聖書物語③ それはアブラハムから始まった
タイトル:それはアブラハムから始まった
聖書箇所:創世記12:1-3、15:5-7
今日は聖書物語の3回目になります。イスラエルと神の関係についてはお話しします。私たちとイスラエルに、何の関係もないように見えますが、
前々回でアダムとエバがエデンの園で、善悪の知識の木から果実を取って食べた、そして、そこから、神が「良い」といった世界は罪でけがされ、悪が働く世界となってしまいました。神はこの悪に満ちた世界の救済の計画を始められます。
しかし、世界の中、悪は人間を捕えて離しません。アダムとエバの子供カインは弟アベルを殺してしまいます。時代が進み、人間の数も増えてきました。その人間を見て、神はこう考えました。
Gen. 6:5 主は、地上に人の悪が増大し、その心に図ることがみな、いつも悪に傾くのをご覧になった。
神はノアとその家族を箱舟に乗せ、そのほかの人類をすべて滅ぼしてしまいました。そのノアから再び人類の歴史が始まります。しかし、残念ながら、人間の性質は変わりません。バベルの塔を建て、人間自らが神に取って代わろうとしました。神のかたちに作られた人間は、神のかたちを、この世界に示すはずでした。ここから、神の世界救済計画は、次のステージに進むことになります。
神はノアの子孫からアブラハムという人物を選びます。創世記12章からアブラハムの物語が始まります。創世記12章では、アブラハムはアブラムと呼ばれています。アブラムは後でアブラハムと改名をします。便宜的にアブラハムと呼びたいと思います。なぜアブラハムが選ばれたのか。それは分かりません。私たちは神のすべてを知ることはできません。なぜアブラハムなのか。それを神の神秘と呼びます。
創世記の11章の最後にアブラハムという名前が出てきます。そして、12章の初めで、神はアブラハムに話しかけられます。
主はアブラムに言われた。 「あなたは、あなたの土地、あなたの親族、あなたの父の家を離れて、 わたしが示す地へ行きなさい。そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、 あなたの名を大いなるものとする。あなたは祝福となりなさい。わたしは、あなたを祝福する者を祝福し、あなたを呪う者をのろう。地のすべての部族は、あなたによって祝福される。」
アブラハムの物語で大切なのは、「神のアブラハムへの契約・約束」ということです。この契約の内容も大切ですが、神は何が起ころうとも、ご自分がされた契約・約束をたがえることはないということが大切です。旧約聖書を読むと、アブラハムの人生で起こる様々な場面で、神はアブラハムの前に現れ、ご自身の契約を更新されます。この契約が、イエス・キリストを信じる私たちにつながっていくのです。
「地のすべての部族は、あなたによって祝福される。」
アブラハムが生きていた時代、地のすべての民族は対立し、暴力にあふれていました。それは今も変わりません。アブラハムは、この地を元も創造の原則、つまり神と人間と自然との愛によるハーモニーを取り戻すために、神に選ばれました。アブラハムを通して、「地のすべての部族は、あなたによって祝福され」神との美しい関係を取り戻すと、神は言っています。
この素晴らしい約束から時が経ちました。アブラハムは80歳くらいの頃でした。「あなたを大いなる国民と」するという約束の割には、子供はいません。アブラハムの心には疑いが芽生えたかもしれません。15章で、神はまたアブラハムに現れました。
15:5-6
そして主は、彼を外に連れ出して言われた。「さあ、天を見上げなさい。星を数えられるなら数えなさい。」さらに言われた。「あなたの子孫は、このようになる。」アブラムは主を信じた。それで、それが彼の義と認められた。
「あなたの子孫は星の数ほどになる」と神は言います。信じられないような約束ですが、アブラハムは、その神に信頼します。そして、アブラハムは「義」と認められました。つまり、神がアブラハムを信頼できるパートナーとして認めたということです。
壮大な神の計画です。混乱した世界を正しい世界に回復する神の計画です。アブラハムが、どれほど理解していたかはわかりません。実際にアブラハムは、神の計画を自分なりに解釈し、この計画をダメにしてしまいそうになります。そして、その度に神がアブラハムを修正するのです。妻のサラから生まれるはずの子どもを、サラの女奴隷ハガルに産ませます。アブラハムとサラはある時、エジプトに行きます。そこで、アブラハムは身の危険を感じ、妻であるサラを妹と偽ります。
創世記17章7節で、神はアブラハムにこう訴えます。
わたしは、わたしの契約を、わたしとあなたとの間に、またあなたの後の子孫との間に、代々にわたる永遠の契約として立てる。わたしは、あなたの神、あなたの後の子孫の神となる。
神とアブラハムの契約は、ただ2人の間で交わされた契約・約束ではない。アブラハムの子孫との契約だというのです。この時アブラハムにはまだ子供がいません。「あなたの神」となるという神です。神のアブラハムとその家族に対する覚悟とコミットメントがわかります。アブラハムとその家族は、のちにイスラエル民族という大きな民族へと育っていきます。神とアブラハムとの契約は、イスラエル民族との契約として受け継がれます。
この約束は、アブラハムの息子、イサクへ、孫のヤコブ、そして、時代が経って、モーセへ、さらに時代が進み、ダビデ王、ソロモン王へと受け継がれました。ただし、問題があります。神の約束を受け継いだイスラエル民族は、世界のすべての民族の祝福となるはずでした。悪が働く世界で、世界救済計画の担い手になるはずでした。しかし、イスラエル自身が問題そのものとなってしまいました。イスラエルが悪を行い、神を裏切るのです。神はイスラエルと共にいました。モーセの時代には幕屋、つまりテントが作られ、そこで神を礼拝しました。ソロモンの時代には神殿で礼拝しました。イスラエルは、幕屋で、神殿で神に会いました。神の存在の象徴でした。しかし、神を忘れ、他の神を礼拝し、悪の世界に染まっていきました。そして、神はイスラエルを離れてしまいました。
とは言うものの、神はイスラエルを見捨ててしまったわけではありません。神は、たった一人のイスラエル人を選び、全人類を悪から解放し、祝福します。その一人のイスラエル人こそ、イエス・キリストです。最初のアブラハムとの約束に戻ります。「わたしは、あなたを祝福する者を祝福し、あなたを呪う者をのろう。地のすべての部族は、あなたによって祝福される。」イエスの地上の生涯では苦難の連続でしたが、罪を犯すことはなく、神に信頼を置き続けました。イエスは十字架の死を通して、悪の世界を滅ぼし、復活によって、神こそがこの世界の王であることが宣言されました。イエスが神に信頼し続けたことが、私たち人間が悪の世界から解放され、神の国に生きることの基礎となっています。
このストーリーはとても重要です。神がご自分の約束にどこまでも誠実であること。その誠実さは人間の不誠実さとは関係ありません。旧約聖書は、神の誠実さの物語です。だからこそ、イエスがイスラエル人として生まれ、私たちの救い主となる物語が真実となるのです。
「地のすべての部族は、あなたによって祝福される。」すべての人間は、イエス・キリストによって祝福されるのです。民族、国籍、セクシャリティは関係ありません。だから、教会はすべての人が歓迎され、尊重され、互いに愛し合う場所でなければなりません。ただし、完全にできるわけではありません。愛し合うために、謙遜になって努力する必要があります。そういう共同体が教会です。天満レインボーチャーチは、そういう共同体でありたいと思います。
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