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アメリカの分断と混乱を産みだした福音派教会の罪
Kobes Du MezのJesus and John Wayneを読んだ感想を記しています。
2000-10年代を福音派のクリスチャンとして反省とキリスト教会のあるべき姿を考えさせられました。20世紀、21世紀をリードしてきたアメリカ福音主義は日本の福音派教会にも大きな影響を与えてきました。キリスト教会の倫理観、聖書解釈について大きな悔い改めが必要です。そして、アメリカ福音主義、アメリカ福音主義教会こそが、アメリカと世界的な右傾化を産みだした張本人だと言っていいでしょう。
現代アメリカ保守的福音派(アメリカ福音派)は「1950年代から1980年代にかけて党派政治を一変させた、より広範な再編成の観点」から理解できる。Kobes Du Mezによると、この再編成の中心にあったのは、「公民権、ベトナム戦争、そして家族の価値」に対する態度であった。これらの出来事に対して、「白人父権制の擁護」がこれらの問題に取り組む現代アメリカ保守的福音派の議論の中心でした。そして、白人家父権制の宗教的・文化的・政治的アイデンティティの中心に位置することになります。
1960-70年代、福音は規律と(神と男の)権威を強調してきました。彼らにとって、「神に従う」とは、「厳格な命令系統の中での父権性の権威に従うこと」であり、神は男が家庭や社会でこの権威を行使できるように備えて」いました。
現代アメリカ保守的福音派といっても、教会・教派によって異なる神学的・宗教的伝統を持っていますが、父権制の権威の擁護という共通の目的をもってまとまった。父権制の権威の擁護こそが、敵か味方かをわける境界線となりました。
アメリカ福音派は、「公民権、ベトナム戦争、そして家族の価値」に加えて、フェミニズムや性に関する議論は、自分たちへの攻撃、危機としてとらえてきました。
バラク・オバマ大統領の就任は、アメリカ福音派にとってさらに攻撃的な声をあげる機会となりました。彼らが父権制という言葉は、白人にのみ適用される概念でした。人種は白人福音派の政治的、文化的アイデンティティ形成の中心でした。このアイデンティティは、家庭や国を守り、攻撃的で英雄的で男らしい男性、「ポリティカル・コレクトネスや女性の美徳に束縛されない人」のことです。このアイデンティティを体現していた男性こそがジョン・ウェインなのです。
アメリカ福音派からドナルド・トランプはジョン・ウェインの生まれ変わりのように考えられています。ドナルド・トランプは、アメリカ福音派が待ちに待ったジョン・ウェインの
再来です。福音派が持っている「父権制の中で女性を守り、家族を守り、国を守る」はずの理想の男性像と少しずれているのではないかとも思われますが、それは問題ではありません。女性を蔑むことを厭わない男性とはテストステロンにあふれた男の中の男だからです。
トランプが政治家として現れる前から、この福音派の指導者たちはパワハラ、セクハラスキャンダルを起こしていましたが、それもまた「福音派の理想とする男性像」に合致する人物ととらえられ、被害者たち(主に女性)がパワハラ、セクハラを引き起こす人たちとして、教会から非難を受けていました。もはや、トランプが大統領に再選されたことは驚きではありません。以前この福音派の政治的運動に同調していた牧師たちの中には、福音派から距離をおきはじめた人もいますが、父権的聖書理解は多くの教会に根付き、白人アメリカ人の文化理解と重なり、白人アメリカ人のアイデンティティの中心となり、後戻りはできなくなってしまったようです。もちろん、アメリカで「福音派」と呼ばれる教会のすべてでこのようなことがおこっているわけではありません。このような福音派の在り方に抵抗してきた福音派のクリスチャン、教会、牧師、神学者たちも存在します。
2000年以降、私は日本で福音派と呼ばれる教会に通い、福音派の影響を受けていました。今思い返すと、アメリカ福音派の言説に影響を受けている言説を耳にしていました。そして、このアメリカ福音派の言説は、世界中に輸出されています。父権的聖書理解が根付いている地域もあります。そういう国では、強権的で暴力的な政治家、独善的牧師たちを生み出しています。私たちが聖書的と信じている聖書理解も、実は20-21世紀のアメリカの父権的聖書理解の産物なのかもしれません。
また、キリスト教を起源としませんが、日本でも父権制への礼賛とミソジニー、LGBTQ嫌悪が広まっています。日本のキリスト教会はこのような動きにどのように対応するでしょうか。天満レイボーチャーチは、このような世界の流れに抵抗します。