には私が製造課長の時から面識がありました。
とにかく現場の仕事に関して非常に厳しい指摘をされる人で、定期的な現場診断の際も毎回こっぴどく叱られていたものです。
製造部長になってからは月一回の本社の構造改革会議で顔を合わせる程度にお会いしていましたが、その会議でもこっぴどくやられていたんです。
すいません、またまた当時の記憶がよみがえり、熱が入り、話がとめどもなくなりました。
要は、私にとって強烈に尊敬する人は、先にも後にも、この本社の副社長だけだったのです。
単に怒るのではなく、私の意見をよく聞いてくれ、豊富な知識や経験から数々の的確なアイデアや助言をしてもらい、そのおかげで、真の原因の追究と再発防止策の立案が1週間以内に完成したのです。
普通なら本社の副社長とは私にとって雲の上の人です。
そのような方が対策書が完成するまで毎日、本社から来てくださったのです。
私の事業部は規模的には全社の中では弱小部門なのにも関わらずです。
副社長との度重なる会議の中で感じたのは、この人は私のおやじのような感じがする。そのようにも思いました。
この人のためなら何でもする。この人のために、残りの会社員人生、全てを捧げてもいいとまで思ったくらいです。
『尊敬』は、周囲の人々を巻き込んで目指すゴールに連れて行ってくれる。
尊敬する人の言葉や行動にから多くの事が学べ、自然と自分が成長していく。
さて皆さんには逆に、強烈に嫌いな人はいますか?
『嫌悪』は、周囲の人々に悪影響しか及ぼさない。
彼がどれだけいいことを言っても、どれだけいい仕事をしたとしても、彼から学ぼうとは決して思いません。
近くに尊敬する人がいる場合。
近くに嫌悪する人がいる場合。
自分が関係する仕事の結果を考えた場合、『天地の差』となるのではないでしょうか。
自分の周りに尊敬する人がいない場合は、尊敬できそうな人に会いに行くという行動を起こす必要があるかもしれません。
それも難しい場合は、自分が尊敬される人になるように自分で切磋琢磨するのも方法かもしれませんね。
仕事をするにしても人生を生きていく上でも、自分のパフォーマンスを高めて行くのは人生を充実させるために不可欠な事だと思います。
皆さんが尊敬できる人に巡り合えることを願っています。
そんじゃまたね。
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