フランス文学が好き
ジッドとユゴー
20世紀は科学主義・実証主義の威光がかげり、自己の内面追求に注目し始める時代で、また、人間の内面と外界との関わり合い方を根底から問い直して、人間の内外を新しい人間観、新しい世界観に則って構造的に把握するなどとなんかの本で読んだ。
19世紀と20世紀の比較・作品、時代背景を基にユゴーとジッドを考えてみた。ユゴー(19世紀)は『レ・ミゼラブル』を下敷きに、ジッド(20世紀)『狭き門』を下敷きにしてある
時代背景
ユゴー/フランス革命・波乱・動的
ジッド/第一次世界大戦前頃・ドレフィス事件
作品テーマ
ユゴー/貧困・自由の獲得を望む時代(社会の仕組みと戦う)
ジッド/自由から自分の生き方を選択する時代(自分との戦い)
登場人物
ユゴー/ジャンバルジャン・ミリエル・コゼットとマリユス
ジッド/ジェロームとアリサ
設定
ユゴー/悪役が明確、その目的も明快
ジッド/悪役はいない、皆悩んでる。
ストーリー
ユゴー/結末はハッピーエンド
ジッド/結末は苦悩の末、死別
『狭き門』の人間観
アリサが全てとしてその愛の成就こそ最大の幸福のジェローム。愛をすて狭き門へ進もうとするアリサ。アリサが手を伸ばせば、容易に手に入る幸せだが、彼女は人は幸福のために作られていないという。人は幸福のためにあるのではない。犠牲の尊き心も甘受しないという。
『狭き門』の作者 アンドレ・ジッドはプロテスタントの家に育ったが、そのプロテスタント的精神を丸ごと受容することなく、徹底的に向き合い。試行錯誤し自らの作品にその苦悩を投影した作家であった。
20世紀を俯瞰するとニーチェは神の死を我らに告げた。そう二十世紀はそれまで信じられてきた価値観が大きく揺らいだ世紀であり、文学者達もそれを察し、それぞれが自らの作品で価値観の多様化を描いてきたのだった。
20世紀はまた19世紀末の産業革命で科学が大きく発展し、科学万能主義になった。それは今の世の遺伝子操作でクローン人間をつくるだとか、豚の体を借りて人間の臓器を作るだとか、精子や卵子を冷凍保存して子供を作るだとかいったように、人間の都合によってあらゆる事が可能であるような様子を秘めた。
20世紀は戦争の時代だった。世界大戦がふたつもあった。戦術も19世紀とは大きく異なり始めた。それまで人海戦術でやってきた戦争が20世紀にはいると高度な武器が勝敗の鍵を握るようになる。つまりは一人の有能なリーダー(神)が勝敗を左右していたというスタイルから、武器(核)を持てば誰でも神になれ、人を殺すことも生かすこともできる、命を左右できるようになる。20世紀 神は死んで人が神の座についたのだろう。
アンドレ・ジッド 山内義雄 訳 『狭き門』 新潮文庫 おすすめです。